ポッド推進システム

佐々木紀幸

PODDED PROPULSION SYSTEM
Noriyuki Sasaki

 

This paper introduces Podded Propulsion Systems which are equipped with modern electric propulsion ships such as cruise ships, ice breakers, supply vessels, ice tankers and high speed Ropax ferries. The Podded Propulsion System is now world widely used and it allows revolutionary change in ship initial design. The paper intends to describe procedure of model tests and full scale power prediction methods, recent EU and Japanese projects and some other topics related to Podded Propulsion System.

主な記号

  CF 摩擦抵抗係数   T スラスト
  CD  抵抗係数   Tp プロペラスラスト
  CT  プロペラ荷重係数   Tu ポッドユニットスラスト
  D  プロペラ直径   ρ  密度
  DHP  伝達馬力   δ ポッド操舵角
  J  プロペラ前進係数   添字    
   プロペラ回転数   m  模型船
   抵抗   s  実船

1.まえがき

ポッド推進器は、その名前の由来どおり繭型をした回転楕円体の中に電動モータを内蔵し、それを船内に納めた旋回装置で回転させることができる推進装置の総称であり、クルーズ船、アイスブレーカー、サプライ船などの運航中に負荷が大きく変わる船を中心に1990年代の初頭から欧州における採用実績が急増した。

Fig.1 Double Acting Ice Tanker and 16MW AZIPOD

この背景には、電動モータの大出力化と小型化の技術革新があったことはもちろんだが、欧州造船界が一致団結して、ポッド推進器に適した経済性に優れた船型アイデアを創出したこともあった。具体的に言えば、港湾における優れた操縦力を運航費の削減に向け電気推進の推進効率の悪化を十分にカバーできる合理的な船型計画法を構築したことなどが無視できない。このように、ポッド推進器は欧州造船所が生き残りを賭けて開発してきた新しい推進システムであったが、最近では、日本国内においても、欧州では見られないユニークな新技術を付加したポッド推進船が新たに登場した。その一つは、住友重機械工業(株)が建造したダブルアクティング氷海タンカーであり、もう一つは、三菱重工業(株)が建造したハイブリッド型二重反転プロペラのポッド推進システムによる高速フェリーである。

Fig.2 High Speed Ropax Ferry and Hybrid CRP AZIPOD

これらの新しい実績に加え、(独)海上技術安全研究所が中心となって開発中のスーパーエコシップは、ポッド推進装置そのものが二重反転型となっている世界初のシステムであり、2.5MWの実機検証試験も終了した。ポッド推進器の技術は、欧州からスタートしたが、ここにきて日本でもこの先端的技術をキャッチアップすることに成功し、さらなる飛躍が期待できる環境が整いつつあると言えるのではなかろうか。

Fig.3 Super Eco Ship Project and 2.5MW CRP POD

2.ポッド推進器の採用実績

Fig.4にABBが2004年に発表したポッド推進装置の各社シェアを搭載出力ベースで示す。現時点ではABBが世界のトップメーカーであり、これを2位のRolls-Royceが追っている構図と言える。図には示していないが、搭載基数で言うと、この時点でABBが143ユニット、Rolls-Royceが47ユニットであるから、一基あたりのポッド出力はそれぞれ10MW、12MWとなり、Rolls-Royceの方がやや大きい。これはABBが開発したCompact Azipodと呼ぶ小型軽量のポッド売上が近年増加してるからである。一方、Rolls-Royceは世界最大のクルーズ船QE2に代表される高速・高出力船に特化しようとしているように見受けられる。Fig.5にABBの実績を船型ベースに示す。図から分かるようにポッド推進器の適用は砕氷船とクルーズ船が圧倒的に多く、この傾向はいまでも変わらない。したがって、現時点のポッド推進器のマーケットはクルーズ船や砕氷船のマーケットに左右されやすい側面を持っている。ポッド推進器が将来の船舶推進システムの主流となるためには、ポッド推進器の特徴を活かした新しい船型の開発が不可欠とも言えよう。またそのためには、ポッド推進システム全体の小型軽量化とコストダウンは最重点課題である。

Fig.4 Total installed power of Pod System Fig.5 Applied Vessels of ABB PODs

以下にEUプロジェクト「POD IN SERVICE」が対象としたポッド推進器を装備した船(以後、ポッド船と呼ぶ)4隻を紹介するが、プロジェクトでは、これらの船型の実船計測により、実海域におけるぽっど船の経済性の有利さを確認すると同時に操縦運動時に発生する構造負荷なども調査された。実船計測はさまざまな面で費用がかかることから、日本ではここ数年、実施されていないが、このような次世代のポッド推進器の設計に役立てようとした真剣な動きが欧州にあることは注目に価する。

Fig.6 Supply Vessel " Botnica" Fig.7 Cruise Ship ""Millennium"
Fig. 8 Cruise Ship "Radiance of Seas" Fig.9 Ferry Boat "Nils Holgersson"

Botnica(Fig .6)は、現存する砕氷船のAZIPOD装備のサプライベッセル。夏季は北海で稼動している。Millennium(Fig .7)は、Chantiers de l’Atlantique がCelebrity/RCI向けに建造したクルーズ船。ロールスロイス社のマーメイド(2基*20.1MW)を装備している。

Radiance of the Seas(FIg.8)は、RCI向けにMeyerwerftで建造されたクルーズ船。AZIPOD(2基*20MW)を装備している。最後のNils Holgersson(Fig.9)はTT-Line向けフェリーで、シーメンス社のタンデム型ポッド(SSP)2基を装備している。最後に、EUプロジェクトの対象船ではないが、Queen Merry II(QMⅡ)に搭載された4基のマーメイドの写真をFig.10に示した。4基*21.5MWとなっていて、一つの船で搭載されたポッドの総出力としては世界最大である。このように多くの大出力ポッド推進器が、クルーズ船へ搭載されたが、また多くにトラブルにも遭遇した。特にベアリングなどの海上では修復不可能なトラブルで運航不能となった場合、クルージングのキャンセルなどが発生しオーナーから多額の賠償金を請求されたケースもあったと聞く。後述するEUプロジェクトの中のPOD IN SERVICE は、上記の実際に運行中に発生したトラブルを、今後いかに防止していくかという観点でのプロジェクトでもあったと言えるのではないだろうか。

