研究者インタビュー

大規模施設の安全を確率論的に評価するGO−FLOW手法に関する研究グループ

システム技術部・原子力技術部
原子力プラントをはじめ種々の分野に、確率論的安全評価(Probabilistic Safety Assessment;PSA)が導入され,プラント設計、安全審査などに利用されています。今回は、船舶技術研究所で独自に開発し、PSAの基盤となるシステム信頼性解析手法 GOIFLOW手法につ いて、システム技術部 松岡猛システム設計研究室長、原子力技術部 小林道幸装備研究室長にお話をうかがいました。

Q:確率論的安全評価手法とはどんなものですか?
A:確率論的安全評価手法では、被害発生の可能性の程度を明らかにするものです.そのために、被害に到る事象の組み合わせとその発生頻度および被害の大きさを調べあげ、達成されている安全性を評価価します。

Q1:どのような分野を対象としていますか?
A:ごく小さい電気回路の故障評価から、原子力、船舶分野をはじめとして、化学プラント、交通システム、都市工学といった大規模で複雑なシステムまで、あらゆる分野の安全性、信頼性評価に利用できます。

Q:システム信頼性評価手法にはどんな手法がありますか?
A:GO-FLOW手法のほかに、航空機産業分野で古くから利用されているフォールトツリー解析やイベントツリー解析、GO手法などがあります。

Q:船研のGO-FLOW手法の研究開発の経緯と概要を教えてください。
A:1979・80年に米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)に留学していたときに、信頼性解析手法について研究したのがきっかけとなり、GO手法の発想を転換して、GO-FLOW手法の開発にとりかかりました。それで、89年から科学技術庁の国立機関原子力試験研究費により、本格的な研究を始め、93年までに基礎・開発研究を終了し、94年からは応用研究にとりかかています。G0-FLOW手法とは、成功確率を追うシステム信頼性解析手法で、システムの信頼度あるいは有効性の評価を行うものといえます。

Q:GO-FLOW手法の優れている点はなんですか?
A:解析対象とするシステムのモデル化が容易に行え、システム信頼度の時間依存性が、一度の解析で得られる。複雑な挙動を示すシステムの解析ができる等、フォールトツリーではできない種々の特長を備えています。

Q:この手法の開発でー番苦労した点はなんですか?
A:まず、オペレータ機能の定義等整合性のとれた解析体系を作成することでした。次に容易に解析ができるように使いやすい解析支援システムを開発することでした。

Q:GO-FLOW手法の名称の由来はなんですか?
A:「流れ、流体(FLOW)」のイメージを解析に取り入れていること、G0手法のGOを合わせてGO-FLOW手法としました。おかげで、外国でも容易に名称を憶えてもらえました。

Q:計算はどのような流れで行われるのですか?
A:まず、解析対象とするシステムの構成・機能をモデル化するため、信号線とオペレータで構成されるGO-FLOWチャートと呼ばれる図(図1)を作成します。そして、オペレータの動作モード・故障に対して動作成功確率、故障確率をデータとして与え、オペレータ機能の定義に基づき信号を処理していくことにより、最終的にシステムの動作、不動作確率を求めることが出来ます。

図1 エディタ上に作成されたGO・FLOWチャート例

実際には、まずパソコン上で解析支援システムによりGO-FLOWチャートを作成していきます。(図1)この時、GO-FLOW計算プログラムに入力すべきデータが自動的に作成されます。GO-FLOW計算は、小さいものであればパソコン上でも実行可能ですが、大規模なものはワークステーションにデータを送って実行します。計算結果は数値の羅列となりますが、再びパソコン上に送り返されて、スペクトル図(図2)や確率分布図のような、わかりやすい形で表示されます。もちろんプリントアウトも可能です。

図2 不確実さ解析結果表示図の例

Q:GO-FLOW手法ではどのような計算が可能ですか?
A:ちょっと専門的になりますが、
・フェイズド・ミッション問題解析
・システム信頼度の時間依存性解析
・回復操作を考慮した信頼性解析
・保守点検実施時におけるアン・アベイラビリティの時間推移の算出
・動的な挙動を示すシステム信頼性解析
・不確実さ解析
・共通原因故障解析
・共通原因故障を考慮した不確実さ解析
などが可能です。

Q:このGO-FLOW手法はどのような分野で活用できますか?
A:現在のところ、原子力および船舶分野の安全性評価、信頼性評価に適用していますが、化学プラント、電力系統、ガス供給系統等のネットワークシステム、交通システム等の複雑な挙動をする大規模システムにも十分に適用可能と考えておりますので、安全評価に携わっておられる方の共同研究・依託研究のご提案をお待ちしております。

Q:今後、どのような機能向上をお考えですか?
A:GO-FLOW手法とイベントツリーおよびプラントのシミュレータとの合体により、実際に事故がどのようにして進展していくか把握できるようにし、フィードバック解析や解析の妥当性の検証が容易に行えるようにし、より既システムの安全性の向上に貢献したいと考えています。最後に、今回紹介しましたGO-FLOW手法につきましては、パッケージソフト化されており、パソコン版、EWS版として(株)CRC総合研究所より販売されています。詳しくは、下記のインターネットアドレスに接続してお確かめください。

http://www.srimot.go.jp/sed/studies/goflowj0.htm

GO-FLOW手法に関する研究グループのメンバー
システム技術部 松岡猛 システム設計研究室長(左)と原子力技術部 小林道幸 装備研究室長