|
平成23年11月4日 独立行政法人 海上技術安全研究所 |
「耐疲労スマートペースト」の開発と米国特許取得〜疲労き裂の進展を自動的に抑制し、発色により目視検出〜 |
| 独立行政法人 海上技術安全研究所(理事長 茂里一紘)は、 船舶や橋梁など各種の金属製構造物に生じた疲労き裂の進展を自動的に抑制するとともに、 明瞭な発色によって目視検出を容易にするという2つの機能を併せ持った「耐疲労スマートペースト」の開発に成功、 このほど基本原理や製作方法に関する米国特許を取得した。 |
|
1.背景 船舶や橋梁などの構造物やクレーンなどの機械が繰り返し荷重を受けると、応力集中部の金属疲労により疲労き裂が発生して進展し、 そのまま放置しておくとやがては重大な機能喪失や事故に繋がることがあります。これらの構造物や機械の検査における疲労き裂の検出は、 現在、そのほとんどが目視検査に依っています。しかし、実際の検査環境は想像以上に厳しく、十分な照明設備を期待できない場合もあるため、 き裂を現場で発見するのは容易なことではありません。そこで、疲労き裂の進展を抑制して構造物や機械の寿命を伸ばしたり、 現場における目視き裂検査を有効に支援したりするような新たな方策が待望されています。 そのような方策の一つとして、海上技術安全研究所では、疲労き裂の発生を検知してその進展を自動的に抑制するとともに、 明瞭な発色によりき裂の進展箇所を知らせる機能を併せ持った「耐疲労スマートペースト」を開発し、このたび、その基本原理や製作方法に関する米国特許を取得しました。 2.耐疲労スマートペーストの概要 本スマートペーストの原理は次のようなものです( こちらの概念図をご参照下さい)。<別のウインドウが開きます> (1)アルミナ等の淡色・高硬度の微細粒を、適度の粘性を有する油中に混合して淡色のペースト状にし、これを疲労き裂の発生・伝播が予想される金属表面に予め塗布しておきます。 (2)金属表面に疲労き裂が発生・伝播すると、き裂内部に微細粒ペーストが入り込み、き裂先端近傍に詰まった微細粒はくさびを形成します。 (3)微細粒のくさびの反力によって、き裂は自由に閉じられなくなり、繰り返し載荷に伴うき裂面の変位が抑制され、結果としてき裂進展速度が著しく低下して疲労寿命が延びます(破断寿命比で約2〜4倍)。 →き裂の進展抑制効果 (4)引張荷重が除荷され、き裂が閉じようとする時に、微細粒のくさびとき裂面(金属)との間には大きな反発力が発生し、相対的に硬度の高い微細粒はき裂面を強く圧迫すると同時にき裂面を一部研削します。 (5)き裂面で研削された金属粉は黒色を呈し、き裂開閉に伴うポンプ作用によってき裂外部のペースト表面に滲み出て来ます。最初に塗布したき裂周辺のペーストは淡色なので、淡色と黒色のコントラストにより、き裂の位置や長さが容易に視認されます。 →き裂の目視検出効果 本スマートペーストの特徴は、ペーストの作製や対象物への適用が非常に容易であるにもかかわらず、疲労き裂進展の自動抑制効果、発色による目視検出効果という、非常に有用な2つの機能を併せ持っているというところにあります。 3.本技術の特色 特別な機器や装備を必要とせず、グリース状のペーストを疲労き裂の発生が予想される箇所(金属表面)に塗布するだけですので、施工や検査が極めて容易です。また、除去する時も布などで拭き取るだけです。 き裂が入ると、純白のペースト中で真黒に発色するため、ある程度離れた所からでも極めて明瞭に視認することができます(鋼溶接継手の止端部に塗布した場合の発色状況は こちら)。<別のウインドウが開きます>また、染料等と異なり、紫外線(日光)の照射や経時による褪色が起きません。これまでの実験では、破断寿命比2〜4倍程度の寿命延長効果が得られており、検査や補修に時間的な余裕が持てます。 4.発明者のコメント 本スマートペーストは、適用対象を適切に選定することが実用化の鍵になると思われます。実用化されることにより、次のような効果が期待できます。 ・微小な疲労き裂の進展が自動的に抑制され、各種構造物や機械の疲労寿命が伸びる。 ・目視検査で発見するのが難しい疲労き裂を容易に検出する事ができ、各種構造物や機械の安全性が向上する。 これまで本スマートペーストに匹敵するような耐疲労スマート材料は世界的に見ても存在せず、特許庁の調査でも新規性・有用性の高いアイデアであるとの評価を得ています。 5.特許情報 <日本> 特許3808846(登録日:平成18年5月26日) <米国> US 7,963,015 B2(登録日:平成23年6月21日) |
|
本件に関するお問い合わせ先 独立行政法人 海上技術安全研究所 海洋開発系 深海技術研究グループ 上席研究員 高橋一比古 〒181-0004 東京都三鷹市新川6-38-1 TEL:0422-41-3081 FAX:0422-41-3056 e-mail:takahash@nmri.go.jp |