Fig.10 Passenger Ship Queen Marry II

3.水槽試験法と実船性能推定法

3.1 水槽試験法

ポッド推進器の性能を把握するには、ポッド推進器の単独試験と模型船に装備した時の自航試験を実施する必要がある。また、ポッド推進器のプロペラ以外の部分(ハウジングとストラット)を付加物として扱う解析では、プロペラ単独試験も必要となる。もちろん、プロペラ単独試験は、プロペラ設計の条件を知る意味でも重要なので通常は実施されることが多い。また、ポッド推進方式には、プロペラをポッドの前方に装備するトラクター型(プリング型)と後方に装備するプッシャー型があるが、トラクター型の採用が圧倒的に多い。これは、プッシャー型の場合、ポッド推進のメリットである離着桟性能や振動騒音低減効果がトラクター型と較べやや劣ることが原因である。したがって、本章では、トラクター型を主として扱う。両方式の違いについては、先のシンポジウム(1)に詳しいので、そちらを参照願いたい。

プロペラ単独試験

ポッド推進器用プロペラの単独試験は、従来のプロペラ単独試験と同様にプロペラオープンボートを用いて実施され、その解析も従来と変わるところは無いが、プロペラボスのテーパーが大きいという点で注意が必要である。具体的には、プロペラは実機と相似であるかそれに近いボス形状をしていることが望ましい。プロペラ単独試験の目的は、プロペラそのものの設計データを得ること、ポッドとの干渉を定量的に知ることの二つである。なお、ポッド装備船の自航試験を介して馬力計算を実施する場合、ポッド推進器を従来の推進器として解析する解析方法を用いる限り、このプロペラ単独試験のデータは必要ない。Fig.11にトラクタータイプ(プリングタイプ)の場合にITTCが推奨するポッド単独試験における模型プロペラハブ取り付け方法を示す。プロペラの前方に取り付ける整流キャップやプロペラの後方にあって単独試験装置との間の剥離を防止する整流リングには特別の注意が必要である。具体的には、ポッド推進器がトラクター型の場合の整流キャップは実機と相似にすることが好ましいし、整流リングはトラクタータイプやプッシャータイプに関係なく過度な勾配がつかないよう工夫することが必要である。また、整流リングをプロペラと一緒に回転させるか、単独試験装置に固定するかは、プロペラ単独性試験の目的によって変わる。すなわち、整流リングを回転させた場合は、後述するGAP EFFECTが発生しないので、ダミーボスだけを装備して実施した単独試験と組み合わせてプロペラ羽根だけのスラストおよびトルクが計測できる。一方、整流リングを固定した場合は、GAP EFFECTが計測されたプロペラスラストに混入し例えダミーボスを用いてもこの分離は困難となる。したがって、ITTCでは整流リングがプロペラと一緒に回転する前者の方法を推奨している。

Fig.11 Propeller Cap and Aft Fairing

ポッド単独試験

ポッド推進器の性能把握の中で、このポッド単独試験が最も多くの問題を抱えている。ポッド単独試験は、ポッド推進器を従来のプロペラのようにハウジング、ストラットおよびプロペラを一つの推進器とみなす場合に必要な試験であり、ITTCでは、この方法が物理的に、より正しい解析が可能と判断し推奨している。ポッド単独試験の目的は、従来のプロペラ単独試験と同じで、推進装置の単独性能を把握、実機の特性予測、自航試験の解析、ポッド推進器の最適化などが挙げられる。冒頭で述べたように、ポッド単独性試験では注意すべき点が多く発生する。その代表的なものは
(1)自由表面影響
(2)空気吸い込み
(3)GAP EFFECT
である。(3)のGAP EFFECTには、プロペラ単独試験で述べたプロペラボスとハウジングの間のGAP EFFECTの他に、ストラットとその上部に取り付けるシャフトフェアリング間のGAP EFFECTも含まれる。Fig.12に、ITTCが推奨するポッド単独試験装置を示した。SSPA、MARIN、MARINTEKなどの欧州水槽は、ほぼこの形式による試験装置を使用しているが、細かなところでは必ずしも一致していない。ポッド単独試験装置の詳細は、文献(30)に詳しいので参照すると良いだろう。

Fig.12 Pod Propeller Open Test Set

海技研でも、独自でHSVA方式とは異なる試験装置を開発している。このように水槽によって異なる試験装置を用いていることも、同じポッド推進器であっても、試験結果が異なる原因の一つとなっていることは否めない。Fig.13に右近らが開発したポッド試験装置を示す。水面を貫通する比較的大きなバージ型のボートの下方にポッド推進器を取り付け実船と同様の鏡像効果を取り入れると同時に水面影響を除くことに成功している。高速になるとボートからの造波が懸念されるが、HSVAの方式とくらべてもシンプルであり高精度の計測が可能と予測される。Fig.14にGAP EFFECTに対してこの2つの試験機関で実施された例を示すが、Table 1 に示されるようにプロペラの緒言が比較的近いにも関わらずGAP EFFECTは大きく異なる。

Fig.13 Propeller Boat and Podded Propulsor Dynamometer

Fig.15は、これらの試験結果をもとに著者がプロペラ設計への影響を求めたものであるが、ピッチの設定に対して1%程度であり、感覚的には神経質になるような量でもない。また、GAP EFFECTはポッド全体のスラストには影響しない内力であり、ポッドを推進器として解析する限り馬力の推定にはまったく影響がない。一方で、このGAP EFFECTにくらべ、水面影響や空気吸い込みの問題は、もっとシリアウスである。今後は、この方面の試験技術を向上させることが望ましい。

以上述べてきたように、ポッド推進器の単独試験方法にはまだ確立されたものが無い。したがい、このまま放置すれば、各機関が独自で開発したポッド単独試験装置を用い、それぞれが独自の実機性能推定法と実船との相関係数を持つことになる。これは、造船所にとっても、またポッドメーカーに取っても由々しき問題となろう。関係する試験機関が集まって造船界全体がこの新しい推進器のよってもたらされる利益を享受でき、それがまた多くの需要を喚起するような方向を模索する必要があるのではなかろうか。

