放射性物質輸送容器のモンテカルロ法による
遮蔽安全評価手法の高度化に関する研究


本研究の概要
 放射性物質を安全に輸送するためには,放射性物質を輸送する容器(輸送容器)が,放射性物質から放出される放射線を人体に影響のない程度に減衰させる能力(遮蔽能力)を有する必要があります。輸送容器の安全設計においても,容器の持つ遮蔽能力の評価(遮蔽評価)は,重要な評価項目の一つとなっています。この輸送容器の遮蔽評価においては,近年,容器の幾何学的形状を近似せずに現実の形状をそのまま考慮できるモンテカルロ法に基づく輸送計算が基本設計段階で導入され始めています。しかしながら,容器の安全審査に係る安全解析の段階では,モンテカルロ輸送計算は未だ採用されておりません。この理由には,モンテカルロ輸送計算による計算結果が輸送容器に対してどの程度保守性を有するかが十分に明らかになっていないこと,また,モンテカルロ輸送計算によって得られた計算結果が妥当であるかどうかを評価する標準的な手順が確立されていないことが挙げられます。このため,従来使用実績のある二次元離散座標法に基づく輸送計算が安全解析に未だ使用されているのが現状です。
 モンテカルロ遮蔽計算法が放射性物質輸送容器に適用可能であることを明らかにすることができれば,輸送容器の安全審査において,最新の科学的知見に基づいた合理的な遮蔽設計が実現できることになります。本研究では,モンテカルロ遮蔽計算法を輸送容器の安全審査に使用できるようにすることを目的として,下記を研究目標に掲げて実施しました:
  • 輸送容器を構成する形状のうち,輸送容器胴部の遮蔽構造を模擬した一次元試験体及び比較的複雑な形状を有する輸送容器の吊具部の要素試験体を用いた放射線透過試験,並びに放射性物質が収納された実際の輸送容器外表面周辺の放射線測定試験の結果を用いたベンチマーク計算を実施し、計算精度の検証を行い、モンテカルロ遮蔽計算法による計算結果の保守性を明らかにする。
  • モンテカルロ遮蔽計算法を安全審査で使用するにあたって解決すべき計算精度の考え方について詳細な検討を行い、標準的なガイドラインを策定する。


本研究の成果
 モンテカルロ遮蔽計算法による計算結果の保守性を明らかにすることを目的として,はじめに輸送容器の遮蔽構造各部を模擬した要素遮蔽実験と,この実験の幾何学的形状を再現したモンテカルロ遮蔽計算を行いました(平成19〜20年度)。実験と計算によって得られた線量当量率を比較評価した結果,計算値が測定値をほぼ再現することが明らかとなりました。換言すると,モンテカルロ法に基づく遮蔽計算の過程には,計算値が測定値を上回るような保守性が含まれないということです。このことから,計算結果に保守性を持たせるためには,モンテカルロ遮蔽計算が前提とする条件に,保守性のある設定を行う必要があるということがわかります。そこで本研究では,モンテカルロ遮蔽計算による計算結果の保守性を合理的に考慮することができるように,輸送容器に収納する放射性物質の線源と,容器の遮蔽材に対する製作公差の考え方をどうすべきかについて検討しました。本研究で提案する保守性の考え方を用いて,使用済核燃料輸送容器(PWR)の表面近傍の線量当量率を計算した結果と,それに対応する測定値を図に示します。図のように、計算値が測定値を上回り、計算条件の保守性を合理的に考慮することで、測定値に対して常に保守性を持った計算結果が得られるようになり、線量当量率の基準値(最大値)を評価することが目的の安全審査に利用できることが明らかとなりました。
 ガイドラインの策定では,モンテカルロ遮蔽計算によって得られた遮蔽計算結果の妥当性の判断が客観的に行えるようにするために,検証計算を行いつつ,計算条件の設定方法,パラメータの適切な設定方法を示すとともに,計算結果に付随する統計誤差の評価方法をまとめた流れ図を作成しました。流れ図に組み込まれたチェック項目の正否を確認することで,計算結果の妥当性を合理的かつ容易に判断できるようになりました。
 本研究で得られた成果は,輸送容器の安全審査を実施する規制当局,輸送容器の許認可申請を行う事業者のみならず,一般的な遮蔽解析に携わる事業者,原子力研究者にも広く有効に活用されることが期待されます。


中性子線量当量率分布                 ガンマ線線量当量率

図 輸送容器側部の表面における軸方向分布
論文等
Progress in Nuclear Science and Technology [ISSN:2185-4823]
Application of Dose Evaluation of the MCNP Code for the Spent Fuel Transport Cask
Monte Carlo Shielding Calculations for a Spent Fuel Transport Cask with Automated Monte Carlo Variance Reduction
日本原子力学会特別専門委員会報告
モンテカルロ法による放射性物質輸送容器の遮蔽安全評価手法の高度化平成23年度報告書

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