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データシステム研究グループ研究紹介
災害時における救援物資輸送

東日本大震災は、電気、水道、ガスなどのインフラシステムに甚大な被害をもたらしましたが、 救援物資輸送システムにも混乱が生じ、物資が避難所まで届かない問題が生じました。 この問題は、東日本大震災に限らず、阪神・淡路大震災や新潟県中越大震災でも発生しており、 大規模な震災で繰り返し起こっている問題です。表1には輸送を行う上で必要な要素を挙げます。


表1 輸送システムに必要な要素


表1は輸送作業にを行う上で当然必要な項目を掲げていますが、 輸送作業を滞りなく行うための必要条件です。つまり、 この中の一項目でも能力不足になったり、欠落すると、システム全体の輸送能力が落ちてしまいます。 しかしながら、災害時という混乱の最中、これらの項目をすべて満たすことは、大変難しい作業となります。 このため、各自治体は、表1の項目を満たすために物資の備蓄や災害時の輸送協定などを結び、平時から準備を進めています。


■災害時輸送シミュレータ

表1に示した要素は、輸送をスムーズに行うための必要条件となりますが、 これらの要素を揃えるだけでは、どの程度の輸送能力が確保できるのかが分かりません。 あるいは、輸送能力を制限している項目(ボトルネックと呼びます。)がどこにあるのかがはっきりとしません。 そこで、表1の要素を反映できるシミュレータを開発し、輸送能力やボトルネックを把握することを試みています。 表2にはこのシミュレータの入出力データをまとめています。


表2 シミュレータの入出力データ


開発したシミュレータはWindows上で動作し、 表2に示す「入力データ」を読み込んで解析を行い、 結果として「出力データ」に挙げた項目をファイルに保存します。 シミュレータのユーザーは出力される輸送量を見て、輸送システム全体の良し悪しを判断できます。 また、想定される様々な被災条件を「入力データ」に反映させることができるため、 (例えば、港や道路のダメージを荷役速度や通行速度の制限として反映するといった方法で被災状況を反映できます。) 前もって、防災計画上の輸送システムの弱点やボトルネックを見つけることができます。


■シミュレータの解析例

開発したシミュレータによる解析例を示します。 図1は、シミュレーションに利用した道路、航路ネットワークです。 道路ネットワークは、各自治体が指定している緊急輸送道路で構成されており、 航路ネットワークは、2港間を結ぶ最短路に大きな迂回が生じないように 配慮したネットワークとなっています。 ここでは、日本全土を対象としたネットワークを示しましたが、 データを入れ替えることで、市区町村内の輸送を対象としたシミュレーションも可能です。

図1 輸送シミュレーション上の道路、航路ネットワーク


図2には図1のネットワークとトラック約2000台、大型船50隻を用いた時の輸送量を示します。 また、図3にはネットワーク上の交通量を色別で示します。(赤色は交通量が多いことを示しています。) なお、全国から埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県への支援輸送を模擬した解析結果です。

図2 シミュレーション結果(輸送量)


図3 シミュレーション結果(交通量)


この解析例で示すように、本シミュレータのユーザーは、 輸送条件を変化させ、図2,3に示した輸送量や交通量に与える影響を観察することが可能です。 これより、防災計画で策定されている輸送システムの能力やボトルネックの把握に繋がると考えています。 本シミュレータについての概要は以下の資料にまとめられていますので、御参照下さい。


間島隆博, 災害時における救援物資の輸送体制とシミュレータ, サプライチェーンリスク管理と人道支援ロジスティクス, 久保幹雄・松川弘明編, 近代科学社, pp.201-234 (2015)
間島隆博, 矢野裕之, 災害時物資輸送シミュレータとシミュレーション解析, 第32回日本物流学会全国大会研究報告要旨集, pp.53-56 (2015)