Fig. 14 Gap Effect on Pod Propeller Characteristics (HSVA:left , NMRI:right)

Particulars HSVA NMRI
Diameter (mm) 215.15 200.00
Pitch ratio 1.104 0.800
BAR (expanded) 0.58 0.55
Boss ratio 0.276 0.280
Blade number 4 4
Rot. direction - Right

Table1 Model Propellers for Gap Effect

Fig.15 Gap Effect on Analyzed J based on Kt

自航試験

通常プロペラの場合と同様に、ポッド推進器を装備する場合も自航試験が必要である。自航試験は、ポッド推進器を模型船にセットして実施されるが、プロペラだけを推進器とするか、ポッド推進器全体を推進器とするかで解析が異なり、ITTCでは後者を推奨している。その場合、ポッド全体のスラストとプロペラのトルクを計測する必要があるが、同時にハウジングに内臓した検力計でプロペラだけのスラストを計測しておくとプロペラ設計に対して有用な情報が得られる。HSVAにおいて、ポッド推進器を搭載して実施される自航試験のセットアップをFig.16に示すが、このように、船尾のデッキにポッドを回転させる旋回装置とプロペラを駆動するモーターが搭載されているのが良く見られるスタイルである。Fig.17は、スーパーエコシッププロジェクトで開発されたCRPポッド推進器の模型で、やはり自航試験用のセットアップの様子を示す。自航試験のプロシジャー自体は、通常プロペラを装備して実施する場合とそれほど違いがないが、模型と実船の粘性抵抗係数の違いを修正するためのSFCとして、、ポッドハウジングの尺度影響を考慮する必要があり、これが少しやっかいなところである。実際には、プロペラの荷重度変更試験を実施して、試験後の必要なSFCを算定するのが効率的なやりかたと思われる。ポッド単独試験でも述べたが、この自航試験でもポッドの上部と船体の隙間から空気吸い込みが発生しやすいので,十分な注意が必要である。

Fig.16 Self Propulsion Test of Pod Fig.17 CRP Pods installed on Ship

自航試験においては、往々にしてポッド取り付け角の最適化も実施される。ポッド旋回装置を傾ける必要があり通常はその都度、セッティングをやりなおすことになるが、Fig,18のように装置全体を機械的に動かすことができるようなシステムも導入されている。

自航試験で得られる自航要素は、ポッドを装備するための船型変更があるため、単純には通常型プロペラと比較できないが、一般的な傾向として、高速の2軸船では、通常型プロペラの自航要素とあまり変わらなく、低速肥大船では、船型の変化が大きいこともあり、スラスト減少係数(1-t)、伴流係数(1-w)、船後効率比(ηR)のすべてが増加することが多い。Fig.19に自航試験のフローダイアグラムを示した。

Fig.18 Tilt and Pan of Pod Dynamo.

Fig.19 Flow Diagram of R&P Test for Pod

キャビテーション試験

通常プロペラで実施されるキャビテーション試験は、プロペラ本体に発生するキャビテーションによって、プロペラや舵のエロージョンが発生しないか、また船体に過大な振動や騒音を与えないかを調査することが目的であるが、ポッド推進器の場合も、その目的は同じである。しかしながら、ポッド推進器はプロペラ本体だけで無く、Fig.20およびFig.21で示されるようにストラットやポッドボディによって構成されるポッドハウジングに発生するキャビテーションにも注意が必要である。さらに、実際に運行中のポッド推進器は、舵の役割も果たすため、絶えずオートパイロットによって数度の舵角が取られ、そのためにプロペラやポッドハウジングは斜行することになり、直進中とは異なるキャビテーションが発生する。したがい、ITTCでは、通常のキャビテーション試験に追加して、このような状態を想定したキャビテーション試験も実施するよう推奨している。ポッドプロペラのキャビテーション試験状態は、プロペラ翼表面の圧力条件が実船を模擬できるようキャビテーション指数σとスラスト係数Ktを実船のそれと一致させる。その際にスラスト係数として、プロペラのスラスト係数を模擬する必要があり、自航試験に用いるポッドユニットのスラスト係数を模擬するとプロペラに発生するキャビテーョンは実際とは異なってくること注意する必要がある。Fig.21は、プロペラのスラスト係数Ktpを使用した場合と、ポッドユニットのスラスト係数Ktuを用いた場合のキャビテーションの違いを理論計算で求め比較したものであるが、有意な差が認められ、試験条件を作成する際にはこの点を考慮すべきと考える。

Fig.20 Cavitation observed on POD System

Fig.21 Cavitation Prediction based on Pod unit Thrust
Identity (upper)and Propeller Thrust Identity (lower)

3.2 実船性能推定法

ポッド推進装置に対する尺度影響の推定法に関しては、今年9月に英国のエジンバラで開催されたITTCでもそのガイドラインとも言える「Procedure」が紹介されたが、まだこれといった標準の推定法が確立されていない。各機関でルーチン的に使用されているいくつかの方法が比較検討されたに留まっていて、その大部分は、欧州の商用水槽で開発された手法となっている。Table2にそれらを整理して示した。Table4からも分かるように,細部については諸機関で異なるものの、CFDを適用するKRRIの方法を除き次に述べる基本的な考え方はほぼ同じとみなすことができる。
(1) 船体やプロペラだけでなく,ポッド本体の尺度影響を別途考慮する必要がある。
(2) 船体やプロペラは従来の尺度影響に対する推定法がそのまま利用できる
(3ポッド本体の尺度影響に最も影響するのは、ポッド表面の流速であり,トラクタ-型の場合は,プロペラ後流を考慮する必要があり複雑となる。

