模型スターリングエンジンのピストン・シリンダに注射器を使う!

 模型スターリングエンジンのピストン・シリンダにガラス製の注射器を使うことがあります。注射器は空気の漏れが極めて少なく,摩擦が小さいため,模型スターリングエンジンのピストン・シリンダにとても使いやすいためです。


注射器の優れた特徴

 ガラス製の注射器は,ピストン(内筒)・シリンダ(外筒)間での空気の漏れが少ない,ピストン。シリンダ間の摩擦が小さいという優れた特徴があります。さらに,ガラスの熱膨張率が小さいため,高温部であっても高いシール性と低摩擦を維持できます。そのため,α形スターリングエンジンの膨張ピストンなどにも使用できます。

ガラス製注射器

翼工業株式会社HPより)


注射器の寸法

 模型スターリングエンジンに使うピストン・シリンダの寸法を決定する場合,市販されている注射器の寸法に合わせなければなりません。特に,ピストンおよびシリンダの長さに制限があることに気をつけます。
ガラス製注射器の寸法
ピストン長さ
 α形エンジンの膨張ピストン(高温側ピストン)では,ピストン上下の熱の移動を抑えるため,できるだけ長くするとよいでしょう。
 α形エンジンの圧縮ピストン(低温側ピストン)やディスプレーサ形エンジンのパワーピストンの長さは,シリンダと同じ程度を目安とすればよいでしょう。

* ピストン長さはエンジンの形式によって異なります。
シリンダ長さ
 シリンダ長さ決定するのは非常に難しいのですが,目安として,ピストン直径の1.5倍から2倍程度にするとよいでしょう。シリンダが長すぎると摩擦が増大したり,エンジンが大型化してしまいます。短すぎると,シール性が悪くなったり,ピストンにサイドスラスト(横方向の力)が生じた際に摩擦が著しく増大します。

* シリンダ長さはエンジンの形式によって異なります。

市販されている注射器の寸法
翼工業株式会社HPより)

規 格 容 量 シリンダ外径(mm) ピストン外径(mm) カットサイズのMAXを表す
シリンダ長さ(mm) ピストン長さ(mm)
N 1 ml 9.8 6.5 35.0 50.0
N 2 ml 12.5 9.5 36.0 52.0
N 3 ml 12.8 10.1 45.0 60.0  
N 5 ml 15.5 12.4 50.0 68.0
10 ml 18.4   15.0 70.0 89.0
N 20 ml 24.2 20.3 75.0 95.0
20 ml 24.0 23.0 75.0 95.0
N/2 20 ml 23.0 18.9 83.0 105.0
N 30 ml 27.3 22.6 85.0 111.0
N 50 ml 32.7 27.5 90.0 123.0
N/2 50 ml 30.7 25.3 105.0 142.0
100 ml 41.6 35.7 110.0 145.0
200 ml 48.0 42.1 60.0 175.0
TB1 ml 8.3 4.8 60.0 70.0
TB2 ml 9.8 6.5 60.0 70.0
I 0.5 ml 7.0 3.7 60.0 70.0
N 0.25ml 6.4 3.1 45.0 55.0


注射器の加工と切断

 ガラス製の注射器に穴をあけたりなどの加工は特殊な工具を必要としますので,基本的にできません。ただし,切断(輪切り)は,右写真のようにして,青陶のグラインダのエッジを使って削り切ることができます。その際,強い力を加えると,簡単に割れてしまうので気をつける必要があります。

注射器の切断
(画像をクリックすると大きい画像が表示されます)


注射器ピストン・シリンダの組立

 模型スターリングエンジンのピストン・シリンダに注射器を使う場合,注射器に金属製の部品を接着して使うのが普通です。以下,模型スターリングエンジン「LSE-01」の組立例を紹介します。

ピストン部分の組立例
 LSE-01では,ピストン(注射器の内筒)の内側に,アルミニウム合金製のピストンホルダを接着しています。はめあいがきつすぎると注射器が割れてしまうので注意が必要です。接着には,瞬間接着剤を使用しています。
シリンダ部分の組立例
 シリンダ(注射器の外筒)の外側には,アルミニウム合金製のシリンダカバーをかぶせています。シリンダとシリンダカバーの間をしっかりとシールする必要があるので,シリコン系接着剤(商品名:バスコークなど)を使用して接着しています。


模型スターリングエンジン「LSE-01」


注射器の取り扱い時の注意

割れやすい!

 注射器に無理な力が加わると,簡単に割れてしまいます。特に,注射器の内側に金属部品を入れている場合,金属部品の温度が上がると熱膨張によって割れることがあるので気をつけます。
わずかな汚れで摩擦増大!

 注射器のしゅう動面がわずかでも汚れると,著しく摩擦が増大します。特にエンジンの組立時にはしゅう動面を汚れた指で触らないように気をつけます。油や水も厳禁です。完全なドライな状態で使いましょう。

[Stirling Engine Dictionary]