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防汚塗料起源の海洋中の銅物質挙動解明
     環境分析研究グループ 山口良隆

概 要

近年、世界各地の港湾等の閉鎖的な海域で銅濃度が高くなる傾向にあるとの報告があり、その起源のひとつに船舶が上げられている。そのため実態を把握して海生生物などに対するリスク評価の必要性が増している。船舶由来の銅は防汚塗料に使用されているものが主である。船底塗料の目的として船舶航行時のCO2を主とした地球温暖化ガス削減である。メカニズムとしては船底塗膜から微量の防汚剤を溶出させ、生物付着を防止する機能を持たせており、これにより抵抗を出来るだけ増やさないようにして良い燃費を保っている。数種類ある防汚剤のひとつに亜酸化銅があり、また亜酸化銅が防汚剤の中で使用量が一番多い。
銅の毒性は一般的に

  銅イオン(Cu+、Cu2+) > 無機銅 >> 有機銅化合物

と形態別で異なる。銅物質ではイオンや無機物が生物に対して活性があり、これらのグループをlabile銅と言う。また有機金属化合物は生物に対して活性が低いと言われている。そのため海水中の全銅濃度では正確なリスク評価が難しく、生物対して毒性の有無を反映させた銅の形態別のグループに分けて定量する必要がある。

本研究の目的として
@ 銅の形態別分析法を開発する。
  → 銅イオン及び無機銅のグループと有機銅化合物を分けて計測する手法の開発
A 実海域での計測を行う。
  → 特に日本の港湾を含む海域の現状把握
について研究を行っている。


研究の成果

@ 銅の形態別分析法

金属元素分析を行う手法は蛍光X線分析、原子吸光分析、誘導結合プラズマを用いての発光法と質量分析法など各種あるが、これらは全て各元素の全量分析である。本研究では、水生生物の毒性に関連する同じ元素で化学的性質の似たようなものをグループ分けする必要がある。そのため銅イオンや無機銅を主とした電気的活性なグループと有機金属などの不活性なグループを分ける手法として電気化学的手法のストリッピング・ボルタンメトリー法を採用した。分析原理は以下の図1の通りである。始めにプレートという作業を行い、電極に金属を析出させて溶液中の銅イオンを電極に集める。その後、ストリッピングという操作で析出させた金属を銅イオンとして溶液に戻し、その時の電気量を計測し、定量を行う。

ストリッピングボルタンメトリー原理
図1 ストリッピングボルタンメトリー分析原理

実験に使用したSV法の装置はNano-Band Explorer(GLサイエンス)で、比較的小型な装置であり、海辺などの現場まで携帯ができるものである。本装置での銅の検出限界は0.16 ppbであった。

ストリッピングボルタンメトリー装置外観
図2 ストリッピングボルタンメトリー装置外観

A 海域での分析

2010年に東京湾、館山、千倉で海水採取を行い。Labile銅と銅全量についてSV法で計測を行った。

サンプリング場所
図3 採水場所

得られた銅に形態別に関する濃度範囲は、それぞれLabile銅は最大3.68 ppb、銅全量は最大4.84 ppbであった。東京港で銅濃度が高い傾向にあったのは、河口付近とその延長線上と港湾付近であった。後者は船舶起源の銅の可能性が高いと考えられる。

銅濃度の比較
図4 各港湾での銅濃度の比較

今回の結果と他の結果を比較すると日本ではlabile銅の値が比較的高い。そのため今後もモニタリングを行っていく必要があると考えられる。さらにリスク評価の高度化のために海域での銅物質の構成割合の詳細、銅物質起源の割合についても調べる必要があると考えている。


謝辞

本研究は、張野宏也教授(神戸女学院)、岡村秀雄教授(神戸大学大学院海事科学研究科)、西野貴裕様(東京都環境整備公社・東京都環境科学研究所)にご協力を頂いている。
また、科学研究費補助金(科研費)若手研究B(課題名:防汚塗料起源の海洋中の銅物質挙動解明H21-23)の研究助成により行われている。



本研究に関するお問い合わせは、info2@nmri.go.jpにお寄せください。


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