傾斜装置を用いた車いす走行実験(2000年9月実施)
実験概要

 傾斜装置(右写真)の角度を0度から7度の間で変化させ,計測用車いすに載った被験者による走行実験をおこないました。傾斜装置は床面が5.5m×5.5mの大きさで,表面は旅客船用の床材が張ってあります。床には,交通バリアフリー法で最低限の通路幅として規定されている80cmを示すテープが張られており,被験者にはテープからはみ出ないように,自分のペースで車いすを走行していただきました。主として,傾斜面に対して縦断走行と横断走行をしていただき,一部の被験者の方には、旋回走行もお願いしました。
 走行時の車いすへの駆動トルクと車輪の回転角度を測定し,実験毎に主観的な評価を得るためにアンケートを実施しました。
図 傾斜装置の外観
工学的手法によるデータ解析

 得られたトルク(Nm)を回転角変化(rad)で積分することで,消費エネルギ(J)が求められ,単位時間あたりの消費エネルギ(出力,W)が求められます。右図は,データ処理を行った結果の一例として,縦断登坂走行における傾斜角度と平均出力(W)の関係を示しています。今後,さらに詳細な解析を進めるとともに,以下のアンケート結果との比較・検討を行うことで,より実際的な「負担感」を評価していきたいと考えています。

図 傾斜角度と平均出力の関係
(上の画像をクリックすると大きい画像が表示されます。)
アンケート調査による負担感と危険感の解析

 車いすの走行では、操作するのが人間であるため、実際に入力した力だけでなく、心理的な負担感も考慮することが重要と考えます。アンケートでは、このような被験者の心理的な負担感について尋ねました。
 ここでは、横断走行時に意思と違う方向にぶれたかどうかについてのアンケート結果を示します。全実験を通して、慣れや、比較対象の有無、傾斜角度の変化の順番等、心理的に作用を及ぼす要因の影響が見られますので、さらに詳しい分析や実験の積み重ねが必要であると考えています。

質問:横断走行で意思と違う方向にぶれましたか?
(ぶれたと感じたほど評価値が高い)
(上の画像をクリックすると大きい画像が表示されます。)

まとめ

 以上,2000年9月に実施した走行実験の結果の一例を紹介しました。旅客船は,単なる移動手段ではなく,旅客船内で過ごす時間も大切です。本研究では,旅客船内において車いすで安全・快適な移動ができるようにするための技術的なデータを取得したいと考えています。
[ Barrier-free HOME ] [ NMRI HOME ]
このページに関するお問い合わせはokuzumi@nmri.go.jp, khirata@nmri.go.jpまでお願いします