平成24年1月4日

年頭挨拶


独立行政法人 海上技術安全研究所
理事長 茂里 一紘
 
   昨年は、東日本大震災の発生、国際的にはEUの経済的混迷、アラブ諸国での政治指導者の交代、 東アジアにおける近隣諸国の動きなど、重くかつ深刻な出来事の多い1年でした。 特に1ドル70円台という超円高もあって、中国、韓国との価格競争の中で造船界をはじめ、製造業界は 大変な苦戦を強いられました。構造化の傾向がある円高の中で、価格競争は不毛な消耗戦になります。 このような時こそ、技術イノベーションによる新しい技術境地の開拓が重要となります。

 海上技術安全研究所では、「イノベーション開発拠点」、「安全・環境のスペシャリスト」、 「政策支援・提言機能の充実」を経営ビジョンとしています。今年度から始まった第3期中期計画も この経営ビジョンのもとで推進しておりますが、2年度目に入る本年は具体的成果を出す時と考えています。 中でも、社会の動きへの対応から、以下の事業の推進に力を入れます。

安全に関するイノベーション:
  「海難事故解析センター機能の強化による海難事故防止」

 海技研では、実海域再現水槽における物理現象の確認実験とその解析結果にもとづく 操船リスクシミュレータによる操船分析の総合的解析により、海難事故解析技術の高度化を図ってきました。 これらに取り組んでいる海難事故解析センターを理事長直轄の組織とし、これまで以上に全所挙げて 事故解析に取り組むこととしています。海難事故ゼロを究極の目標とし、海難事故原因分析にとどまらず、 事故防止に関する具体的な技術的提言やわかりやすい啓蒙活動用教材の作成を行うとともに、 革新的な事故削減技術の開発を行っていきます。

環境に関するイノベーション:「先進的省エネ船型・装置の開発」、「排気ガス規制対応」

 2013年からエネルギー効率設計指標(EEDI)が導入されることが決定されました。 最新の水槽実験とCFD技術により、「CO2 30%削減」を実現する新型船型および省エネ装置の開発研究を推進します。
 EEDIや実海域速力低下係数の算定にあっては、馬力推定のための水槽実験の精度向上が求められます。 水槽実験技術の高度化が必要です。理事長のもとに試験水槽運営調整会議を設け、 「ナショナルセンター水槽」としてその役割を果たす所存です。
 排気ガス規制対応では、船舶運航研究分野と動力エンジン研究分野の連携による研究が重要です。 両分野を持つ世界でも数少ない研究所として、効率的運航計画(SEEMP)作成のための技術開発を行うとともに、 海上輸送における次世代排気ガス規制基準策定の技術的課題に関する研究を推進することとしております。

海洋開発におけるイノベーション:「洋上風力発電の実証試験の実施」

 理事長のもとに海洋再生エネルギー研究開発支援プロジェクトチームを設置し、 海技研が実施する開発研究および実証実験を円滑かつ迅速に推進する体制をとります。
 洋上風力発電の先進地である欧州ではほとんどが着底式ですが、わが国周辺では着低式が可能な海域は限られます。 このため、国が主導する洋上風力発電プロジェクトにおいても浮体式風力発電方式が多く提案されています。 浮体構造物に実績のある海技研としてはこれまで蓄積してきた技術力を発揮するチャンスであり、 スパーブイ方式を中心に実証実験に係わる浮体の安全性評価や設計基準案作成のための研究開発を 積極的に進めます。
 海洋開発においても安全性の評価が重要となりますが、そのための評価基準の策定には、 大型模型による精緻な実験とともに実海域における検証実験が必要です。 前者について、現有施設を活用し、海技研がその任を果たすのはもちろんのこと、 後者についても積極的に参画してゆくべきであると考えております。

 第3期中期計画で取り上げている他の研究開発事業につきましても、具体的成果を出して参るつもりです。 本年も、関係業界・学会の皆様方のご指導・ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
問い合わせ先
独立行政法人 海上技術安全研究所
 企画部 知的財産・情報センター 
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