伝熱システム研究グループ


概要
  伝熱システム研究グループでは 船舶におけるエネルギー関連の研究を行っています。航行中の船は洋上で独立して機能するシステムと考えられます。エネルギーと一言で言っても、単にエンジン(船のエンジンのほとんどがディーゼルエンジンです)を回して、船を進めるだけ、といった単純な話ではありません。船の運航に必要な電力(居住区の照明や空調、荷役用装置等の船内の様々な機器に使用されます)を得なければいけませんし、蒸気発生や燃料の予熱(多くの場合、舶用ディーゼルエンジンで使用される燃料は低質の重油です。特にC重油と呼ばれる燃料は室温では粘りけが強すぎてエンジンで使用できません。そこで熱を加えて粘りけを押さえる必要があるのです)には熱エネルギーが必要です。航行中の船は、燃料を燃やしてこれらのエネルギーのニーズに対応しています。しかし、船に積める燃料の量は無制限ではありません(たくさん積みすぎれば、そのぶん運べる荷物の量が少なくなります)。
  陸上からエネルギーを供給してもらえない航行中の船では、エネルギー利用の効率化が、特に最近の燃料費の高騰や地球温暖化問題も含めて考えると、非常に重要になってきている言えます。
  一方、船は非常に優秀な省エネルギー性能を示しています。1tonの荷物を1km移動するのに必要なエネルギーは鉄道と並んで最も少ない輸送機関なのです。つまり、船舶における一層のエネルギー利用の効率化を実現しようとするならば、いくつかの方法の組合せで少しずつ実現していくと言うアプローチが現実的に思えます。例えば、船の抵抗を減らすという方法もありますし、ゆっくり走って消費エネルギーを押さえるという考え方もあります(船の抵抗は速度の3乗に比例して増えるので、速度を落とすことは推進に必要なエネルギーを大幅に減らすことにつながります。ただし、同じ距離を運ぶのにより時間がかかるようになります)。
  当グループでは、船舶のエネルギー利用の効率化(省エネルギー)をエンジンサイドから考え、研究を行っています。

主な研究課題
研究課題名;環境調和型高性能ハイブリッド熱交換器による高効率舶用排熱回収システムの研究開発
(研究概要)
  エンジンサイドから船舶の省エネを考えたとき、舶で用いられているディーゼルエンジンの熱効率がすでに十分高いと言うことがネックになってきます。つまり、エンジンそのものの効率を改善するのは非常に難しいと言うことです。そこで別の考え方としてあがってくるのが、排熱回収という方法です。エンジンで燃やされた燃料の持つエネルギーの全てがエンジンを回すために使われるわけではありません。数100度の排気ガスの形で捨てられています。その捨てられている熱を有効活用しようというのが排熱回収の考え方です。排熱回収は、1)熱を回収する、2)熱を利用して動力を生成する、3)熱として利用し尽くす、といった手順になります。例えば、排気ガスから「熱交換器」を使用して熱を奪い蒸気を発生して蒸気タービンを回して発電する、といった方法が考えられます。
  舶用の排熱回収、特にエンジン排ガスからの排熱回収を考えたとき、燃料性状の悪さに伴う排ガス性状の悪さが問題となります。例えば排ガスに含まれる煤は熱交換器に付着すると熱交換性能を低下させます。また、重油に含まれる硫黄分(S分)は燃やされて排気ガス中で水蒸気と結びつくと硫酸になり、熱交換器を腐食させます。
  そこで、排熱回収の入り口、すなわち熱回収に使用される熱交換器を、このような問題から解消しようというのがこの研究です。
  具体的には、循環流動層と呼ばれる装置を利用することを考えています。この装置は、ガスと粒子が混ざり合って装置の中を流れることで、ガスの性状を変化させたりガスから熱を回収したりできます。ここでは粒子として脱硫剤を考えています。図1(左)に循環流動層の試験装置の写真を示します。分散板と呼ばれる穴の開いた板からガスが流れ込みます。この実験装置では空気を流して粒子の動きなどを調べていますが、実際の熱交換装置ではエンジン排ガスが流れ込みます。流れ込んだガスは粒子と混ざり合いながらライザー部と呼ばれる流路を上昇します。このとき、粒子として脱硫剤を投入しておけば脱硫が行われますし、粒子は排ガスの熱も奪います。この流れは、サイクロンと呼ばれる固気分離装置に導かれ、ガスは外部に、粒子はダウンカマーと呼ばれる流路を通って下に落ちていき、バルブを経由して再びライザー部に戻っていきます。粒子がこのように装置内部を循環するため「循環流動層」と呼ばれます。ちなみに粒子に流体を送り込むとまるで全体が流体のように流動します。そして、その現象は「流動化」と呼ばれますが、「流動層」はその流動化現象を利用した装置です。流動層そのものは化学工学の分野で広く利用されていますが、船の上で利用されたことはほとんどありません。そこで、この研究では船上での利用を考え、船の動揺が流動層の挙動にどのような影響を与えるのかを調べています。図1(右)は船体動揺を模擬できる動揺台に試験装置を搭載した写真です。また、流動層試験装置を利用した排熱回収システムの性能解析(図2、システム概念図)や、流動層内部のCFD解析等も実施しています。
(この研究は、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構「エネルギー使用合理化技術戦略的開発 エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発」により実施されています)


  
図1 循環流動層試験装置(左)と動揺台に搭載された同装置(右)

図2 循環流動層を用いた排熱回収システム

(研究成果)
 動揺試験の結果、ライザー部内の流れ、特に壁近くのダウンフローと呼ばれる現象に動揺が大きな影響を与えることや、それにより、装置の圧力損失が増えること等の新しい知見を得ています。
 今後、実際にエンジン排ガスを利用した排熱回収実験を行う予定です。

その他
  他に、熱伝達における重要な現象である混相流に関する研究や、排熱回収による動力生成のためにスターリングエンジンの開発研究も実施しています。

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