• 拡大
  • 標準サイズ
  • 縮小
  • 文字サイズ
ホーム > 研究のご紹介 > 運航・物流系 > 運航計画技術研究センター > 運航計画技術研究センター研究紹介
運航計画技術研究センター研究紹介
航海・配船計画支援システム導入による船舶からのCO2排出削減実証事業

国際海事機関(IMO)において、船舶からのGHG排出量削減のため、技術的手法、運航的手法、経済的手法の検討が進められており、運航的手法では、航海計画の改善による運航効率化を促進することが求められています。

船舶では、減速運航を行えば大きなCO2削減効果が期待できます。しかし現状では、気象・海象の影響で期日に遅れるリスクを避けるため、過大な速度で運航し目的港で沖待ちする傾向があります。また、配船計画と航海計画とが個別に行われ、減速運航が効率的に実施できていません。

本事業では、2013年度から3年間の計画で、運航計画技術研究センターが、減速運航を考慮した配船システムと気象等の船への影響を考慮したジャスト・イン・タイムの航海計画を提供するシステムを開発し統合することで、気象・海象条件等による速度低下を踏まえた到着予想時刻をリアルタイムに計算することにより、輸送期日に遅れるリスクを避けつつ、必要最低限の速度での環境に優しい運航と最適な配船を可能とし、船舶から排出されるCO2を大幅に削減することを目標としています。

2015年に、荷主、船社等と協力し、本システムを用いて内航輸送の大宗を占めるセメント船、タンカー、RORO船40隻程度での実証実験を実施し、併せて開発したCO2削減効果の評価手法を用いてその効果を検証します。


(※ roll-on/roll-off 船:トレーラーなどの車両が直接出入りして荷物の積み降ろしができる船舶)


対象となる内航船舶の船種


■実施体制

本事業は、海技研が代表となり、㈶鉄道総合技術研究所、宇部三菱セメント㈱、出光興産㈱、宇部興産海運㈱、鶴丸海運㈱、旭タンカー㈱、日本通運㈱、日本海運㈱等と共同で実施し、実用化を目指しています。また、普及・実用化について普及検討委員会(座長北條英:日本ロジスティクスシステム協会)において検討を行っています。


実施体制


■開発スケジュール

本事業は、2013年度から2015年度までの3年間の計画で進められています。また、本事業終了後の実用化を目指しています。


スケジュール


■開発技術

本事業では、①配船-航海計画統合システム及び②船舶からの温室効果ガス削減量定量化方法と評価方法の技術開発を行っています。
□「配船-航海計画統合システム」の技術開発では、これまで人の経験と勘により行われてきた配船について、ユーザー側の制約・要件を取り入れ、短時間で船舶の性能を取り込んだ最適配船計画案をコンピュータを用いて立案し、これに連動して高精度な気象・海象の予測情報、船舶性能推定による船舶運航計画を最適化するシステムを開発します。
□「船舶からの温室効果ガス削減量定量化方法と評価方法」の技術開発では、本システムを用いることによるCO2削減効果の定量化法と評価手法を開発しました。本評価方法法は、船型、運航方法等にかかわらず対象となる内航船舶に適用可能なものです。開発した評価手法は、J-クレジット制度の方法論として第三者認証機関(LRQA)から審査を受け妥当性を確認しました。


(1) 航海・配船計画支援システムの開発

実務上の制約・要件を反映するため、荷主・船主の参画の下で、船舶性能を取り入れた配船計画支援システム及びこれと航海計画を連携した航海・配船計画統合システムを開発します。

① 配船アルゴリズム

配船計画のアルゴリズムは、海技研と鉄道総研とがそれぞれ整数計画法と制約プログラミングという異なる手法を用いて開発を行っています。対象船舶の配船計画立案に要する演算時間は、どちらのアルゴリズムも5分以下(当初目標10分)であリ、当初の演算時間の目標を満足しました。また、減速の効果を考慮した配船案により14%程度のCO2削減効果のポテンシャルが見込めることをシミュレーションベースで確認しました。


配船支援システムの効果(配船シミュレーション結果(制約プログラミング))


配船支援システムの効果(配船シミュレーション結果(整数計画法))


参考文献

T.SETA,T.KANO“Application of set partition based fleet scheduling system to Japanese coastal oil tanker fleet” IMAM2013 (15th International Congress of the International Maritime Association of the Mediterranean) 691-696

② 船速計画アルゴリズム

船速計画アルゴリズムは、風、波、海流が船速に与える影響を考慮して動的最適化手法を用いて燃料消費量(CO2排出量)を最小化する船速計画を立案します。3日程度の航海の船速計画立案は数十秒(当初目標1分)で計算が可能であり、当初の演算時間の目標を満足しました。また、減速の効果を考慮した航海では大きなCO2削減効果のポテンシャルが見込めることをシミュレーションベースで確認しました。


