等温モデルと断熱モデルの特徴

 スターリングエンジンの代表的な解析法として,等温モデルと断熱モデルがあります。実際のエンジンがどちらの解析法に近いかは,エンジンの形式や運転条件などによって異なります。通常は,等温モデルと断熱モデルの間にあると言われています。

等温モデル

 等温モデルは,膨脹空間内および圧縮空間内の作動ガスが等温変化を行うと仮定した解析法です。各空間に一定の温度を設定することで,作動ガスの流れや伝熱を考えなくてすみ,比較的簡単にガス圧力変化の計算ができます。
 作動ガスの熱変化が理想的すぎるため,熱効率や伝熱性能を解析する場合には,あまり適していないと考えられます。
 理想的な等温モデルでは,膨脹空間内作動ガスの仕事量が作動ガスを加熱するための全入熱量に相当するため,高い熱効率が求まります(他の熱損失を含めなければカルノーサイクルの効率に一致します)。しかし,ヒータにおける熱交換だけでは作動空間を等温に保つことができないと考え,膨脹空間のシリンダ壁からの伝熱によって作動ガスの等温変化を保つと仮定すると,全入熱量はシリンダ壁からの交換熱量分だけ増加し,熱効率は低下します。

等温モデルの概念図

断熱モデル

 実際のエンジンでは,膨張空間および圧縮空間の伝熱面積はヒータやクーラの伝熱面積と比べて小さいのが一般的です。したがって,膨張空間および圧縮空間での交換熱量は極めて少ないと考え,膨張空間内および圧縮空間内の作動ガスは断熱変化を行うと仮定するのが断熱モデルです。
 断熱モデルは,エネルギー式などの微分方程式を解く必要があり,等温モデルと比べて計算が複雑になります。簡易的な出力計算を行うだけであれば,等温モデルでも十分であると考えられますが,熱効率や伝熱量などの詳細な解析が必要な場合には断熱モデルをベースとした解析法が適していると考えられます。
 なお,作動ガスが断熱変化を行うと言っても,これはシリンダ壁からの伝熱がないと仮定しているのであり,ヒータやクーラからの熱の流れ(エンタルピ)は必ずあります。

断熱モデルの概念図

[Stirling Engine Dictionary]