施設紹介シリーズ


三鷹第一船舶試験水槽(80m角水槽)

 
 この水槽は、船舶の操縦性能、波浪中の運動性能、波浪が船舶に及ぽす力の 評価等、航行中の船舶が遺遇する様々な現象についての実験を行うことを目的と して、昭和34年に設置されました。当所でも最も長い歴史を有する研究施設であ り、これまでに、船舶の性能や安全性の向上に関する基礎研究はもとより、個別 の海難事故に関しても原因究明に大きな役割を果たして来ました。 
 船舶の操縦性能を調べるための模型実験を行うためには、旋回試験、ジグザ グ試験等、模型船を自由に航走させることが必要になります。また、船舶は、い ろいろな方向から波を受けて航行しますから、波浪中の性能を調べる実験を行う ためには、模型船が波と出会う角度を自由に変えられるような装置が必要です。 また、実験データの信頼性を高めるためにはできるだけ大型の模型を使用できる ようにすることが望ましいのです。このような考慮から、この水槽は、1辺が80m の正方形(水深4.5m)をしており、この種の水槽としては、世界最大のものです 。野球場を少し小さくしたほどの広大な水槽一面に波が発生する様子は、本当の 海を思い出させるものがあります。 
 水槽の南側と東側には造波機が設置してあります。南側の造波機は波長1mか ら14m、波高0.6mまで、東側の造波機は波長0.5mから10m、波高0.2mまでの波を起 こすことができます。また、東側の造波機は24分割されたユニットを別々に動か すことができるので、波の進行方向を変えたり、実海面のような複雑な波を発生 することもできます。
 しかしながら、この水槽は、あまりに大きいので、細長い水槽のように水槽 をまたいで計測台車を設置することができません。そこで、模型船の位置や速度 を知るために、水中超音波を使った位置計測システムが装備されています。また 、模型船の運動等のデータは、無線で陸上に送られ、計算機で処理されるように なっています。 
 最近、lMO(国際海事機関)において、カーフェリーの損傷時の安全性に関 して、規則を強化しようとする検討が行われました。この議論は、一昨年9月に 北欧のバルト海で転覆し、多数の死者を出した「ESTONIA」号というカーフェリ ーの海難事故をきっかけとして行われたものです。当所では、このlMOでの議論 を裏付けあるいは検証するために、この水槽を使用して、カーフェリーの安全性 に係わる多くの実験を行い、合理的な規則の制定に役立てることができました。  
 今後も、この世界一の広大な水槽を活用した多くの実験が予想され、大きな 成果が期待されています。

写真 80m角水槽に起こした実海面に近い波