バリアフリーフェリーの避難実験(2003年9月)


 2003年9月、新潟港において、新日本海フェリー株式会社所有のバリアフリーフェリー「ゆうかり」で、操練(避難・誘導訓練)が実施されました。この操練には、模擬車いす利用者1人と健常者25人(いずれも大学生)が参加しました。図に「ゆうかり(全長200m,総トン数18,000トン,定員792人)」の外観と操練時の旅客と避難集合場所の配置、そして、模擬車いす利用者の避難の様子を示します。

「ゆうかり」外観

避難者の初期配置と避難経路

模擬車いす利用者の避難の様子
 今回の操練では、初期配置と集合場所が同一甲板で、甲板間の上下移動はなく、図に示した範囲を1人の職員が担当し、誘導しました。表には、操練の経過に沿った、時刻と状況(放送内容)、職員と模擬車いす利用者の行動をまとめました。観察の結果、バリアフリー化され通路幅等が十分にあるため、車いす利用者と職員を先頭にスムーズな移動となっていました。また、本操練は火災の進展に沿っての訓練ですので、旅客を待機させる等各段階で時間をとっていました。よって、特に車いす利用者だけのために時間を要したということはありませんでした。

操練の経過(抜粋)
 しかし、甲板間移動がある場合や介助を必要とする旅客が多い場合、あるいは緊急性が高い場合は、効率的な避難・誘導手順を決めておく必要があると考えます。そこで、本操練に引き続き、甲板間の下方向移動に限定した避難実験を実施しました。職員1人の誘導により、模擬車いす利用者1人と健常者25人がそれぞれの自室前に整列し、階段前まで移動、さらに、階段を使って一甲板分下方向に移動するという要素避難実験でした。車いす利用者の移送方法は、職員の判断に基づき、方法1) おんぶと、方法2) 車いすごと3人で利用者を移送の2つの方法が取られました。いずれの方法でも、職員の誘導は、まず、歩行で移動する避難者を階段脇のスペースに待機させておき、車いす利用者を先頭にして階段の移動を開始しました。階段を下り始めると、すぐに、職員は待機している歩行の避難者に声をかけ、階段の移動を開始させ、職員と車いす利用者に続いて避難するという手順がとられていました。

おんぶでの避難
 この他にも、模擬車いす利用者1人を含む群集流の交差について観測する実験も実施しました。これらの避難実験の際のデータ計測を基に、海技研で開発しています船内避難シミュレーションを改良しています。
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