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ホーム > 研究のご紹介 > 海洋利用水中技術系 > AUV開発研究グループ
AUV開発研究グループ
 当グループでは自律型水中ロボット(Autonomous Underwater Vehicle: AUV)の開発や実海域展開に関する研究開発を行っています。
 水中ロボットは、海洋開発機構(JAMSTEC)の所有する「しんかい6500」のような有人潜水艇、母船とケーブルでつながっている有索水中ロボット(ROV:Remotely Operated Vehicle)、自ら考え行動する自律機能を持つ自律型水中ロボット(AUV)の3つに分類することができます。従来のROVとは異なり、AUVはケーブルなしで、自力で航行するため、ケーブルが絡まる危険がなくなり、また一度に調査できる範囲も広くなりました。
 当グループでは、深海にある熱水鉱床の調査を行うことを目的とし、最大2000mまで潜ることのできる小型AUVシステムやそれに関連した要素技術の研究開発を行っています。
メンバー
グループ長金 岡秀
今里 元信
澤田 健一
横田 早織
谷口 智之
関口 秀紀(併任)
研究紹介
AUV開発研究グループが取り組んでいる研究テーマについて紹介します。
  • 高度なAUVナビゲーション
  • AUV艇体形状の設計手法
  • ジャイロスコープ
  • 音響測位と通信
  • 高度なAUVナビゲーション

     ナビゲーション(navigation)はAUVの行動決定において最上位に位置するプロセスで、AUVに所定の任務を的確に実行させるためには、それに相応するナビゲーションを開発し、適用する必要があります。制御工学ではナビゲーションが上位制御(high-level control)とも呼ばれ、下位制御(low-level control)の目標値(reference)として用いられる目標経路(reference path)を生成する役割を担います。単細胞類等の下等動物が生命維持や繁殖と言った最も本能的な目的に基づいた単純な行動のみを行うのに対し、霊長類の人間は本能に加え、多様で複雑な利害損得を考慮し、自分の行動を決定します。AUVの世界でも所定の目的、すなわち任務がより高度で複雑化すればするほど、その実現のためにはより高度なナビゲーション技術を開発し、潜航行動に適用しなければなりません。当グループは未知で過酷な海中環境に最良の方策で対応し、安全を確保しながら最も効果的な任務遂行を実現する高度なAUVナビゲーション技術の研究・開発を行っています。特に、近年は険しい海底地形に能動的に対応し、海底衝突を防ぎながら近距離で海底に接近する低高度潜航を行うことで、高効率で最も効果的な海底調査を実現するナビゲーション技術の開発や実潜航への適用に向けた研究・開発に取り組んでおります。

    参考文献
    1. Kangsoo Kim and Tamaki Ura, "Longitudinal Motion Instability of a Cruising AUV flying over a Steep Terrain," IFAC Workshop on Navigation, Guidance and Control of Underwater Vehicles (NGCUV 2015), IFAC, vol.48, issue2, pp.56-63, doi:10.1016/j. ifacol.2015.06.010, Girona, Apr. 2015.
    http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2405896315002499
    2. Kangsoo Kim and Tamaki Ura, "A Cruising AUV r2D4: Intelligent Multirole Platform for Deep-Sea Survey," Journal of Robotics and Mechatronics, The Robotics Society of Japan, vol.26, no.2, pp.262-263, Apr. 2014.
    https://www.fujipress.jp/jrm/rb/robot002600020262/
    3. Kangsoo Kim and Tamaki Ura, "Applied Model-based Analysis and Synthesis for the Dynamics, Guidance, and Control of an Autonomous Undersea Vehicle," Mathematical Problems in Engineering - Special Issue on Models, Methods, and Applications of Dynamical and Control in Engineering Sciences: State of the Art, Hindawi, vol.2010, Article ID 149385, doi:10.1155/2010 /149385, Jan. 2010.
    http://www.hindawi.com/journals/mpe/2010/149385/
    4. Kangsoo Kim and Tamaki Ura, "Optimal guidance for AUV Navigation within Undersea Area of Current Disturbances," Advanced Robotics, Brill, vol.23, no.5, pp.601-628, Apr. 2009.
    http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1163/156855309X420093?journalCode=tadr20
    5.金岡秀, 浦環,“自律型海中ビークルの流れ外乱中における最適誘導及び追従制御,” 日本機械学会論文集(C編) 70巻699号,pp.184-191,2004年11月.
    http://ci.nii.ac.jp/naid/110006264132
       