Table 2 Typical Prediction Methods for Scale Effect on Pod Resistance

HSVA MARIN SSPA Sumitomo KSRI
出典 Mewis,F (2001) Holtrop,J (1999) Lindell,P (2001) Sasaki N.(2002) Lobatchev and
文献(31) 文献(17) SSPA REPORT 文献(39) Tchitcherine,
2001 文献(29)
実船プロ Lerbs-Meyne ITTC 1978 ITTC 1978 ITTC 1978 ITTC 1978
ペラ特性
修正
プロペラ Va* (1+Ct)0.5 a(nP)+(1-a)Va 詳細公表せず Va* (1+Ct)0.5 体積力に相当す
後流推定 Va:prop. 前進速度 n: プロペラ回転数 Va:prop. 前進速度 る付加吹出し
Ct:prop. 荷重度 P: プロペラピッチ Ct:prop. 荷重度
ポッドハ 各部分のレイノル (1+f)*Rf 潜水艦の抵抗推 翼型、回転楕円体 RANS ベース
ウジング ズ数に対応の摩擦 f: 定式を利用した の抵抗推定式 CFD により尺影
抵抗 抵抗 allowance factor 官位推定 ストラットとポッ 響を求める
Rf: ドハウジング の干渉
FrictionalResist. を考慮

次に、KSRI を除くTable 2 に示された各機関の公表されている推定法について詳細に比較検討してみる。

SSPA

SSPA の推定法の重要なポイントを以下のように纏めることができる。

(a) ポッド推進器は、それ自体を通常のプロペラ推進器と同様に扱う。したがって、船体抵抗試験はポッド推進器がついていない状態で実施する。

(b) 自航試験は、ポッド本体の尺度影響(これをポッド推力修正ΔTuと呼ぶ)を考慮し、通常プロペラを用いた自航試験で用いるSFC( 粗度修正)にこれを加えて実施する。

(c) 実船の全抵抗は次の式で与えられる。

ここで、

(e) 実船のポッド特性は次の式で与えられる。

ここで、
ΔK
ts と ΔKqs は、プロペラ翼そのものに対するITTC で推奨された尺度影響修正式である。

(f) 実船の馬力およびプロペラ回転数は以下の式で求められる。

ここで、ΔTu ( ポッド推力修正)は最も重要な項であり、SSPA が所有する魚雷などの抵抗推定式から導かれたとされている。ポッド推進器の効率は、後述するが模型実験から得られたポッド推進効率よりかなり高い。

MARIN

Holtrop (MA RIN) は、ポッド推進器の尺度影響に関して、次の問題点を掲げている。

(a) ポッド本体の抵抗計測が困難である。

(b) 尺度影響の大きさは、寸法比、ハウジング本体形状、局所的な流向やプロペラ後流、船体伴流の尺度影響などに影響される。

(c) ポッド周りの流場は、プロペラ荷重度に影響されるが、その荷重度はプロペラとポッド本体の干渉で決まるため、その推定が困難である。

MARIN の尺度影響推定法は、次のとおりである。

ここで、D はプロペラ直径、nはプロペラ回転数、P はプロペラ翼の平均ピッチ、S はポッド本体の浸水面積、Cfは摩擦係数、(1+f) はポッド形状を反映したallowance factor と呼ぶ形状影響係数に相当するものである。

実船への適用には、形状影響係数を用いる。形状影響係数はallowance factor や相当平板の摩擦抵抗値を用いて次式で示される。

ここで、
R
RND : ポッド本体の中でReynolds 数に依存する部分の抵抗
R
housing : ポッド本体の全抵抗
R
f : ポッド本体の浸水面積に対応した平板摩擦抵抗

SSPA で用いられるΔTuと同様に、自航試験の際にはΔFと呼ぶプロペラ荷重度の修正を実施する。

ΔF を無次元化したΔKtu は、SSPA と同じ定義であるが、MARIN では、ポッドの形状に対してRRND/Rhousing の値をTable 3 のように整理し使用している。

Table 3 RRND/Rhousing values shown in ref.(2)

Configuration RRND/Rhousung
Streamlined shape of pulling pod 0.85
Less well streamlined shape of pod 0.72
Not well streamlined shape of pulling pod 0.58
Blunt shape of pushing thruster housing 0.54

HSVA

Mewis は、ポッド推進器を装備した模型船の試験方法をポッド単独試験だけでなく自航試験についても文献(31) に詳しく述べている。 ポッド周りの流場をFig.22 のようにプロペラ後流域とそれ以外の領域で表し、それらの領域での流速を次式で求めるとしている。

Fig.22 Flow surrounding a Pod system

ここで、 CTH = T /(0.5ρVa2SP) SP = πD2/4
それぞれの領域にあるポッドの摩擦抵抗係数を、模型と実船に対して導入すれば、ポッド推力修正(ΔT
u) は、次の式で求められる。:

ここで、Sは浸水面積、添え字のM 、S はそれぞれ模型と実船を意味する。
SHI (Sumitomo)
SHIの方法では、ポッドの抵抗成分をポッドハウジング(R
BODY)、ストラット(RSTRUT)および船体やポッドハウジングとストラットとの干渉成分(RINT) に分けて次のように表現する。

それぞれの項に対して次の全抵抗係数を導入し、それらについて経験式を利用した抵抗推定を行う。

全抵抗係数CDS
-ポッド 本体-
ポッド本体まわりの流場は、乱流とみなし、次式を用いて全抵抗係数を求める。

STRUT-

ここで、

干渉抵抗係数 CDI
干渉抵抗係数は、ストラットとポッドの円筒部および船体との接合部に用いる。

摩擦抵抗係数Cf ( ポッド円筒部およびストラット)

プロペラ後流外

プロペラ後流内

ここで、

模型試験との比較

Fig.23 にSHIが提案する(10)式による抵抗推定結果と実験値の比較をABB 社が製造するAZIPOD スケール模型の計測例で示す。ポッドユニット全体の力のみが計測されているので、それぞれの抵抗成分については評価できないが、全体の力として比較する限り、推定値は計測結果と非常に良く一致している。
図中の
Rint1 は、ポッド円筒部とストラットの接合部に発生する干渉抵抗であるが、図から分かるように、この例ではかなり大きくポッド本体の抵抗に近いオーダーとなっている。この部分の抵抗は、適度なフェアリングを実施することで、半減できることも知られている。

