船の非常事態
旅客船に乗船したお客様が安全で快適に過ごせるように、様々な規則や運航者・乗組員の努力により、旅客船は守られています。しかし、陸上と同様、事故はいつ起こるかわかりません。船の事故には、船内での火災・浸水、衝突・乗り揚げ(座礁)などがあります。
 これらの事故、並びに、これらの事故により最終的に船から全員が脱出しなくてはならない状態になることが非常事態です。旅客船は、陸上とは違い、孤立した状態です。だからこそ、旅客船では、厳格な規則とともに運航者・乗組員の普段の業務の中で、また、訓練によっても、船の安全が保たれています。
では、事故に対してどのような対策がとられているでしょうか。
まず、衝突、乗り揚げ(座礁)といった操船に関連する事故を起こさないように、責任者である船長をはじめ乗組員の資格が厳しく審査され、経験を積んでいるとともに、操船にかかわっている操船者の有効な役割分担についても、重要視されています。また、見張りや、周りの船や海底の情報収集を支援する新しい装置も導入されています。
 船内の火災・浸水については、防火のための素材・設備、浸水を防ぐための設備が規則に沿って整備されています。
 また、このような非常事態になった時、船長をはじめ各乗組員が果たすべき役割があらかじめ明確に決められていて、それに沿って訓練されています。
非常事態の時の役割、作業、分担用具等を記したものは、非常配置表と呼ばれます。種類としては、火災に対処する防火部署、浸水に対処する防水部署、全員が船を放棄して船外に逃げる総員退船部署などがあります。
 非常配置表に沿った訓練は、操練と呼ばれ、その実施は、防火操練、防水操練といった操練の種類により、実施間隔が決められています。例えば防火操練は、国内を航行する旅客船では、月1回、外航旅客船では週1回実施されます。お客様を含む避難の操練は、外航船では、お客様の乗船後24時間以内に実施されますが、国内では義務づけられていません。しかし、乗組員による救命艇や救命筏を扱う救命艇等操練は、内航船でも定期的に実施されています。
非常事態には、船内放送や情報表示装置(テレビが利用されることもあります)を通じて、お客様は、いったん自分の客室に戻るように指示されます。そして、乗組員は、事故に応じて、防火部署、防水部署などに付き、消火や防水作業にあたります。
 国内では、第二次大戦後、最終的に総員退船にまでなったことはありません。しかし、もし、総員退船ということになると、まず、乗組員の指示により、お客様は救命胴衣を着用します。そして、乗組員の誘導により、お客様は、遊歩甲板(オープンデッキ)などの指定された避難集合場所まで避難します。
 そこから、国内フェリーなどでは、シューターを使って救命いかだに乗り込みます。海面までがごく近い小さな旅客船では、直接、飛び込むことになります。また、瀬戸内海などの穏やかな海では、救命いかだの代わりに、浮器と呼ばれる大きな浮き輪につかまって救助を待つことになります。
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