ワンチップマイクロコンピュータを使った実験装置
第4章 マイクロコンピュータを使った実験装置例
4.11 電磁ソレノイド式アクチュエータ(PIC)
はじめに
平成12年度,乱流制御デバイスの研究を行いました。乱流制御とは,簡単に言うと,渦を巻いて乱れている水の流れがある場合に,水の流れを細かく制御して,きれいに整った流れに変えようというものです。その乱流制御に用いるアクチュエータを検討しました。ここでは,その一例として,構造が簡単な電磁ソレノイド式アクチュエータを試作しました。そして,マイクロコンピュータ(PIC16F84A-20/P)を取り付け,簡単なプログラムを作成しました。
乱流制御用アクチュエータの概要
実際に水の流れを制御するためには,高精度なマイクロセンサとマイクロアクチュエータが必要となります。しかし,作者にはマイクロアクチュエータに関連する技術が全くありませんので,まずは自作可能な比較的大きいアクチュエータを使用し,アクチュエータの制御プログラムの開発を目指すこととしました。
なお,実際に製作したのは,以下のStep 1までです。Step 2以降は構想だけです。
(a) Step 1
図1に示すような,センサをイメージした押しボタンスイッチと電磁石を利用したリニアアクチュエータ(市販のスピーカと同じ構造)から構成される簡単な装置を製作します。これをマイクロコンピュータ(PIC)で制御し,スイッチのON/OFFあるいはその時間に反応して,アクチュエータの運動を任意に制御します。
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(b) Step 2
図1の装置を改良して,2つのスイッチとリニアアクチュエータとから構成されるゴムボールの運動を制御する装置を製作します(図2)。この装置は制御対象が質点か流体かという点で乱流制御デバイスとは全く異なりますが,対象物の運動の向きまたは速度を変化させる点はよく似ています。
図2(a)に示すように,ボールが図中の矢印の方向に転がる場合,2つのスイッチによりボールの速度が求められます。それに応じてアクチュエータの運動(強さとタイミング)を制御し,意図したボールの運動を実現させます。さらに図2(b)に示すように,バスケットボールのゴールのようなものを設置すれば,ボールの運動が意図したとおりの運動を実現しているかがわかります。
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(c) Step 3
複数のスイッチとアクチュエータを取り付けた,ゴムボールの運動を制御する装置を製作します。図3(a)は,ボールを任意の速度で運動させる制御,あるいはボールを側壁に接触させずにできる速い速度で転がす制御などのプログラムを開発できます。また,図3(b)は,横一列に並べたボールをできるだけ均一な速度で転がす制御を試みる装置です。これらの装置によって,複数のセンサとアクチュエータを制御する高度なプログラム技術が蓄積できると思われます。
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(d) Step 4
図3の装置において,ボールを流体に置き換えた装置を設計・試作します。流体を高速な潤滑油とすること,円管あるいはチャンネル材を用いる等の工夫をし,装置の『作りやすさ』を重視します。また,制御デバイスの応用や効率については考えず,抵抗低減を確認することだけを目的とします。なお,この段階でセンサやアクチュエータのマイクロ化はまだ難しいと思われます。
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試作した電磁ソレノイド式アクチュエータ
ボイスモータと呼ばれる電磁ソレノイドは,音響スピーカに用いられている形式です。この形式は,磁力がコイルを流れる電流に直交するため,比較的効率が高いという特徴があります。右図に試作した電磁ソレノイド式アクチュエータ,下図に組立図・部品図を示します。試作したアクチュエータのシリンダ,磁石およびシャフトは瞬間接着剤で接着されています。磁石はかなり強力なものを使用しました(ジャンク屋で購入したため詳細は不明)。アルミニウム合金製ピストンには,線径0.2 mmのエナメル線が約300回(約10 m,約20Ω)巻かれています。ピストンとシャフトは金属同士の摺り合わせで接触し,8 mmのストロークで駆動するようにしました。

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サンプルプログラム
マイクロコンピュータに書き込んだプログラムは,@スイッチ1が押されていることを検知した後,カウントを開始し,Aスイッチ2が押された後,カウントされた時間だけ待機して,Bアクチュエータをカウントに比例した時間だけ駆動します。また,スイッチ3はプログラムモードの開始命令,スイッチ4はマニュアルモードの開始とアクチュエータの駆動に使われています。
サンプルプログラム:act02b.bas
おわりに
作者は平成12年度だけで乱流制御デバイスの研究を降りました。流れを制御するにはほど遠く,このページの内容までしか進みませんでした。電磁ソレノイド式アクチュエータは乱流制御デバイス以外でも使う用途があると思われます。
乱流制御についてもっと知りたい方は以下のリンクページをご覧ください。

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