Fig.23 Resistance Components of Pod Fig.24 Scale Effect of Pod System

Fig.24 は、模型船速度Vm=1.227 m/s (実船で約15KTS 相当)でのアフラマックスタンカー船型におけるポッド推進装置の(2) 式で推定される抵抗成分である。分かりやすくするため、実船の抵抗値も寸法比λで模型レベルに修正されているが、この試算によると、ポッドの全抵抗は模型船で計測された場合にくらべ40% 近く減少する可能性があることを示している。

4. ポッドに関するCFD技術

ポッド推進器に対するCFD計算の目的は、尺度影響に対する調査、ポッド推進器形状の最適化などが考えられ、今後の成果に期待するところが大きい。ポッド推進器に対するCFD 計算としては、まずLobach ev、 Tchitch erine、Sánch ez-Caja、Chicheri らの論文が挙げられる。Lobachev and Tchitcherine(2001) は、トラクター 型ポッドのプロペラの作動を考慮したRANS計算を模型と実機ベースで行い、実機はその比を用いて模型のポッド抵抗を修正すべきと次式を提案している。

Sanchez らもk - ε モデルによるRANSで尺度影響を調査し、実機のポッド抵抗が場所によって44-100 %の範囲で減少することを示した。
このように、ポッドの抵抗をCFDにより計算することで模型と実機の尺度影響が見えてくるがこれを定量的に証明した発表はまだ見られない。
大橋らは、非構造格子を用いたRANSによるCFD計算が、ポッド形状の最適化に最も有効であろうとしている。実際にプッシャー型とトラクター型のポッド推進器を船体に装備した形で圧力分布、公称伴流分布、形状影響係数などを実験と比較しているが、Table4 に示された
計算結果からも分かるように、経験式に基づく方法に較べ、かなり実験値に近い計算結果が得られている。また、プッシャー型とトラクター型での違いに対する定量的な評価も十分な精度を確保している。

今後はポッド推進器に対するCFD 計算技術は水槽試験の実施前に最適化の手段として大いに利用されると予測され、その期待は大きい。

Fig.25 Pressure Distributions on Pod and Strut Surface
at towing condition(left) and propelled condition(right)

 

Table 4 Comparison of Podded Propulsor Casing Resistance without a Propeller among Exper iment、 Practical Estimation and CFD Computation

5.ポッド推進器の操縦性能

ポッド推進器が、旋回能力や港湾での離着桟性能を向上させることは良く知られているが、保針性能に対してはほとんど変化がみられないか、もしくは悪化することはあまり知られていない。この事実は、タンカーなどの肥大船にポッドを適用する際に注意する必要がある。その背景には、ポッドを装備するための船尾形状の変形があり、いわゆるバトックフロー船型と呼ばれるバージ型幅広浅喫水の船尾形状を採用することが、この針路安定性を損なわせる大きな理由となってくる。

ポッド装備船の操縦性能推定も、通常のプロペラ推進の船型と同様な手法でシミュレーション計算ができる。たとえば、船体・プロペラ・舵の流体力とそれらの干渉を考慮したMMGモデルを用いてポッド推進による船型の操縦性を予測することが可能である。ポッド船型の操縦性能を求めら場合に最も重要な点は、ポッド推進器そのものが発生する流体力の推定である。

5.1 斜行中ポッドに働く流体力

斜行中のポッドに働く流体力は、プロペラと舵が一体となっているため従来の操縦性モデルで使用されてきた概念をそのまま利用することはできない。ポッドに働く流体力の手定義をFig.26 に、それらの計測例をFig.27 およびFig.29 に示すが、斜行中のポッド流体力に対する簡易的な計算方法(1)(39)(47)もいくつか発表されている。以下に、直進中のポッド単独特性が既知である場合に、そのポッドの斜行中流体力およびプロペラスラストを求める簡便な方法を紹介する。

Fig.26 Forces acting on Pod Propulsion

まず、ポッドの単独特性が次式で表現されるとする

ここで、

Fig.26 に示されるようにポッドが斜行角δで作動しているとすると、プロペラへの流入速度の第1次近似は次式となる。

この有効流入速度Vaeを用いた前進係数をJδとすると

次に、ポッドの影響を考えると、この中に含まれる要素としては、次の3つがある。

ポッドハウジングの排水効果(-90°<δ<90°

ストラットによる排水効
粘性影響 (δ > 90° 、δ< -90°
)

ポッドハウジング排水影響および粘性影響は右舵・左舵で対象であるから、次式の修正が考えられる。:

一方、ストラットの影響はポッドほど影響は無いが、ハウジングの上下でプロペラ面内速度に影響すると考えられ、これをみかけのプロペラ回転数の違いとして扱うことができる。

Fig.27 に、Table 4 に掲げたポッドおよびプロペラに対して、上述した方法を用いてプロペラスラスト( ポッド付き) を求め実験値と比較した例を示した。ここで、係数C1およびC2は、それぞれ0.35、0.0としている。
係数C1は、ポッドの形状やプロペラとの相対位置によって変わるが、ポッドとプロペラの組み合わせが決まれば、どのような状態に対しても同じ係数を用いて精度良くプロペラスラストが求め得ることが分かる。

Table4 Particulars of Pod & Propeller

Propeller MP103
SHIP Tanker
Dpod(mm) 76.0
Lpod(mm) 257.5
D(mm) 156
section NACA
AE 0.600
P/D 0.692
Z 4

Fig.27 Comparison of predicted propeller thrust of Mp.103 with experiment according to the correction of effective advance speed and displacement

次に、ポッド本体に働く流体力について述べる。ポッドに固定した座標軸で定義されたX方向、Y方向およびZ軸周りのモーメントを以下のように定義する。

ここで

Fn(J、δ) は、ポッド本体に働く直圧力であり、最初の項は揚力成分、第2 項は抗力成分を表している。K1、K2はポッドの定数でありこれも実験的に求める。.

