基礎研究紹介 Basic research

「溶射材料の溶解現象の解明に関する基礎研究」と「超高温アークプラズマ発生装置」〜材料加工部〜

                 

 このシリーズでは各研究部で実施されている基礎研究と研究に使用されている施設・装置等についてそのー端をご紹介します。
今回は、表記課題について材料加工部の植松室長に話を聞きました。

Q:まずはじめに溶射とはどんな技術かについて説明して下さい。
A:溶射とは、セラミックスや金属など数μ〜数十μmの微粒子に高い熱工ネルギーと運動工ネルギーを与えて基材上に衝突させ、そこで急激に偏平・凝固した粒子により皮膜を形成する表面処理技術です。材料を吹き付けて基材上に皮膜を形成させるという点では塗装に似ていますが、 Thermal Spraying と言われるように融点が3000Kを越えるセラミックス微粒子でも瞬時に溶融させることがで
き、溶融した微粒子は基材に衝突するときの速度が数百m/secにも達しています。

Q:どの様な基材に溶射することができ、その用途にはどんなものがありますか?
A:基本的には基材は溶かしませんから、ほとんどどの様なものにも皮膜を形成することが可能です。基材の耐熱性、耐摩耗性、耐食性を向上させる用途、あるいはセンサ等の電気部品用として用いられ、その適用範囲は広がってきています。

Q:ということはかなり完成した技術なのですか。
A:表面処理法としてはかなり使用実績もあり、その意味では完成した技術と言えます。しかし、溶射プロセスは、選択できる熱源やパラメータの種類が多く、どの様な施工条件を選ぶかは経験や勘を頼りに行われることもあり、プロセスの科学的視点からの解明は遅れているように思えます。例えば材料の溶融現象の解明も、高温・高速の微粒子を取り扱うことになるため十分行われていないのが現状です。

Q:「溶射材料の溶融現象の解明に関する基礎研究」について聞かせて下さい。
A:これは、プラズマジェット中での材料の溶融過程を解明することにより、溶射効率を向上させ、良質の皮膜を得ることを目的とした研究で、現在1年目が終了した段階です。特別に粒子径を揃えた材料微粒子を用い、溶融した微粒子を基材に衝突する前後で捕獲してそれぞれを走査電子顕微鏡(SEM)で観察しました。これにより、プラズマフレーム中を飛行する微粒子の加熱冷却機構と基材上での偏平・凝固のメカニズムがわかってきました。今後は微粒子の捕集方法を改良するとともに、皮膜の密着性を評価する技術に挑戦していきたいと考えております。


写真1:超高温アークプラズマ発生装置
及びプラズマ流れ


図1:TiB2溶射皮膜と溶射前の粉末のX線回折結果


Q:大型設備である超高温アークプラズマ発生装置」について説明して下さい。
A:この装置はこれまで説明しました溶射のうち、酸化が問題になる純金属やホウ化物系セラミックス材料を溶射する場合には絶対に必要とされる物です(写真1左)。写真1右は内部の圧力を大気圧より下げることにより大容量のプラズマ場が形成でき、これまで溶射が難しいとされてきた高融点のホウ化物の溶射も可能になりました。図1は本装置を用いた成果のー例でTiB2の皮膜と溶射前材料のX線回折結果を比べたものですが、熱分解のない良好な皮膜が得られております。

写真2:左から千田室長、高橋主任研究官、植松室長