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基準開発グループ
 IMOではGBS(目標指向型基準)という概念を取り入れた国際基準を開発する等、大きな転換期を迎えました。また、国際船級連合IACSでは、船の長さが90m以上のばら積貨物船のための共通構造規則(CSR-BC)及び船の長さが150m以上の 二重船殻油タンカーのための共通構造規則(CSR-OT)を調和させたばら積貨物船及び油タンカーのための共通構造規則(CSR BC & OT)を2013年12月に採択されました。(2015年7月1日以降に建造契約に適用)
 当グループでは、超大型コンテナ船、バラ積み貨物船、油タンカーなどの大型商船から小型高速船までを対象に荷重推定法や構造強度評価、経年劣化評価に立脚した構造基準の開発を通じて、このような国際基準の動きを積極的にリードしていきます。
メンバー
グループ長村上 睦尚
花岡 諒
松井 貞興
研究紹介
研究概要

 現在当グループでは、安全、運用及び保守に関する国際基準の動きを積極的にリードしていくために、以下の広い範囲の研究課題に積極的に取り組んでいます。

1.IMO(国際海事機関)ゴールベース構造基準(GBS)策定への取り組み

 IMO(国際海事機関)は、造船・海運にかかわる問題を政府間レベルで協議する国連の専門機関のひとつです。海上の安全、海洋汚染の防止などに関する国際的な海事規則(条約、コード等)を審議、採択します。締約国政府は、採択された規則を遵守しなければなりません。
 現在、IMOでは、タンカーの折損事故による大規模油流出事故を契機に、船体構造設計基準の国際的な体系見直しを開始しました。構造設計規則を作成するにあたっての、IMOと船級協会の役割が明確になり、船級協会は、IMOで合意される目標(ゴール)、機能要件に従って、構造寸法等を規定する船体構造設計規則を作成しなければならなくなります。
 そこで、リスク(海上における人命・財産の喪失、海洋汚染など)を物差しにして、確保すべき目標(セーフティレベル)を定量的に設定し、達成するための性能要件も定量的に把握できるようにすることをねらった方法が、セーフティレベルアプローチとよばれる対策方法です。このアプローチを科学的に実践することは、すなわち、リスクモデルを確立し、リスク解析を実施することにより、目標セーフティレベルを算定することです。このため当グループでは、GBS策定に向けて、これに資する技術的検討に取り組みました。また、IMOに研究成果を提供するだけでなく、日本代表団としてIMOでの会議に出席する等積極的に取り組んでいます。

2.全船荷重・構造一貫強度評価システムDLSAの開発

  当グループでは最先端の荷重・構造解析手法を取り入れた全船荷重・構造一貫強度評価(Direct Load and Structural Analysis:DLSA)システムを開発しています。DLSAでは、一貫解析における過程に多階層のモジュールを用意し、海象条件及び各モジュールを組み合わせることで、目的の強度評価に応じた4種類の解析・評価手順「DLSA-Basic」、 DLSA-Basic W」、「DLSA-Professional」及び「DLSA-Ultimate」を提示しています。これらの機能は、一貫解析の入力となる海象の特定も可能です。また、DLSAの開発と同時に、ソフトウェアが設計現場で簡便に使用できるようGUI(グラフィック・ユーザー・インターフェイス)の開発と普及も行っています。

 DLSA-Basicは、線形理論を基礎とした最も基本的な機能を備えたシステムで、高速かつロバストな全船荷重・構造一貫解析が実行可能です。また、荷重または降伏・座屈強度の短期・長期予測による評価に基づいて、最悪海象を特定することも可能です。

 DLSA-Basic Wは、DLSA-Basicが特定した最悪海象下の応答をターゲットとした、非線形理論を基礎とした簡易解析システムです。運動・荷重解析では、スラミングや海水打ち込みなどの非線形現象を考慮することができます。また、構造強度評価だけでなく、非線形梁を組み込んだモデルによる極限海象の特定も可能です。

 DLSA-Professionalは、最終強度評価及び残存強度評価をターゲットとしたシステムです。最終強度は従来、流体解析とは切り離されて評価されてきたため、荷重解析と連成させる本システムは実現象との溝を埋めるための手法を提示するものです。また、最終強度評価の結果から、極限海象を特定する役割も担っています。

 DLSA-Ultimateは、流体・構造双方で最先端の技術を駆使した先進的なシステムです。運動・荷重解析及び構造解析の出力データを交互に受け渡す弱連成解析を実行する全船荷重・構造一貫強度評価システムとして開発しています。また、システムの開発では、流体構造強連成解析を実行する商用コードをDLSA-Ultimateのベーシックデザインの決定ならびに比較検証に活用しています。

3.NMRIW-II(波浪中運動・荷重解析プログラム)の開発

波浪中の運動・荷重解析ツールとして、NMRIW-IIを新たに開発しました。NMRIW-II(Nonlinear Motion in Regular & Irregular Wave-Integrated Intelligence)は非線形ストリップ法に基づいており、様々な波条件下におけるスラミング・ホイッピングを含めた非線形船体応答を解析することができます。それにより求めた荷重は、DLSAのインターフェース上でシームレスに構造解析へと受け渡すことが可能です。

NMRIW-IIの解析例(アニメーション)
DLSAのインターフェース上での荷重の受け渡し
4.造船会社との連携

 当グループでは造船会社との連携により、荷重-構造一貫解析技術を実設計に適用し、従来よりも詳細な構造設計のための技術開発を行っています。下図は、全船荷重-構造一貫解析を用いた、バルクキャリアの疲労強度の解析例です。全船一貫解析法を用いることでこのような解析を効率よく実施できます。

5.日本海事協会との連携

 船体は海水に浮かぶ巨大構造物で、波から受ける力によって時々刻々と変形しています。船体が大きくなるほどその影響は顕著で、特に船体が波の山谷にまたがっている状況において、大きな曲げ変形が生じます。そのような過酷な状況下でも安全に航行できるように、船体の構造強度規則が策定されています。
 当グループでは、鋼船の規則開発及び検査を行う機関である日本海事協会との連携のもと、設計規則算式の開発・改正に資する研究を行っています。

6.防食塗装の劣化機構の解明及び寿命評価手法に関する研究

 船舶のバラストタンクや海洋構造物は厚膜の防食塗装により腐食から保護されています。電気化学インピーダンス(Electrochemical Impedance Spectroscopy: EIS)法に注目し、 この様な塗装系の劣化過程を評価するための研究を行っています、また、厚膜の防食塗装は劣化発生までに長期間を要するため、短期間に寿命評価を行う為の促進試験方法に関する検討を行っています。

70℃水中で劣化した塗膜
その他.船舶の艤装品に関する研究

 ◆バラスト水管理システム(BWMS)の環境試験と腐食影響試験
 海生生物及び病原体の越境を防止するために、バラスト水処理が義務付けられています。船舶に搭載する処理装置(BWMS)はIMO承認が必要で、承認にはBWMSが船内環境で正常に機能すること、BWMS起因の船体や配管系の腐食影響が基準内であること等が求められます。
 この研究ではバラスト水管理システム承認のためのIMOガイドライン(G9)に必要な環境試験(温度試験、湿度試験、傾斜試験、電源変動試験、振動試験)、腐食影響試験、動電位分極測定試験を行っています。