Vp0 and Vp(z) は、プロペラの後流であるが、たとえばFig.28 のように簡易プロペラ理論を用いて求めることができる。Fig.29 は、このようにして求めたFn(J 、δ) の実験値との比較である。

Fig.28 Prediction of Propeller Race based on simplified propeller theory Fig.29 Fn(δ)values predicted by eq.(20)

6.ポッド推進器プロジェクト

冒頭でも述べたように欧州造船所は生き残りをかけてEU プロジェクトと呼ばれる国家を越えた大型国際プロジェクトを立ち上げている。また、一方で造船日本でも欧州の一歩先を行くようなユニークなポッド船が開発された。ここでは、まず欧州のプロジェクト紹介し、その後、日本のポッド船について詳細を述べる。

6.1欧州のポッドプロジェクト

日本同様にEU諸国においても、経済成長にともなう海上輸送の増加に呼応した輸送方式の高度化、安全の確保および環境保全は緊急の課題となっている。このことは、エジンバラで開催された第24回のITTC において、英国のアン女王もその祝辞の中で奇しくも同じことを述べられた。2000年以降、関連する多くのポッド推進器プロジェクトが立ち上がったが、この背景には、冒頭で述べた海上輸送の増加に対応した革新的な推進システムが求められている社会ニーズを強く感じる。この流れは、2005年のCall 3B と呼ばれるWP2005( Work Program Year 2005) にも受け継がれ、環境にやさしく静粛な推進システムにより、2020年までに化石燃料を20%削減することがプログラムの中で謳われている。まさに、ポッド推進器がこのプログラムが目指す革新的で環境負荷の少ない推進システムとしてその中心的役割を果たそうとしていることは間違い無い。これらポッドの基盤技術整備に関するプロジェクトは、EU プロジェクトと呼ばれ、国家間レベルの開発援助システムを利用していることがその特徴である。これから述べるように、そのひとつひとつが日本の国家プロジェクトと同レベルの予算規模で実施されていることに驚きを隠せない。そしてなによりもプロジェクトが既近な製品開発に密着していることから、プロジェクトの進行中においても、次々とそこで得られた知見に基づいたアイデアが具体化されていると聞く。また、設計マニュアルなどの整備にとどまらず、船級協会を巻き込んでの新しい規則作りをも視野に入れていることも注目すべき点であろう。

Table5 に、ポッド関連のEU プロジェクトを時系列で示した。表から分かるように2002 年までに2つのプロジェクトが平行して走っていた。現在はその2つのプロジェクトに替わりFASTPOD( 高速船用ポッド推進の調査検討)とVRSHIP( ポッド推進装置とWJ を利用するROPAX の革新的な設計システム)なプロジェクトが実施されていることが分かる。さらに、SUPAPOD (ポッド推進器用の革新的なパワーとレインとそれに適合した船型開発)と呼ばれる新たなプロジェクトも2005年の後半からスタートしようとしているようだ。Fig.30 には、それぞれのプロジェクトの研究費を示す。この中でVRSHIPS はポッドそのもののプロジェクトでは無いが、すべてのプロジェクトの研究費を集計すると、22.5M ユーロ(約31 億)とおそろしく巨額であることが分かる。次に、各プロジェクトの狙いがどこにあるかを整理してTable6 に示した。

Table5 EU Projects for Podded Propulsion

プロジェクト名 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
OPTIPOD
POD IN SERVICE
FAST POD
VRSHIPS
SUPAPOD 〔未定)

Table 6 Main Tasks of EU Projects

OPTIPOD POD IN S FASTPOD VRSHIPS SUPAPODS
流体技術
船型計画
構造設計
環境影響
運航
建造コスト
設計ガイダンス
設計システム
実船試験
規則検討

なお、SUPAPODS は、計画中であり2005年後半からスタートの予定である。

Table 6 は、公表されたプロジェクト情報から整理したもので、必ずしも正確なDATA ではないがこから分かるようにいずれも流体技術を核にした技術開発であること、また必ず規則を絡めた戦略を立てようとしていることの2 点が窺い知れる。Table7 には、前半に実施されたポッドプロジェクトの参加機関を一覧表で示した。造船という切り口ではあまり影響力の無いと思える英国から最大の6機関も参加しているなど興味深いものがある。

 

Fig.30 Budget of EU projects million Euro

Table 7 Participants of EU POD Projects (OPTIPOD, POD in Service, FAST POD)

Organization Nation OPTIPOD POD IN S.. FASTPOD
DND Canada
ABB Azipod Finland
Deltamarin Ltd. Finland
Kvaerner Masa-yards Finland
Viking Line AB Finland
VTT Technical Research Center of Finland Finland
BV France
Chantiers de l’Atlantique France
PRINCIA Marine France
SIREHNA France
Technicatome SA France
Germanisher Lloyd Germany
Hamburgische Schiffbau-Versuchsanstalt GmbH Germany
Meyerwerft Germany
Siemens Schottel Germany
SS-werft Germany
CETENA S.p.A. Centro per gli Studi di Tecnica Italy
Fincantieri Cantieri Navali Italiani S.p.A. Italy
Koninkijke Marine Netherlands
MARIN Netherlands
RNN Netherlands
COLOR LINE AS Norway
DNV Norway
CTO-Ship Design and Research Centre Poland
STOCZNIA Gdynia S.A. Poland
Stocznia Szczecinska Nowa Spolka z.o.o. Poland
KaMeWa AB Sweden
KOCKUMS Engineering AB Sweden
SSPA Maritime Consulting AB (Technical Sweden
Stena Rederi AB Sweden
TT-Line Sweden
Bae Systmes Marine Ltd. UK
DERA UK
Lioyd’s Resister UK
RINA UK
University of Newcastle upon Tyne UK
University of Strathclyde UK
ABS US
Carnival Corporation US
Royal Caribbean Line US

