スターリングエンジンの製作図面


海上技術安全研究所 川田正國,平田宏一
1.スターリングエンジンの製作図面

実験用スターリングエンジンの組立図
 スターリングエンジンの製作図面は,(1) もの作りのための加工を考えた図面であること,(2) エンジンの機能を損なわないための図面上の指示が適切であることが重要である。
 以下,排熱利用スターリングエンジン(左図)のいくつかの部品図を参考にしながら,ピストン軸と出力軸の位置精度や製作図面に表れる幾何公差について考えてみたい。

 以下で紹介する排熱利用スターリングエンジンは,(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構 基礎的研究推進制度のもとで,平成17年度に設計・試作されたものである。

2.ベース 〜組立の基準となる部品〜
   スターリングエンジンの機能を損なわないためには,組立の際に基準となる面が重要である。このスターリングエンジンの場合は,左図に示すベースが基準となる。ピストン駆動機構のピンの位置決めに対して厳しい寸法公差を指定している。
3.クランクケース 〜ピストン軸とクランク軸の位置を決める重要な部品〜
   左図に示すクランクケースは,ピストン軸とクランク軸の位置を決める重要な部品である。そのため,底面を基準としたピストン軸やクランク軸に幾何公差を与えている。軸受ホルダやシリンダを接続する穴に厳しい寸法公差(はめあい)を指示している点も注目したい。
4.軸受ホルダ 〜軸受を支持するための部品〜
   左図の軸受ホルダでは,軸受とクランクケースの位置決めのために幾何公差を指示している。また,軸受の位置を厳密に固定するため,軸受はしまりばめで挿入する。
5.スコッチ・ヨーク機構 〜垂直にピンを立てる〜
 
スコッチ・ヨーク機構
 本スターリングエンジンのピストン駆動機構には,左図に示すスコッチ・ヨーク機構を採用している。ベースには6本のピンが立てられ,小判型をしたプレートでしっかりと押さえられる。ヨークはピンに支持され,上下運動を拘束される。ヨークの中には軸受を取り付けた出力軸(クランクシャフト)が回転する。
 スターリングエンジンの高性能化のためには,機構部での摩擦損失をができる限り小さくする必要がある。そのためには構成部品同士の組立精度が重要になる。
6.ピン 〜もの作りのための最小限の指示〜
   左図はベースとプレートの間に設置されるピンの部品図である。この部品は市販のロッド材を使用するため,特別な寸法公差・幾何公差を指示していない。もの作りのための最小限の指示で表した図面と言える。・
7.プレート 〜ピンとピストン軸の精度〜
   左図はピンを押さえるためのプレートである。ベースと同様,ピンを固定する位置に高い精度を要求している。また,プレートがエンジン内部で動かないようにクランクケースとのはめあいも指示している。
8.まとめ
 
試作した排熱利用スターリングエンジン
 以上,スターリングエンジンのいくつかの部品図を紹介しながら,組立の精度や機械製図について考えてみた。以下,もの作りのための機械設計・機械製図の要点をまとめる。

●寸法公差・はめあいの重要性:本スターリングエンジンにおいて,ピストン軸およびクランク軸の位置決めのため指定が図異種になされている。
●加工方法の知識:製作のための図面を作成するためには,汎用機械,NC機械,鋳造などの加工方法についての知識が必要である。
●幾何公差を指定する難しさ:幾何公差は,機械の機能,部品の加工方法や形状計測方法などを考えた上で指示しなければならない。
●機械を作り上げる楽しさ:学生や若い技術者野方には,設計から製図へ,そして実機製作までの機械を作り上げていく楽しさを味わっていただきたい。
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