高性能スターリングエンジン

 スターリングエンジンは,一部の軍事用潜水艦で既に実用化されています。また,他のエンジンと比べてやや高価ですが,コジェネレーション用あるいは発電用などでも市販されはじめました。以下,既に製品化されているスターリングエンジンや製品化を目指して開発が進められているスターリングエンジンを紹介します。


EPAS Stirling S 400 (Germany)
 ドイツのEPAS Product社で開発されている最大出力400 Wの太陽熱スターリングエンジンです。2 m2の集光器を取り付けて運転します。作動ガスは空気,ヒータ壁温は750℃,冷却水温度は30℃,エンジン重量は28 kgです。価格についての記載はありません。

EPAS Stirling S 400
EPAS社HPより


EPAS STIRLING BM 1000 (Germany)
 ドイツのEPAS Product社で開発されている発電出力1 kWのバイオマス利用スターリングエンジンです。作動ガスは空気,ヒータ壁温は900℃,冷却水温度は30℃,エンジン重量は28 kg,発電機効率は90 %です。スウェーデンのJanfire社の木屑用燃焼器(14 kW)が付属しています。価格についての記載はありません。

EPAS Stirling BM 1000
EPAS社HPより


PPS 16, Whisper GEN (New Zealand)
 ニュージーランドのWhisper GEN社では,発電出力750 W,熱出力(熱回収)6 kWのコジェネレーション用スターリングエンジンを開発・販売しています。燃料はディーゼル油,ケロシン(軽油),LPG,天然ガスなどを使用し,作動ガスは約2 MPaに過圧したヘリウムを使用します。エンジン全重量は約100 kgです。このエンジンは,揺動ヨーク機構(wobble-yoke)と呼ばれる独自のクランク機構を採用したダブルアクティング形です。

(株)アイ・ビー・エフ:PPS16コジェネシステムの輸入・販売(日本)

Whisper GEN社のコジェネ用エンジン
Whisper GEN社HPより


STM 4-120 Engine, STM Power (USA)
 アメリカのSTM Power社では,出力25 kWのダブルアクティング形スターリングエンジンの開発・販売をしています。このエンジンは,太陽熱利用システムなどでも使用されたことがあり,実績のあるエンジンです。

極東貿易(株):本エンジンの輸入・販売(日本)

STM 4-120 Engine
STM Power社HPより


SOLO Stirling Engine (Germany)
 ドイツのSOLO社では,出力10 kWのスターリングエンジンシステムの開発・販売をしています。太陽熱利用システムやコジェネレーションなどで,多くの試験実績があります。SPS V160をベースとした2ピストン形エンジンです。

SOLO社が提供するスターリングエンジン関連情報

SOLO社のコジェネ用エンジン
SOLO社HPより


ST-5, Stirling Technology Inc., USA
 アメリカのStirling Technology Inc.では,出力5馬力(約3.7 kW)/650 rpmのバイオマス利用スターリングエンジンの開発・販売を行っています。比較的圧力が低い空気を使用しているため,エンジン寸法がやや大きくなっていますが,安定した出力が得られそうなエンジンです。

(株)スターリングエンジンのパンフレット

ST-5 Engine
Stirling Technology Inc. HPより


Sunpower Free Piston Stilring Engine (USA)
 Sunpower社(アメリカ)では,いくつかの種類のフリーピストン形のスターリング冷凍機やエンジン発電機を開発・販売しています。その1つである1 kWスターリングエンジン発電機(試作モデル)は,作動ガスにヘリウムを使用し,周波数50 Hz,ヒータ壁温550℃,平均冷却水出口温度50℃,平均効率28 %です。価格は約35000 USドルです。

Sunpower社の模型エンジン
(1 kWエンジンではありません。)
Sunpower社HPより


SUNMACHINE (Germany)

 SUNMACHINE社(ドイツ)では,出力数kWの太陽熱利用スターリングエンジン(温度レベル400〜800℃)を開発しています。また,このエンジンをベースとして,コジェネ用やバイオマス利用システムについても検討している模様です。詳細についてはわかりませんが,現状ではまだ研究段階のようです。

SUNMACHINE
SUNMACHINE社HPより


SUNWELL (Germany)
 同SUNMACHINE社(ドイツ)では,太陽熱利用の低温度差スターリングエンジンの開発も進めています。太陽光を集光しないで運転する形式です。詳細についてはわかりません。

SUNWELL
SUNMACHINE社HPより


ENATEC Stilring Co-Generation System (The Netherlands)

 ENATEC社(オランダ)では,Stirling Technology Company(アメリカ)の1 kW級フリーピストン形スターリングエンジン「RG-1000」を利用したコジェネシステムの開発を進めています(2004年に商品化予定)。なお,発電出力350 Wのデモンストレーションモデルの開発も行われているようです。