OPTPOD プロジェクト

OPTIPOD(OPTIMAL DESIGN AND IMPLEMENTATION OF AZIMUTHING PODS FOR THE SAFE AND EFFICIENT PROPULSION OF SHIPS)は、ポッド推進器に関連する総合的なEUプロジェクトと言える。この非常に長いプロジェクト名が表す通り、そのタスクは性能・構造・船型計画・採算・規則など広範囲に及び、使用された研究費総額も約5Mユーロに達した。OPTIPOD は、5番目のフレームワーク(FP5)としてEuropean commission にサポートとされ、7ヶ国、14機関が参加してコンソーシアムが組まれたが、Chantiers de l'Atlantique (Saint Nazaire) がプロジェクト全体をコーディネィトし、SSPAが技術分野のまとめ役を実施する形で、2000年の1月に3年間のプロジェクトがスタートした。下図は、OPTIPOD のロゴマークと公開WEB サイトを示している。先に述べた参加14機関の中には、以下に示すように3造船所、2ポッドメーカー、2運航会社、3試験水槽、2設計センター、2大学が含まれている。OPTIPOD の対象船として、クルーズシップ、ROPAX、プロダクトタンカー、サプライベッセルの4船型が選ばれ、それらの流体干渉問題、安構造的な安全とリスク解析、環境負荷、採算性、配置計画への影響、コストと利益予想およびポッド推進装置の設計ガイドラインが研究された。Fig.31 にOPTIPOD プロジェクトのワーキングパッケ―ジを示す。

また、研究対象船の要目一覧表をTable8 に示す。

Fig.31 working package of OPTIPOD

Table8 Investigated Vessels by OPTIPOD Project

Cruise Ship ROPAX Product Tanker Supply vessel
Loa(m) 294.0 194.4 170.0 91.3
Lpp(m) 262.9 172.2 155.0 82.0
B(m) 32.2 28.4 27.0 21.0
d(m) 8.3 6.6 8.5 7.6
Cb 0.653 0.60 0.785 0.645
POD(s) 2*21.1 MW 7MW
Vs(kts) 24.0 28.0 15.8

PODS IN SERVICE プロジェクト

オランダのMARIN がリーダーとなり、ポッド推進器の実船性能評価を目的とした3 年計画のJoint Industry Project が2000年4 月に立ち上がった。本プロジェクトは、実海域で稼動中のポッドに働く流体力の測定を介してポッドの性能を把握しようとするもので、将来的には、このデータが設計に適用できることになる。本プロジェクトには、6船主、3海軍、5造船所、3ポッドメーカー、2試験水槽および6船級協会の合計25機関が参画し、先に紹介したOPTIPOD プロジェクトで実施できなかった実船性能の調査を補完する意味があったものと思われる。すなわち、OPTIPOD がどちらかと言えば、初期計画段階の机上検討を主体にしたものであるのに対して、PODS IN SERVICE は実船試験を主体にしたポッド性能の実船検証を目的としたものと言える。
本プロジェクトについてはあまり公開された情報が少ないが、後述する4船型について、航海中の性能や外力計測が実施され、設計DATA として活用されている。
実船において計測された項目は、たとえばRadiance of the seas の例で次の通りである。
 ○ ポッド上部の船体表面変動圧力および加速度計測
 ○ ポッド内部およびポッド支持部働く荷重と加速度計測
 ○ 操縦運動中の変動外力
 ○ 海象DATA と同時に計測された主機や減速機の特性
 ○ プロペラ翼表面荷重計測(1CASE のみ)
 ○ 水中放射雑音計測
Radiance of the seas の場合、試運転が2001 年の2 月19 日-24 日に実施されているが、その後、その年の3 月から2003 年の6 月まで実に2 年と3 ケ月に渡って、試運転で計測された項目の中で重要と考えられる計測項目が引き続きモニターされている。

プロジェクトは3 年計画で実施された。WEB サイトでは、当初予算は0.81M ユーロのEC 援助を含めて1.9M ユーロであるが、実施内容により2.6M ユーロまで拡大できるとある。実際にプロジェクトに参加したメンバーによると2.8M ユーロを使用したとのこと。

Fig.32 Calibration of Pod Hydrodynamic Force and Example of Measurement

FAST POD プロジェクト

FAST ポッドプロジェクトは、大型の高速船にポッド推進装置を適用した場合の適用性を調査する目的で立ち上げられた。ここでの適用性は、経済性、安全性および環境負荷に対して評価を意味してる。
FASTPOD(Fast ship applications for pod drives)は、7 ケ国、17機関が集まり、ポッド推進による高速船を開発中である。全体コーディネイトをニューキャスル大学のアトラー教授が担当している。プロジェクト自体は2002 年10 月にスタートした。

ポッドを装備する高速船として、40 ノットRopax 、35 ノット大西洋横断の高速コンテナとトリマランの3 船型が対象船として開発されている。ここでの最大の問題は、推進器が吸収できる馬力を推進効率の低下無く可能にすることと、その大馬力によって生じる振動騒音の低減になると思われる。Fig.33 およびFig.34 は、それぞれ2003 年8 月および12 月にポーランドのCTO(Centrum Techniki Okeretowej : Ship Design and Research Centre )で実施された高速Cargo の抵抗試験と自由航走試験の様子を示している。

Fig.33 Resistance & Propulsion Test at CTOFASTCARGO

Fig.34 Free Running Test at CTOFASTCARGO

CTO の試験と平行してHSVA では45KTS の高速ROPAX の試験が実施されている。FASTPOD の最大の成果は、高速船へのPOD適用が経済性から見て簡潔に判断できるツール立てが完成したことであろう。

VRSHIPS プロジェクト

VRSHIPS は、他のポッドプロジェクトは異なり革新的ROPAX のためのVIRTUL REALITY の技術に立脚した設計システムを確立することに目的があり、ポッドはそのための基礎技術として位置付けられている。プロジェクトは4 年間、予算総額12M ユーロと巨額であり、実に欧州の48機関が参加している。この中には、15の造船所と舶用危機メーカー、1つの船級協会、6つの試験水槽、13の設計コンサルタント、6つの研究所、2つの船舶運航会社が含まれている。

VERSHIPS の目的は、進歩的なROPAX に適用できる仮想モデルと高度な海洋技術の技術プラットフォームを構築すること。さらに、それらの技術を援用して革新的なROPAX のプロトタイプを設計し検証することとある。

