平成23年3月9日
独立行政法人 海上技術安全研究所
     

舶用ディーゼル機関から排出される粒子状物質(PM)に
関するワークショップを開催しました

 
   三鷹本所で2月23日(水) 、「舶用ディーゼル機関から排出される粒子状物質(PM)に関するワークショップ」を開催しました。 聴講者は130名に達し、PM問題への関心の強さがうかがわれました。

 ディーゼル機関から排出される粒子状物質(PM)は、自動車においては既に厳しく規制されていますが、 船舶の分野では燃料油中の硫黄分の削減によりPM削減を担保する規制強化が始まったところです。 船舶は自動車と比べ硫黄分が高く高沸点炭化水素分を多く含む燃料油を使用しているため、 舶用ディーゼル機関から排出するPMの成分構成、排出特性等が自動車のそれとは大きく異なります。 このため、PMの計測もISO(国際標準化機構)の方法をそのまま適用できません。 また、PM対策も自動車とは異なった方法で取り組む必要があります。

海技研は、船舶排ガス中のPMの実態解明と計測手法に関する研究を実施してきました。 本ワークショップは、現時点における船舶のPM問題の現状と課題を明らかにし、将来を展望することを目的として開催しました。

   ワークショップでは、九州大学総合理工学研究院の高崎講二教授が「舶用機関を取り巻く環境問題の全体像とPM問題の現状」と題して基調講演を行いました。
 高崎教授は、船舶用ディーゼルエンジンが燃料として使用するHFO(重質油)から排出するPM中の主成分はサルフェート(硫酸分)であるが、 SOOT(すす)、SOF(可溶性有機分)もあり、硫黄分規制だけではPM問題は解決しないことを強調しました。さらに、規制が強化されているNOx対策とPMの関連を解説し、 海技研に対し、PMがSCR(脱硝装置)性能に与える影響に関する研究に期待を表しました。 
九州大学 総合理工学研究院 高崎講二教授
    高崎教授の基調講演の後、「PM計測法とPMの性状の解明に関わる研究の最前線」として、それぞれの専門分野の研究者が成果を発表しました。

  海技研の大橋厚人主任研究員が、「PM計測実施例と計測技術上の問題」(注)、井亀優グループ長が「PMの性状、組成に及ぼす機関運転条件等の影響」(注)、 さらに水産大学校海洋機械工学科の前田和幸教授が「実船におけるPM計測」について、発表しました。
   大橋主任研究員は、自動車で事実上の国際標準となっている「全量希釈トンネルを用いた」PM測定は、排気量が大きいことから舶用ディーゼルエンジンには事実上適用できないことから、 それに代わる「マイクロトンネル」を使用する際の捕集性能の評価手法についての研究および実験結果を発表しました。 海技研 大橋主任研究員
 
   井亀グループ長は、燃料の硫黄含有率とPM排出率、、水和した硫酸分との関係やSOFと燃料油の高沸点分と潤滑油との関係などを、実験データを基に発表しました。 そのうえで、今後の海技研の研究として燃焼/排ガスの詳細成分把握、燃焼技術の高度化のための噴霧特性/拡散燃焼の改善、難燃性燃料の対応などの燃焼改善等を計画中であることを発表しました。 海技研 井亀大気環境保全研究グループ長
 
   水産大学校の前田教授は、水産大学校の練習船2隻、航海訓練所の練習船2隻を用いたPMの実船計測結果を発表しました。これまで実船で精度の高い測定が難しかったのですが、 前田教授は「高精度可搬式PM計測システム」を作製し、実船実験を実施し、計測精度が±2%以内という結果を得たことを紹介しました。 水産大学校 海洋機械工学科 前田和幸教授
 
   PM問題の将来展望について、愛媛大学農学部の若松伸司教授が「大気環境規制の現状と展望」について講演しました。若松教授は、平成21年9月の大気微小粒子(PM2.5=2.5μm以下の粒子)に 関する環境基準の設定を受けて、全国で測定・モニタリングの準備が進められていることや、米国環境保護庁(EPA)の新基準を紹介しました。そのうえで、PM2.5大気汚染問題の総合的な対策のため国内及び国際間の研究協力が重要と指摘しました。 愛媛大学 農学部 若松伸司教授
  
 講演、研究発表の後、講演者・研究者による総合討論が行われ、PM排出削減に向け活発な意見が交換されました。

注:国土交通省から受託した「船舶排ガス中における粒子状物質の実態解明と計測手法の確立に関する研究」(環境省地球環境保全等試験研究費)として、実施しました。

1.主催  独立行政法人 海上技術安全研究所

2.日時  平成23年2月23日(水)13:00〜17:00

3.場所  海上技術安全研究所 本館1階会議室

4.プログラム
 〔基調講演〕
  (1) 舶用機関を取り巻く環境問題の全体像とPM問題の現状【九州大学 総合理工学院教授 高崎講二】

 〔PM計測法とPMの性状解明に関わる研究の最前線〕
  (2) PM計測実施例と計測技術上の問題【海技研 大橋 厚人】
  (3) PMの性状、組成に及ぼす機関運転条件等の影響【海技研 井亀 優】
  (4) 実船におけるPMの計測【水産大学校 海洋機械工学科教授 前田 和幸】

 〔PM問題の将来展望〕
  (5) 大気環境規制の現状と展望【愛媛大学 農学部教授 若松 伸司】
  (6) 総合討論
ワークショップ会場
ワークショップ会場
 
総合討論
総合討論
 

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