平成25918

独立行政法人 海上技術安全研究所

 

鉄鉱粉のばら積み運送に関するワークショップ

80名参加、鉄鉱粉の液状化で理解促進

 

 当研究所は国土交通省海事局と共同で、2013913日、英国ロンドンの国際海事機関(IMO)本部で「鉄鉱粉のばら積み運送に関するワークショップ」を開催しました。IMOの下部組織、危険物・固体貨物・コンテナ小委員会(DSC)では、鉄鉱粉の安全運送について検討しています。今回のワークショップは、DSCの第18回会合が916日~20日に開催されるのを前に、その審議を深めることを目的に開催し、鉄鉱粉の液状化について理解を促進しました。

 

 鉄鉱石には、大きな石状のものと粉状のものがあります。粉状の鉄鉱石は、粉鉱または鉄鉱粉(Iron Ore Fines)と呼ばれ、船舶で大量に輸送されています。

 その鉄鉱粉をモンスーン期にインドで積載して出港した貨物船が沈没するという事故が、2009年に2件発生しました。事故は貨物の液状化が原因と見られています(注1)。これらの事故を契機に、IMO20109月に開催したDSC小委員会の第15回会合(DSC 15)で、国際海上固体ばら積み貨物規則(IMSBCコード)の見直し作業(常設議題)の下で、鉄鉱粉の運送要件について審議することで合意しました。20119月のDSC 16から本格的な審議が始まりました。

 DSC 16では、鉄鉱粉の液状化の危険性を指摘する文書を作成するとともに、コレスポンデンス・グループ(幹事=太田進・海上技術安全研究所国際連携センター長、注2)を設置し、具体的な運送要件について検討しました。20129月のDSC 17では、わが国が提出したコレスポンデンス・グループの報告や、ブラジルによる研究成果が紹介され、鉄鉱粉の運送方法を審議しましたが、合意には至りませんでした。一方、ブラジルやオーストラリアは、研究を実施中である旨を発言。この会議では、再度コレスポンデンス・グループ(幹事=太田・海技研国際連携センター長)を設置し、これら研究の成果を勘案して、鉄鉱粉の運送方法を検討することとなりました。

 DSC 17の後、鉄鉱石を輸出する資源大手3社(ヴァーレ、BHPビリトン、リオ・ティント)は鉄鉱技術作業部会を設置し、船舶のばら積み貨物としての鉄鉱粉の液状化特性に関わる研究を進めました。またコレスポンデンス・グループは、これら研究成果を勘案して、鉄鉱粉の運送要件案を検討しました。

 DSC 18916日~20日)では、これらの研究成果やコレスポンデンス・グループの検討結果が報告・審議されます。しかしDSC 18に報告される研究成果や検討結果は、専門性が高く、必ずしも理解が容易ではありません。技術的な理解を促進し、審議を深めることを目的に、当研究所は国土交通省海事局と共同で、DSC 18開催前に「鉄鉱粉のばら積み運送に関するワークショップ」を開催いたしました。

 

 今回のワークショップには、17カ国および10の国際機関・団体から約80名が参加しました。冒頭、国土交通省海事局の渡田滋彦・検査測度課危険物輸送対策室長が開会あいさつを述べた後、中央大学の石原研而教授が「液状化現象とその危険性」と題した基調講演を行いました。その後、鉄鉱技術作業部会のメンバーが研究成果について説明を行い、当研究所の太田国際連携センター長がコレスポンデンス・グループの結果について報告しました。最後に行われたパネルディスカッションでは、多数の質疑応答があり、多くの出席者から「鉄鉱粉の液状化について理解が深まった」との感想がありました。

 

注1)固体ばら積み貨物の液状化は、地震時における砂等地盤の液状化と同様の現象です。船舶の動揺や振動などの繰り返し荷重によって、貨物内部で間隙水圧の上昇が発生し、貨物の剪断強度が喪失されます。固体ばら積み貨物が液状化すると、貨物が船倉内で移動することにより、船の復原性に悪影響を及ぼし、転覆にいたることもあります。

 

注2)コレスポンデンス・グループは、電子メールをベースに検討を行う検討部会です。

 

開会あいさつする国交省海事局の渡田危険物輸送対策室長(左)と司会のHerff氏(鉄鉱技術作業部会)

 

基調講演する中央大学の石原教授

 

パネルディスカッションのようす。左から海技研の太田センター長、中央大学の石原教授、鉄鉱技術作業部会メンバー

 

 

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