    AUV艇体形状の設計手法

      AUVに求められる運動性能は、その海中任務の目的によって変わってきます。広い海域全体を見渡すには高速なものを、起伏の激しい場所の調査には優れた操縦性を持つものを、鉛直のデータがほしい場合には大深度を移動できるものなど、それぞれの海中任務には、その実行に最も適した形状が存在します。
     現在、当グループでは、CFDを用いながら多様なパターンでの艇体形状で運動性能を評価し、そこから各々の任務に適した艇体形状を導出、また導出するまでの分析的・体系的プロセスの研究開発を行っています。

    ジャイロスコープ

     自律型水中ロボット(AUV)が自律航行するためには、AUVが海中での自分の現在位置を正確に把握する必要があります。しかし陸上で使用されているGPS電波は海中には届きません。そこでAUVでは海中での現在位置を把握するための装置の一つとして慣性航法装置(INS)を搭載しています。INSでは、加速度と角速度を検出します。加速度を積分すると速度が、速度・角速度を積分することで距離・姿勢角・方角を求めることができます。距離・姿勢角・方角を合わせることで、起点からの自機の位置を常に把握することが可能となります。このとき回転運動である角速度を検出するためにINSに組み込まれる機器が「ジャイロスコープ(通称:ジャイロ)」です。ジャイロは、その動作原理の違いからいくつかの種類に分けられます。
     (a) コマの原理
     (b) コリオリの力
     (c) サニャック効果
     当グループでは、AUVへ搭載する安価で高性能なジャイロの開発を目指し、コリオリの力を利用したMEMSジャイロやサニャック効果を利用した光ファイバージャイロ(FOG)に着目して研究開発を実施していく予定です。

          

    • MEMSジャイロ 
    •   MEMSとはMicro Electro Mechanical Systemsの略です。微小電気機械システムとも訳され、機械部品・電子回路・センサ・アクチュエータなどのシステムを、半導体プロセス技術を用いて基板上にミクロに集積化したデバイスのことです。このデバイスを用いて、物体が回転したときに発生するコリオリの力を検出することで、角速度を求めることが可能となります。MEMSジャイロは非常に小型で安価であるのが特徴ですが、一般的にAUVに搭載するためには精度が低いという問題点があります(図5参照)。


    • FOG
    •   光ファイバジャイロ(Fiber Optic Gyroscope, FOG)は、サニャック効果を利用して角速度を求めるジャイロです。サニャック効果とは、回転座標系で回転方向に沿って光が1周する時間と、逆方向に1周する時間とに差が生じる現象[1]であり、一般相対性理論より導かれます。FOGは専用の光ファイバをコイル状に配置して光を両方向に伝播させることで、対象が角速度をもって回転した時に、光が出発点に戻る時間のずれを光の位相差として検出するものです。同様のサニャック効果を利用したジャイロとして、FOGよりもさらに精度の高い、レーザーを使用したリングレーザージャイロ(RLG)があります。


      [1] 「理化学辞典 第5版」、岩波書店、1998.
    音響測位と通信

      通信といえば,空中では電波や光が主に利用されていますが,水中ではすぐに弱くなり,遠くまで伝わりません。そこで水中では音波を利用しています。

          

    • 音響測位 
    •   地球上ではGPS(Global Positioning System)による位置計測が一般的です。これは地球を周回している多数の衛星の電波により,地球上の位置がわかる測位システムになっています。しかし,水中では電波だと伝搬損失が大きいため,音波を利用した測位システムを用います。基本的な原理はGPSと同じですが,水中では基準点の設置に制約があるため,基準点の設置に応じていくつかの方式があります。本研究では,海上の母船または洋上中継器とAUVとの相対位置を捉えるため,SSBL(Super Short Base Line)方式(USBL(Ultra Short Base Line)方式ともいう)による音響測位システムを導入しています。これは受波器間の位相差から音波の到来角度を算出し,受波器アレイと1つのトランスポンダ間の伝搬時間から得られる距離と組み合わせて,位置を求める方法です。これにより,海底付近を航行しているAUVの位置が捉えることができます。


    • 音響通信
    •   無線通信などにおいて,空中では電波を使いますが,水中では電波を使用できないため,音波を利用します。また音波の伝搬速度は約1,500m/sであり,電波の速度の約20万分の1に過ぎないため,応答遅れがつきまとい,さらに周波数と距離によって減衰量が増加し、伝送可能な情報量も制限されます。そんな限られた情報量の中で,画像データや海洋観測データの伝送や,母船からAUVを遠隔制御するための通信を行います。


      参考文献
      *)海洋音響学会編:海洋音響の基礎と応用,成山堂書店,平成16年