6.2 日本のポッドプロジェクトと建造ポッド船

EU プロジェクトは、その性格上、巨額の費用や多くのエンジニアが関わっているにも関わらず、外部へ発表された情報は極めて少ない。しかしながら、参加機関のメンバーから漏れ聞く内容は、プロジェクトが如何に戦略的かを示唆している。また、プロジェクトの雰囲気もプロジェクトの内容によって大きく変わり、意気揚々と実施されたOPTIPOD に対して、メーカー間の間でほとんど情報交換が行われなかったと言われたPODS IN SERVICE のように淡々と実施されたプロジェクトもある。しかしながら、これら4 回のポッドプロジェクトを介して、欧州の造船所が息を吹き返したことは否定できない事実であり、日本造船業のありかたに対しても一つの方向性を示したのではなかろうか。そのような中で、日本においても、数は少ないが現在2つのポッドプロジェクトが進行中である。また、以下に述べるユニークなポッド船が開発され注目を浴びたことにも注目したい。

スーパーエコシップ

スーパーエコシップは、内航海運の活性化を目的とし環境負荷の低減(Ecology)と経済性(Economy)を両立させようとする国家プロジェクトでポッド推進システムの採用と高効率なガスタービン(SMGT)の2つが技術的な目玉となっている、本プロジェクトは2001年にスタートし2005年には実船を建造して技術検証を実施する予定になっている。冒頭の写真でも紹介したが、Fig.35 にCRP 型2.5MW のポッド推進器の実証試験も2004 年に終了し、期待された性能が披露された。

Fig.35 CRP Pod for Super Eco Ship Project

また、船型の開発もCFD を用いて海技研で実施されFig.36 に示されるような抵抗の改善が達成された。そのような中で唯一の船型的な問題は5 章で述べた針路安定にあったようだ。すなわち、バトックフロー船型に採用により極端な針路不安定性を生じたため、フィンなどの補助的な手段で針路安定性を確保する必要が生じた。特に一軸船型とした場合に非常に厳しい条件となるようである。最近になって公表された操縦性試験結果では、ポッドと一体となったフラップなどの補助的な制御面を付加することで、この問題を解決したことが見て取れる。もちろん、離着桟性能はポッドを装備することで飛躍的に向上し、メンテナンスへの省力化もあいまって、乗船人員の削減が可能なこと、さらに船内環境の改善など当初の目標を達成しつつあるのが現状と言えよう。

Fig.36 Improvement of Wave Making Resistance by CFD

中造工ポッドプロジェクト

公表された資料はほとんど無いが、日本中小型造船工業会(中造工)でも中型プロダクトタンカーを対象とし、在来船に替わるポッド推進システムを採用した電気推進方式の新船型を開発している。2003 年に、宝田委員長のもとで船型の基本計画が終了し、現在、右近委員長のもとでさらなる船型改良が計られている。ここでも当初は進路安定性の問題に直面したようである。Fig.37 に操縦性試験用模型船に取り付けられたポッド動力計を示す。中央のスケグは針路安定のため装備しているが、現在では針路安定と推進性能向上を狙いスターンバルブ付き船型として開発が進められている。

Fig.37 CASJA Project on Product Carrier

Fig. 38 Propulsion Test of Product Tanker propelled by Pod Propulsion

つぎに、日本で建造された電動モータ内蔵式のポッド船を2 例、ご紹介する。

ダブルアクティング氷海タンカー

住友重機械工業で建造された本船は、世界で最初のダブルアクティングタンカーと呼ばれ、氷海でない通常の海域ではいわゆる船首を前にして効率よく進むが、氷海域に入ると船尾を前にして砕氷しながら進む特徴ある船である。船尾は砕氷に向いた形状をしているので船首で砕氷するより約2倍、砕氷能力が高い。

現在本船は、ロシア原油をフィンランドや他の欧州諸国へ運ぶ役目を担っており、氷が厚く張る厳冬期においても他の氷海タンカーが航行できない航路でも自力で航海可能なため、稼働率が極めて高い。本船の設計で最も難易度が高いものは、おそらくプロペラであろう。Fig.40 にプロペラのトルク曲線を示すが、図から分かるように作動点が通常航行時と氷海航行時の2点あり、両方ともに重要な設計点と言える。さらに本船は居住区との共振点が最大回転数付近にあったため、氷海航行時はトルク限界を超えないよう、また通常航行時は居住区共振点に近づかないような厳しい設計条件が与えられた。Fig.41 に、氷海航行時を模擬して実施されたキャビテーション試験結果を示す。

Fig.39 Double Acting Tanker built by Sumitomo

Fig.40 Ice Propeller Design Points

Fig.41 Propeller Cavitation at Bollard Condition

ハイブリッド型CRP ポッドを装備した高速フェリー

三菱重工が建造した新日本海フェリー向けポッド船も、世界で最初のハイブリッド型CRP ポッドを搭載した高速フェリーである。Table 9 に従来船の「すずらん」との緒元を比較しているが、最大の特徴は、従来の2機2軸CPP を1軸CPP とし後方にポッドをブースターとして利用したところであろう。Fig.42 に見られるようにプロペラはCRP (二重反転プロペラ)として配置され、推進効率の改善に寄与している。

現在、2 隻が建造され舞鶴~小樽間を20時間( 復航は21時間) で結んでいるが、総合的な見方をすると従来船より約13%の省エネ効果を発揮していると報告された。

Table 9 omparison of Dimensions etc

Fig.42 Hybrid CRP Pod installed on High Speed Ropax Ferry built by Mutsubishi

7 .あとがき

欧州が戦略的に開発し実用化に成功したポッド推進器を利用する数々の船型を紹介し、それらの水槽試験法や馬力推定法についての現状を調査した。いくつか在るメジャー水槽が、各々独自に試験法と解析法を発展させてきたため、最大メーカーのABBをして、早期に試験解析法をハーモナイズしてくれるようクレームが出ていることもポッドの流体技術がまだ発展途上であることを物語っている。

また、これまでに実施されたEUプロジェクトを紹介し欧州がポッド船型にかける意気込みがいかに突出したものであるかを述べた。最近になって、国内でもダブルアクティングのコンセプトを利用した氷海タンカーやハイブリッドCRPの高速フェリーが建造され、日本の技術力も面目を保った感があるが、まだまだ欧州の実績や開発投資の足元にも及ばない。今後の日本の造船業が、このポッド推進器をきっかけにさらなる発展の機会を求め切磋琢磨していくことを期待して本章の最後としたい。

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