輸送高度化研究領域 推進システム研究グループ ※工藤 達郎
スーパーエコシッププロジェクトチーム 川並 康剛
1.はじめに
船舶が波浪中を航行する場合、波及び船体の周期運動により、船尾にあるプロペラに流入する流れも周期的に変動する。そのためプロペラが発生するスラスト等の力も周期的に変動するが、その力の時間平均値は必ずしも流入流を時間平均した均一流中で作動する同じプロペラの力に一致するとは限らない。そのため、波浪状態を考慮した船舶を設計する場合にはこの影響を加味してプロペラ設計を行う必要がある。
本論文では、流れの変動成分のうち主流速変動に的を絞り、流速が正弦波状に変動する脈動流中におけるプロペラ力の変化を計測し、プロペラ設計に対する影響を考察した。
2.実験および結果
実験は海上技術安全研究所大型キャビテーション試験水槽第一計測部で行われた。脈動流は水槽のインペラ回転数を正弦波状に変化させることにより発生させた。最も振幅が大きい時の例を図−1に示す。インペラ回転数Ni、流速Va共に、定常流(振幅0)の時の値に対する比で示している。流速はインペラ回転数に対して位相55.4度遅れ、振幅31.2%でほぼ正弦波状に変化している。振幅が大きくなると流速の平均値が僅かに定常状態のそれより大きくなる。

図−1 インペラ回転数と流速の変動
供試模型にはM.P.No.092(5翼MAUプロペラ、ピッチ比1.0)を用い、プロペラ前進率J=0.845(Ni=5.00rps)を中心にインペラ回転数変動の振幅と周期を変えながらプロペラのスラスト、トルク及び効率の変化を測定した。計測値には、別に計測された単独性能曲線を基に平均流速のずれの補正を行った。計測結果を図−2〜4に示す。
図−2には周期を一定(10秒)にして振幅を0.06から0.60rpsまで変えた時の平均スラスト等を示す。振幅を大きくするとスラストとトルクが減少する傾向が見られるが、効率は変化しない。



図−2 プロペラ単独効率・スラスト・トルク (周期一定)
図−3には振幅を一定(0.06rps)にして周期を1から10秒まで変えた場合を示す。スラストは変化せず、トルクだけ若干減少する。その分効率は若干増加するが、0.2%未満である。



図−3 プロペラ単独効率・スラスト・トルク (振幅一定)
図−4には最大加速度を一定にして振幅を0から0.60rpsまで変えた場合を示す。周期も比例して0から10秒まで変化している。傾向は周期一定の場合と同様である。



図−4 プロペラ単独効率・スラスト・トルク (加速度一定)
3.考察および結論
主流速の脈動がプロペラ性能に与える影響を実験により調べた。その結果、以下の結論を得た。
[結論1]脈動流によりプロペラの平均スラスト及びトルクは減少するが、効率は変化しない。
これを実船に当てはめて考えた場合、出力がほぼ一定ならばトルク変動によりプロペラ回転数は変化するが、平均出力も平均効率も変化しないので、以下の通り結論して実用上問題はない。
[結論2]船舶設計に於いて、脈動流の推進器への影響(高速船等のキャビテーション影響を除く)は考慮せず、平均流速で考えて良い。