③ 実海域での船舶性能

船速計画の算定にはより精度の高い風波中での船舶の推進性能が求められます。ここでは、時間当たりの燃料消費量について、平水中、風、波による影響を海技研実海域性能評価プログラム(VESTA)をもとにモデル化し、モニタリングデータにより回帰分析を行い観測データをできるだけ説明するように修正し推定しています。(性能評価例)なお、この方法は、東京海洋大のNPOマリンテクノロジストの武隈氏と開発したものです。このほか、武隈氏と対水船速計を設備していない船舶、建造造船所が倒産し船型データが入手できない船舶への対応についても検討を行っています。


性能評価例


④ 船上で航海計画の入出力情報のやり取りを行う船載機開発

船舶から航海計画の要求を受け、海技研が本システムにて演算した結果を、船上で表示するGUIとしての船載機について開発を行いました。この開発は、海技研が表示すべき項目等について企画・検討を行い、これに沿いメーカー(MHIマリンエンジニアリング、日本無線、戸高製作所)にて既存の船載機の表示部分について所要の改修を行いました。


船載機


各船載機メーカーにより、分かり易い取扱いマニュアルが作成されています。また、ビジュアルなマニュアルも作成されました。


船載機マニュアル


⑤ 航海と配船計画支援システム一体化

船載機や船社、荷主等との情報連携のシステムについて、実用型プロトタイプを構築しました。


航海と配船計画支援・情報連携システム


参考文献

間島隆博:「船隊管理システムについて」(「輸送の三原則を統合した国際海上輸送システム創出の研究」平成25年度研究成果報告会、神戸大学)


本プロトタイプを用いて船載機との連接試験、リアルタイム試験をサイトにて行い、実船に船載機(プロトタイプ)を搭載して予行試験を実施し、実利用環境下での動作等を確認しました。

訪船説明


プロトタイプの開発


(2) 温室効果ガス削減量定量化方法と評価方法の開発

本支援システムのCO2削減効果の定量化法と評価手法を開発しました。船型、運航方法等にかかわらず対象となる内航船舶に適用可能な評価方法を考案することを目指しています。2014年度に評価方法を開発し、開発した評価手法は、第三者認証機関(LRQA)から審査を受け妥当性を確認しました。 船舶でモニタリングしている時系列情報と日常業務で提出される航海、燃費レポートを基に評価する2つの方法について検討をしています。
Note LRQA:Lloyd's Register Quality Assurance Limited


参考文献

1. T.KANO,T.SETA “A Study on the Eco-Shipping support system for keeping regularity of Ship’s Schedule” IMAM2013 (15th International Congress of the International Maritime Association of the Mediterranean) 667-674
2. Kano, T.&Namie, S. (2014), A study on Estimation of GHG Emission for Speed Planning Operation Using Energy Efficiency Index and Time-series Monitoring Data, 13th Conference on Computer and IT Applications in the Maritime Industry (COMPIT), 167-180
3. Kano, T.&Namie, S. (2014), A Study on Estimation Methodology of GHG Emission from Vessels by Using Energy Efficiency Index and Time Series Monitoring Data, International Maritime and Port Technology and Development Conference (MTEC)、35-41

■実証実験

運航計画技術研究センターが、荷主、船社等と協力し、本事業で開発したシステムを用いて内航輸送の大宗を占めるセメント船、タンカー、RORO船40隻程度での実証実験を実施し、併せて開発したCO2削減効果の評価手法を用いてその効果を検証し実証実験を行うにあたり、船社等との連絡調整会合の場にて実証実験の試験法案について説明を行うほか、本事業で開発した船載機(プロトタイプ)を、対象船舶に搭載し、船載機メーカーが、対象船舶を訪船し取扱いマニュアルに基づいて乗組員に船載機の操作方法について説明を行いました。並行して、運航モニタリングデータに基づき船舶の推進性能評価を行うなどの準備を行いました。


情報提供スキーム


2014年度の第4四半期から、セメント船(19隻)、油タンカー(17隻)及びRORO船(5隻)合計41隻を対象に、海技研が荷主及び船社と共同で、航海・配船計画支援システムの導入によるCO2排出削減量を検証するため実証実験に順次、着手しました。CO2排出削減量の評価は、本事業で開発を行い第三者審査機関により妥当性が確認された評価方法に沿い実施します。なお、セメント船の事例では、船長の協力もあり10%程度の省エネ運航(計画10%減に対し実績9%削減)を行うことができました。


CO2排出削減効果事例(セメント船)


■普及検討委員会

普及検討委員会を設置し、本事業の状況についての確認と普及に向けての検討を行っています。また、本事業は関係者が多いため、船社等との連絡調整会合を設け密に実施しています。


■今後の展開

2015年度は、荷主・船社等と協力し、航海・配船計画支援システムにより40隻程度の対象船に対し、実証実験を2015年度第4四半期まで継続します。 モニタリング等の解析を行い、開発したCO2排出削減量評価手法に基づいてCO2削減量の評価を実施し、その効果を検証します。 この結果をとりまとめ、荷主・船社等に報告し、海事関係者への普及・周知活動を行います。 本事業終了後実用化が図れるように、航海・配船計画支援システム導入による船舶からのCO2排出削減だけでなく、船舶の動静情報など船舶、船社、荷主間の情報連携を図り海上物流効率化も推進するシステムとして、荷主、船社等と協力して本事業を進める予定です。