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開発の目的
エネルギーを有効に活用するには動力機関の効率向上を図るだけでなく、捨てられている熱エネルギーを再利用することも必要です。利用されずに捨てているエネルギーの一つとして、排気ガスがあげられます。排気ガスの主な利用法は、ボイラーに循環させた媒体を排気ガスの熱で高温高圧にして、その媒体を動力源に用いる方法が一般的です。その最たる例として、蒸気タービンがあげられます。しかし、ボイラーで回収できない未使用の排気ガスが必ず存在します。そこでスターリングエンジンを利用し、さらに熱エネルギーを回収すればエネルギーの有効活用に結びつくと考えております。
本研究では、ガソリンエンジンとスターリングエンジンとを結び付けたハイブリッドシステムを実際に構築し、排気ガスから回収できる熱量や仕事量を検討する研究を行っております。
排気ガスを利用したスターリングエンジンの構造と仕様
| 1 | 加熱器 |
|---|---|
| 2 | 再生器 |
| 3 | 冷却器 |
| 4 | 膨張側ピストン |
| 5 | 圧縮側ピストン |
| 6 | ピストンリング |
| 7 | フライホイール |
| 構造 | 材質 | |
| 加熱器 | 二重管 | ステンレス |
| 再生器 | 50メッシュ金網 | 黄銅 |
| 冷却器 | シェルアンドチューブ | 黄銅 |
今回試作設計したスターリングエンジンを図に、仕様を表に示します。
ガソリンエンジンとスターリングエンジンは、加熱器に入る排気ガスの温度降下を最小限にするため、距離を最短にしたフレキシブルパイプで連結され、加熱器を含め断熱材で覆われています。加熱器は熱を効率よく取りこませるため、排気ガスが内部作動ガスを通過するパイプの外側を流れるような二重管構造を用いています。管の材質は酸化を防ぐステンレスを使用しました。再生器は作動ガスの流れと鉛直方向に配置され、50メッシュの黄銅製金網が最高60枚まで挿入できます。冷却器はシェルアンドチューブ方式を採用し、熱伝導性を考慮してチューブの材質には銅を用いました。冷却方法は水道水による強制冷却です。
ガソリンエンジンは汎用4ストローク型エンジンで、最高出力は8.5馬力のものを使用しました。
排気ガスを利用したスターリングエンジンの性能
表に今までおこなってきた実験条件を示します。
| 排気ガスの熱量による影響 | 無負荷時:800W、40%負荷時:3.5kW |
|---|---|
| 再生器枚数の影響 | 20,40,60枚 |
| バッファ圧力による影響 | 1,2,3気圧 |
排気ガスの熱量における影響
排気ガスの熱量は吸入空気量、燃料消費量、排気ガス出口温度から算出しました。無負荷時の排気熱量は800Wであり、その時のガソリンエンジンの回転数は3000rpm、排気ガスの出口温度は約650℃です。同様に水動力計を用いて負荷をかけた40%負荷時の排気熱量は3.5kW、エンジン回転数は2000rpm、排気ガスの出口温度は600℃となっています。また、この熱量は大気温度まで至った場合の計算です。
再生器枚数による影響
50メッシュの黄銅金網を20、40、60枚挿入した時の実験を行いました。なお、供給熱量は40%負荷時の3.5kW一定、ストロークは60mmとしております。
バッファ圧力による影響
バッファ圧力を1、2、3気圧と変化させた実験も行いました。なお、供給熱量は3.5kW一定、再生器枚数は60枚、ストロークは60mmとしております。
ここで、実験結果の一例としてバッファ圧力を変化させた場合の結果を示します。最高軸出力は約320rpm時に91.5Wを記録しました。この値は排気ガス熱量に対して約3%が正味仕事に変換したといえます。変換率の値が非常に小さくなっていますが、これはスターリングエンジンを一機しか連結させていないので、ほとんどの排気ガスを利用することなく捨てているからです。各温度域に合ったスターリングエンジンを連結させれば、さらに排気ガスの熱量を回収することができると考えています。
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