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水槽試験技術グループ
 このグループは推進性能の良い船の形(船型という)やプロパルサ(推進器)を開発する上で重要な役割をなす性能評価を実験的に行う研究をしています。船型には船体のみならず、舵やキール、フィンなどが含まれます。
メンバー
グループ長下田 春人
後藤 英信
牧野 雅彦
藤沢 純一
若生 大輔
濱田 達也
澤田 祐希
研究紹介
主な研究テーマと水槽試験技術に関するご紹介

 当グループで実施中の研究テーマと最近の技術トピックについてご紹介します。

(表題をクリックすると解説ページへジャンプします。)

 

地球環境への影響から船舶に対する国際的な規制が高まっています。当研究所では、環境にやさしい船舶の研究を行っていますが、そのために船舶の 推進性能を評価する研究は重要です。推進性能をより正確に評価する「マイクロバブルPIV」と呼ばれる研究についてご紹介します。

 

船の推進エネルギー効率を上げるため、船体に突起や円筒などの付加物を取り付けて船のまわりの水の流れを改善し、燃費を向上させようとする試みが行われています。当研究所でもこうした付加物による効果を確かめる試験が行われていますが、様々な付加物の効果を迅速に確かめられるように3Dプリンタで付加物を製作しています。 

推進性能とは

 船が進もうとすると主に水(海水)から抵抗を受けますが、推進性能とはこれにうち勝って船を推進させるための力の大小をいいます。同じ大きさの船や速力または仕事(積荷)などに対して、水の抵抗が小さい船は推進性能が良いといえます。

 従来は波・潮流・風などのない状態(平水中)で推進性能の良い船を開発していましたが、近年は波浪中で抵抗の少ない船や馬力または燃料消費量の少ない船の船型について研究を行っています。更には、推進性能ばかりでなく、運航コストや船価などまで含めた総合性能で評価する様になっており、船型開発時にこうした推進性能を考慮することが必要となってきています。

プロパルサとは

 船体を航走させるためには、自動車のタイヤにあたる推進装置(プロパルサ)が必要であり、よく知られているものとしてスクリュー・プロペラ(通常、プロペラと呼ばれることが多い)があります。(この他にも外輪プロペラ、帆などがあります。)

プロペラも様々な種類があり、よく目にする通常型プロペラの他、可変ピッチプロペラ、ダクトプロペラ、二重反転プロペラの他、現在話題となっているポッテッド・プロペラがあり、それぞれの長所や特徴を生かして用いられます。

キャビテーションとは

 船を動かすプロペラは効率良く推力(スラスト)を出すため、プロペラ翼の背面(前進面)側の圧力は真空近くまで低くなります。この様な低い圧力の所では常温(15℃)でも水が沸騰し、泡の固まりが発生します。この現象をキャビテーションと呼びます。キャビテーションが発生すると、泡がつぶれる際に高い圧力が発生するので、プロペラや舵が損傷してしまいます。また、このときノイズが発生するので潜水艦や音響ソナーをもつ船では騒音が問題となります。なかでも一番問題となるのは船尾振動で居住性、安全性の観点から商船では重視されており、この発生予測技術の向上が最も期待されています。

船の推進性能の評価と水槽試験

 船型の推進性能は今でも平水中で行うのが基本となっており、このため曳航水槽という非常に大きなプールで模型船を引っぱって性能を計測することで実船の性能を評価します。この模型試験による手法は100年以上前に開発され、今日までデータの蓄積と試験法の改良がなされてきています。当研究所には2本の曳航水槽があり、一つは三鷹第2船舶試験水槽(通称、大水槽、400m水槽、長さ400m、幅18m、深さ8m)で世界有数の大きさを誇っています。もう一つは、三鷹第3船舶試験水槽(通称、中水槽、長さ150m、幅7.5m、深さ3.5m)で、水深を変化させることもできます。また、両者はそれぞれ種々の波を発生させることが出来ます。実海域を想定した波浪中性能の研究も行っています。

 この他に、プロパルサを中心に推進性能を評価するため、大型キャビテーション(空洞)水槽があります。曳航水槽と異なり、水が水槽内を循環する回流水槽であり、キャビテーションを発生させることができる様に真空近くまで水槽内を減圧できます。この施設は長手方向16m、高さ10mで日本最大のキャビテーション(回流)水槽となっております。詳細は 施設のページ を御覧ください。

試験水槽の近代化

 400m水槽は平成13年~14年度にかけて、改修工事を行い、建設後38年も経て老朽化した水槽は時代の変化と要請に対応した新しい水槽に生まれ変わりました。改修に当たり本研究グループが中心となって改修工事に対応した業務を行いました。

 工事の内容は以下の通りです。
* 曳引車の速度制御装置の近代化(制御性能、安全性及び実用試験速度の向上)
* 造波装置の近代化(フラップ型からプランジャ型へ)

また、水槽性能維持のために定期的に保守作業を実施しています。

水槽試験法の開発

 このグループは船型開発の基本となる船の抵抗と推進性能を精度良く計測する水槽試験法の開発や精度向上、並びに効率化に取り組んでいます。この試験法に関しては、国際試験水槽会議(International Towing Tank Conference)というNGOの団体が世界で最も進んだ合理的試験手法について技術委員会を設置して調査・検討・議論・推奨をする活動を行っています。当研究所もこのメンバーの一員として参加するとともに、会議の運営をする評議会(Advisory Council)に参画し、技術委員を各期(現在第2期、1期3年)数名参加させ、国際協力と貢献をしております。

 抵抗・推進性能の優れた船型開発にも取り組んでおり、現在話題となっているポッド型プロパルサを装備した船型開発とポッド型プロパルサを装着した船の推進性能の計測法の開発に取り組んでおり、国土交通省からの受託研究「次世代内航船の研究開発」プロジェクトにおいて新しい試験法を開発指導する縁の下の力持ちとしての貢献をしています。


模型船製作&寸法検査


KCS 模型船の水槽試験


船型開発

 従来の船型開発は過去の試験結果を集積したデータベースや造波抵抗理論やプロペラ理論などに基づき、経験工学的に何隻も模型船を製作し、シリーズ試験等のなかで良い船型を見つける手法がとられてきましたが、現在はハイパフォーマンスなコンピュータの発達に対応した数値計算法(CFD;Computational Fluid Dynamicsを含むNFD)が数多く開発されてきています。最近は水槽試験の前にNFDで最適船型を見い出して、最終的に水槽試験で確認する手法がとられるようになってきています。本グループではCFD計算プログラムの信頼性確認の検証データを提供するため、不確かさ解析のための繰り返し試験を行うとともに、得られた検証データを世界に発信しています。

 これらの取り組みを通して、新しい概念の推進性能の優れた船型の提案をしていく予定です。