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AUV運用技術研究グループ

 


日本の持つEEZ(排他的経済水域)は世界で6番目の面積であり、この広大な海洋空間には海底熱水鉱床やメタンハイドレード、コバルトリッチクラストといった多くの鉱物資源やエネルギー資源が眠っている事が近年解明されつつあります。
これらの資源を探索するために必要不可欠な探索ツールがHOV(Human Occupied Vehicle:有人潜水艇型)、ROV(Remotely Operated Vehicle:有索無人型)、AUV(Autonomous Underwater Vehicle:無索自律無人型)といった海中ロボットです。
このうちAUVは無索かつ無人であるため大規模な船上支援装置を必要とせず、小型単独の調査船からでも複数台の運用が容易であるため広域を高効率に観測可能という特徴を有しています。
当グループはより効率的なAUV運用の実現を目指し、実海域でのオペレーションに必要な各種要素技術やツール、運用方法の研究開発を行っています。


 

メンバー 

(◎はグループ長)

 

篠野 雅彦
岡本 章裕
平尾 春華
大西 世紀(併任)

瀬田 剛広
稲葉 祥梧
鎌田 創(併任)


  

主な研究課題  

 

1.AUV監視用洋上中継器の開発
海中ロボットに限らず、水中で様々な機器を運用しようとした際に問題になるのが水中では電波が利用できないという点です。電波は水中で強く減衰してしまうため水中では音波が通信や測位に利用されますが、大気中での電波を利用した通信距離に比べるとその距離は非常に短く、またノイズ等の外乱に影響されやすいといった弱点を抱えています。そのため従来のAUV運用では母船となる調査船はAUVを常に音響で補足可能な位置で待機している必要があり、このままでは広大な海域を調査する事は現実的ではありません。
このような状況を改善するため、海上技術安全研究所ではAUVと母船との間を中継する洋上中継器(ASV:Autonomous Surface Vehicle)を株式会社IHIと共同で開発しています。
中継器の本体は海面下に没した状態にあり、艇体から延びるスウォードと呼ばれる構造によってアンテナ等の電波を利用する機器を海面上に暴露させる構造となっています。AUVからの通信を海面上で中継することで電波を利用した遠距離からのAUVの監視が可能となり、単独の調査船でも複数台のAUVを広域に展開し、効率的に海底調査を行う事が可能となります。

図1 洋上中継器の3Dイメージ

 

 
2.複数台AUV運用向け投入揚収装置の開発
AUVの利点の一つは母船となる調査船に特別な支援設備が不要であるという点です。しかしながら一般的なクレーンではAUVを投入・揚収する際に時間がかかり、複数台のAUVを素早く展開するには不向きです。また精密機器の塊であるAUVを吊り上げるという作業は常に危険と隣り合わせの作業であり、そのため悪天候のために投入作業時のリスクを避けてAUV運用を断念するという事も珍しくありません。
このような状況を改善するため、海上技術安全研究所では小型の船舶にも搭載可能かつ多少の悪天候下でも安全にAUVを運用可能な投入揚収装置(LARS:Launch And Recovery System)を川崎重工業株式会社と共同で開発しています。
投入時はAUVを運ぶ台車からシームレスに投入揚収装置へ移動が可能なため、複数のAUVを続々と投入する事が可能です。吊上げ方式については大型調査船に見られるAフレームクレーン構造を採用し、悪天候下等の動揺が激しい環境下でも安全にAUVを保持できるようベッドとガイドと呼ばれる部品による固定方法を採用しています。
 

図2 着揚収装置の運用イメージ



 
3.AUV「ほばりん」の開発と洋上中継器との連携運用手法の研究
従来のAUVによる海底調査においては、調査行動中のAUVをモニタリング(AUVの現在位置測位、観測状態確認、音響通信による指令コマンド送信等)するために母船となる調査船はAUVの付近で待機する必要がありました。このモニタリング活動を洋上中継器に担わせることで母船の自由行動を可能とし、シップタイムの有効利用を目指した運用手法を計画・実践しています。
現在は海上技術安全研究所にて開発されたAUV「ほばりん」を協調運用の実践対象として利用しており、対する洋上中継器側には海上技術安全研究所にて開発する洋上中継器の他、外部機関の所有する洋上中継器との運用も視野に入れた研究を行っております。
「ほばりん」の機体のスペック等の詳細については特設ページをご覧ください。
 

LinkIcon ホバリング型AUV「ほばりん」

図3 AUV「ぽぽりん」と洋上
中継器の運用イメージ


 

 


 
4.要素技術研究
<AUV用国産スラスタモーターの開発>
AUVの構成部品として欠かす事の出来ない機器が、大水深でも駆動するAUV用スラスタモーターです。AUVの水中での推進の一切を担う重要な機器ですが、残念ながら日本国内にはこれを製造・販売しているメーカーは存在しません。将来の日本国内の海中ロボット産業の創出に際して、納期や信頼性、保守性の観点からこのようなキーパーツは国産化が望ましいと言えます。
このような背景のもと、海上技術安全研究所では国内の深海機器産業発展を目指してAUV用国産スラスタモーターの開発を行っています。本研究では、モータ内部を油で満たすことで内外の圧力差をキャンセルする均圧構造の水中モータを開発しています。AUVを初めとする深海探査機の運用にとって重要な、推進効率・ノイズ低減・信頼性について高い性能を有するモータ試作機を完成させており、更に機能を向上した実用機の開発を進めています。
開発された国産スラスタモーターについては海技研の開発する各種AUVへ搭載・運用することで実績を蓄積し、今後民間等で開発されるAUVやROVへの採用を目指しています。


<AUV用海底地形レーザー計測装置の開発>
AUVによる観測航行や海底地形計測には音響を用いたDVLやサイドスキャンソナー等の機器が利用されておりますが、一方で近年では画像認識による自己位置推定やシートレーザーを利用した海底地形観測など、可視光を用いた航行手法や観測について研究が進んでいます。
海上技術安全研究所では従来主流であったDVLとサイドスキャンソナーを単一機器で代替可能となるAUV用海底地形レーザー計測装置の研究開発を行っています。これは過去に海上技術安全研究所にて開発された星野・田村方式レーザー地形計測法を応用したシステムであり、ポイントレーザーとラインCCDを利用して海底面の計測と自己の対地速度計測を行うものです。


<制御ソフト開発>
AUVが自律的に行動するためには、人間における頭脳に相当する物が必要です。 AUVの頭脳といえる部分がコンピューター、及びコンピューター上で動く制御ソフトウェアであり、これらによってAUVは自律的な行動を実現しています。海上技術安全研究所ではAUVの開発の一環としてこの制御ソフトウェアについても開発を進めています。
ロボットを制御するソフトウェアのフレームワークとして、近年ROS (Robot Operating System)といったオープンソースのフレームワーク・ミドルウェアの人気が高まってきており、特に水中ロボットを対象としたフレームワークとしてはMOOS-IvPLSTS Toolchain等が存在しています。フレームワーク・ミドルウェアとはソフトウェア開発の枠組の事であり、定められた枠組に従いソフトウェアを開発することでソフトウェア同士の連携がとりやすくなったり、ソフトウェアの再利用が容易になったりという利点があります。これらのフレームワーク・ミドルウェア、またはその枠組上で動く様々なオープンソースソフトウェアを利用することでAUV用ソフトウェアの開発効率は大きく向上する事が見込まれます。海上技術安全研究所においても、この様なオープンソースのフレームワークの動向も注視しつつ、AUV用の制御ソフトウェアの開発を進めております。