スターリングエンジンを用いたコジェネレーション

 コジェネレーションとは,燃料の熱エネルギーを使ってエンジンを運転し,発電させると同時に,エンジンからの排熱を利用して温水を作るなど,熱の有効利用をする方法です。昨今,スターリングエンジンが期待されている用途の一つです。


スターリングエンジン・コジェネレーションシステムの構成

 下の図は,スターリングエンジンを用いたコジェネレーションシステムの概略を示しています。天然ガスや石油などの燃料を燃焼させて,スターリングエンジンを動かし,発電出力を得ます。通常,発電された電気エネルギーはバッテリに蓄えられ,家庭用電力(AC100Vなど)に変換するインバータを介して,使用されます。一方,燃焼を終えた排気ガスは熱交換器で冷却水を暖めます。暖められた冷却水(温水)は,温水タンクに蓄えられ,必要に応じて給湯(暖房や風呂)などに使われます。このようにコジェネレーションシステムでは,燃焼後の排熱を有効に回収することで,燃料のエネルギーを無駄なく使うことができます。


スターリングエンジンコジェネレーションシステムの概略


コジェネレーションの規模

 コジェネレーションシステムは,用途によって,小規模(家庭用),中規模(業務用)および大規模(地域用)に分けられます。小規模(一般家庭用)では発電出力が1 kW程度と言われています。中規模は,工場やビルディング,病院,食道などの建物を対象としており,建物の用途によって異なりますが,概ね3〜50 kW程度の発電出力が必要となります。大規模は,地域的なコジェネレーションを対象としており,概ね100 kW以上の発電出力が必要になります。現状のスターリングエンジンの開発状況から考えると,スターリングエンジンが対象となるのは,小規模並びに中規模です。

コジェネレーションの規模
発電出力レベル 動力源 備 考
小規模(家庭用) 〜1 kW ガスエンジン,スターリングエンジン,燃料電池  
中規模(業務用) 3 kW〜50 kW ガスエンジン,スターリングエンジン,燃料電池  
大規模(地域用) 100 kW〜 ガスタービン,ガスエンジン(ディーゼル)他  

スターリングエンジンの適用性

 小・中規模のコジェネレーションに使用できる動力源としては,スターリングエンジン,ガスエンジン,および燃料電池があります。それらの特徴を下の表に示します。 燃料電池は発電量が大きく,ガスエンジンとスターリングエンジンはほぼ同等の性能と言えます。国内での熱・電気需要を考えると,発電量を大きくするのがよいと言われていますので,現状では燃料電池がコジェネレーションに適した動力源であると考えられます。
 また,現状でのスターリングエンジンの開発状況を見ると,発電出力1 kW程度のエンジンの発電効率はやや低く,10 kW以上のエンジンではかなり高い発電効率が得られています。すなわち,中規模コジェネレーションでは,スターリングエンジンが有望です。

コジェネレーションの動力源
  目標性能 実際の性能(推測) 備 考
ガスエンジン 発電20%+温水65% 発電20%+温水65%  
燃料電池 発電35%+温水50% (発電20%)  
スターリングエンジン 発電20%+温水65% Whisper社,発電0.75 kW,15%
SOLO社,発電10 kW,24%
STM社,発電25 kW,30%
ボイラー(参考) 温水100% 温水〜100%  

コジェネ用燃料電池の特徴

●環境適応性が高い(排ガスがクリーン)
●現状では改質器の白金触媒のコストに問題あり?
●現状では目標発電効率35%は困難?
●燃料電池技術の確立には,もうしばらく時間がかかるのでは?
●トータル的な製作コスト,基礎技術に課題があり?
コジェネ用ガスエンジンの特徴

●中・大規模コージェネレーション用に製品化されている。
●既存の内燃機関の技術を流用でき,価格面で極めて有利。
●小規模コージェネレーション用エンジンでは,燃料ガスの圧縮装置に課題あり?
スターリングエンジンとガスエンジンの比較

●製造コスト:ガスエンジンが圧倒的に有利。
●騒音:エンジン単体であればスターリングエンジンが有利。ただし,ガスエンジンに防音設備を施せばほぼ互角。ディーゼル式ガスエンジンの過給器(ターボチャージャー)は不利。
●排気ガス:連続燃焼であるスターリングエンジンが有利。燃焼制御が容易なため,スターリングエンジンは排気ガスをクリーンにできる可能性がある。。
●燃料:燃料の多様性の観点からスターリングエンジンが有利。
●発電/熱回収(温水):小型エンジン(1 kWレベル)ではガスエンジンが有利(高発電効率)。中型以上ではスターリングエンジンが有利になる可能性がある。
●以上より,スターリングエンジンはコジェネレーション用動力源の一つの選択肢であり,ガスエンジンとの競合はあるものの,低コスト化により小規模コージェネレーションで早期実現が可能であると考えられる。

[Stirling Engine Dictionary]