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各種エンジンの構造と原理



 熱機関(エンジン)は17世紀に発明されて以来,現在まで300年近くもの間,私たちの生活の中で広く使われてきました。エンジンには多くの形式があり,様々な用途で実際に使われています。このページでは,各種エンジンの基本的な構造や特徴について説明します。


往復動蒸気エンジン

 往復動蒸気エンジンは人類が最初に実用化したエンジンです。このエンジンは,蒸気が持っている静的な圧力を利用して有効な機械的エネルギを発生します。産業革命以後,産業用・輸送用の動力源として長らく使用されましたが,現在では蒸気タービンや内燃機関に取って代わられ,ほとんど使われることはありません。
 一般的な往復動蒸気エンジンは,右図のようにボイラ,過熱器,ピストン,シリンダ,復水器,吸水ポンプから構成されていて,シリンダの上部には吸気バルブと排気バルブが取り付けられています。

スターリングエンジン

 スターリングエンジンは,右図に示すように2つのピストンで構成されており,バルブを設けずに作動ガスを繰り返して用いる密閉式の外燃機関です。熱エネルギを有効に利用し,高効率を達成するために蓄熱式熱交換器(再生器)が採用されているのが大きな特徴です。発明当時は作動ガスに空気を用いたもので,以下に説明するエリクソンエンジンとともに『熱空気エンジン』と呼ばれていました。その後,様々な開発がなされ,現在の高性能スターリングエンジンは,作動ガスに高圧のヘリウムや水素などを用いることで高出力化・高効率化がなされています。このエンジンは,エンジン重量が重いこと,製作コストが高いことなどの問題があるため,未だ民生レベルでの実用化には至っていません。

エリクソンエンジン

 J. エリクソンはスターリングエンジン(当時の熱空気エンジン)を改良して,様々なエンジンを開発しました。現在,エリクソンエンジンと呼ばれるエンジンもその一つです。右図に示すように,供給シリンダと作動シリンダの2つの空間にそれぞれ2つのバルブを用いた開放式の外燃機関です。また,エリクソンが発明したエンジンの多くは蓄熱式熱交換器(再生器)を使用しています。

ガソリンエンジン

 ガソリンエンジン(火花点火エンジン)は自動車などに幅広く使われています。このエンジンは燃料と空気の混合ガスをシリンダ内で圧縮して,それに点火プラグを用いて爆発させ,駆動力を発生します。このエンジンの特徴として,他のエンジンより小型,軽量で比較的出力が大きく高回転が可能であること,運転維持が容易であることなどがあげられます。

蒸気タービン

 往復動蒸気エンジンのピストン,シリンダの代わりにタービン(羽根車)としたのが蒸気タービンであり,火力発電所や原子力発電所などで使われています。往復動蒸気エンジンでは蒸気の静的な圧力を利用しているのに対して,蒸気タービンでは主として蒸気の熱エネルギを直接運動エネルギに変換して有効な機械的なエネルギを発生しています。どちらの場合も蒸気が膨張するときに生じるエネルギを利用しています。

ディーゼルエンジン


 ディーゼルエンジン(圧縮点火エンジン)は,ガソリンエンジンと同様にシリンダ内部で燃料を燃焼させる内燃機関であり,現在,自動車用,船舶用などで幅広く使われています。このエンジンはガソリンエンジンと異なり,初めに空気だけをシリンダ内に吸い込み,これを断熱圧縮させて温度を上昇させます。そこへ霧状の燃料を噴射すると,自動的に着火して燃焼し,駆動力を発生します。このエンジンの特徴として,ガソリンエンジンと比べて圧縮比が高く効率が高いこと,安価な軽油や重油が使用できて経済的であることなどがあげられます。しかし,シリンダ内の最高圧力が高いため,振動・騒音が大きく,重量が増えるなどの問題点もあります。

ガスタービン

 ガスタービンは,圧縮機で圧縮したガスに燃料の燃焼熱を与え,高温高圧ガスを作り,このガスをタービン(羽根車)に当てて,そのエネルギを回転運動に変換させて機械的エネルギを発生しています。下図のように,ガスタービンには内燃式(開放式)と外燃式(密閉式)とがあり,基本的には空気圧縮機,燃焼器,タービンから構成されています。ガスタービンは,作動ガスが定常連続流れであるため,ピストン往復式エンジンと比べて,大流量の作動ガスを扱うことができ,大出力を発生させるのに適しています。この特徴を活かしているのが航空機用ジェットエンジンです。


ロケットエンジン

 ロケットエンジンは燃焼室内で燃料と酸化剤から高温高圧の燃焼ガスを発生させます。この燃焼ガスがノズルを介して断熱膨張しつつ,高速なガスとなってエンジン後方から噴射します。この高速ガスの反作用によって推進力が発生します。ロケットエンジンは作動ガスに運動エネルギを与えて推進力を発生させる点でジェットエンジンと同じですが,エンジン自体が噴出するためのガスを持っている点が大きく異なります。そのため,空気がない場所でも推進力を得ることができ,宇宙での推進用エンジンとして使われています。

燃料電池

 以上にあげたエンジンは燃料の熱エネルギを機械的エネルギに変換しています。一方,燃料電池は,酸化によって発生する燃料の化学エネルギを直接電気エネルギに変換させるエネルギ変換装置です。燃料電池は,イオン伝導体である電解質の層を介して分離されたアノード,カソードと呼ばれる電極から構成されており,アノードに燃料を供給し,カソードに酸化剤を供給することで電気エネルギを発生させることができます。


[ Stirling Engine Dictionary ]
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