SUNWELL
ENATEC社HPより


RG-1000, Stirling Technology Company (USA)
 Stirling Technology Company, STC(アメリカ)では,様々な出力レベルのフリーピストン形スターリングエンジンの開発を進めています。右写真の1 kWエンジン「RG-1000」は,ENATEC社(オランダ)により商品化がされようとしています(システム効率=23 %,燃焼器効率を含めず)。

RG-1000 Free Piston Stirling Engine
Stirling Technology Company HPより


RG-350, Stirling Technology Company (USA)

 右の写真は,Stirling Technology Company, STC(アメリカ)の350 Wスターリング発電機(システム効率=23 %,燃焼器効率を含めず)です。
 STC社では,この他にも出力60 W程度の宇宙用エンジン「RG-55」(システム効率=29 %),出力450 Wのコジェネ用エンジン「RG-450」(システム効率=30 %),出力3 kWのコジェネ用エンジン「RG-3000」(システム効率=39 %)の開発を進めています。

RG-350 Stirling Generator
Stirling Technology Company HPより


TEK 40, Magnet Motor (Germany)
 Magnet Motor社(ドイツ)では,発電機出力40 kW,温水出力88 kW(40〜80℃),燃料入力140 kWのコジェネ用スターリングエンジンの開発を進めています。エンジン寸法は0.8 m x 1 m x 1.9 mです。

TEK 40
Magnet Motor社HPより


TEK 10, Magnet Motor (Germany)

 同Magnet Motor社(ドイツ)では,発電機出力10 kW,温水出力22 kW(40〜80℃),燃料入力35 kWのコジェネ用スターリングエンジンの開発を進めています。エンジン寸法は0.85 m x 0.85 m x 1.3 mです。

TEK 10
Magnet Motor社HPより


Stirling Advantage Inc. (USA)
 Stirling Advantage Inc.(アメリカ)では,出力200 kWのダブルアクティング形フリーピストンスターリングエンジンの開発を計画しています。かなり奇抜なアイデアですが,実用までにはもうしばらく時間がかかりそうな印象です。

Stirling Advantage Inc.のスターリングエンジン
Stirling Advantage Inc. HPより


BSR Solar (Germany)
 BSR Solar社(ドイツ)では,低温熱源(約100℃)〜中温熱源(約300℃)を利用する太陽熱スターリングエンジンの開発を進めています。詳細についてはわかりませんが,かなり低い周波数(0.5〜5 Hz)で作動するフリーピストン形のようです。

SOLAR STIRLING WATERPUMP(ドイツ語)
関連情報(ドイツ語)
BOMIN-SOLAR GmbH

SUNPULSETM
BSR Solar社HPより


Sigma PCPTM, Sigma Elektroteknisk (Norway)
 Sigma Elektroteknisk社(ノルウェー)が開発している出力12 kW(?)のコジェネ用スターリングエンジンPCPTM(Personal Combustion Powerplant)は,ディスプレーサとパワーピストンを同一シリンダに持つβ形スターリングエンジンを使用しています。現状では,一部のヨーロッパ内のOEM会社にだけ販売しているとのことです。

Sigma Elektroteknisk
Ocean Power Corporation
関連情報

Sigma PCPTM
Ocean Power Corporation HPより


SAARBERG, Germany

 SAARBERG社(ドイツ)では,Bomin Solar社(ドイツ)のスターリングエンジン開発に関連して3 kW級エンジンの開発を行いました。詳細についてはよくわかりませんが,現在では開発を中断している模様です。

BOMIN-SOLAR GmbH

SAARBERG社のスターリングエンジン
BHKW-Infoより


ST-05G by Viebach (Germany)
 ドイツの技術者Viebach氏らは,出力500 Wのディスプレーサ形スターリングエンジン(γ形)の開発・販売をしています。ややクラシックな外観ですが,コジェネ用やバイオマス利用などに発展させていく予定があるそうです。ディスプレーサはシリンダ径90 mm×ストローク75 mm,パワーピストンはシリンダ径80 mm×ストローク75 mm,作動ガスは1 MPa程度の空気または窒素を使用します。

Ihr Einstieg in die Stirlingmotortechnologie(ドイツ語)
ST05G関連情報(ドイツ語,英語)
ST05G Stirling Engine 300 - 500 Watt

ST-05G
関連HPより


CAM002, Tamin (USA)
 Tamin社(アメリカ)では,コジェネレーションなどの用途開発を目指して,比較的出力が小さいスターリングエンジンの開発・販売をしています。詳細については不明ですが,実験用エンジンの開発などで実績のある会社です。

Tamin CAM002
Tamin社HPより


KOCKUMS (Sweden)
 KOCKUMS社(スウェーデン)では,スターリングエンジンを動力源とした軍事用潜水艦の開発を進めています。

潜水艦用スターリングエンジン
KOCKUMS社HPより


[Stirling Engine Dictionary]