就任の挨拶


船舶技術研究所長 足達宏之


6月8日付けで所長を拝命しました。
複数の研究部、出向、特別研究官等、色々の経験を活かし、貢献いたしたいと思っています。
船舶技術は狭い要素技術の研究だけでは成り立たず、世界の社会経済構造の中で技術の位置づけが必要です。海上技術の安全、環境また先導的技術等につき、これからの社会経済構造が必要とする研究を自信を持って行ってゆきたいと考えています。行政改革の流れの中で当所の独立行政法人化を一層の飛躍の機会とすべく務めて行きたい所存であります。



プロジェクト紹介 Project research

船舶流体抵抗のさらなる低減をめざして 〜次世代CFD、マイクロバブル、LEBU 
(推進性能部)


船舶の流体抵抗を低減させ、燃料消費を減らすことは、経済性を向上させるとともに、窒素酸化物、硫黄酸化物などの有害ガスや、地球温暖化の主因である二酸化炭素の排出抑制につながります。
今回は、流体抵抗の一層の低減をめざし、(社)日本造船研究協会と共同で新手法の開発にとりくんでいる推進性能部児玉室長を中心とするグループにお話をうかがいました。



写真1 前列より、 角川主任研究官、 児玉室長、 日野室長
後列左から 平田主任研究官、 高橋主任研究官、 Sowdon研究官、 川村研究官、 川島研究官
上段左より 日夏室長、 牧野研究官
 

 

Q:抵抗低減法として、どのような手法を研究しているのでしょうか?

A:マクロとミクロという2つのアプローチを設定しました。マクロのアプローチとは、船型を最適化する際の新しい手法です。これはある船型から出発して、定められた条件を満たしつつ、抵抗が最小になるように船体が自動変形するというものです。我々は、船の周りの流れを数値計算によって推定するCFD(数値流体力学)を得意としていますが、これに船体形状を自在に表現するCAD(コンピュータを用いたデザイン)を組み合わせてできた技術です。



Q:どのような低減効果が得られましたか?

A:図2に一例を紹介します。グラフの横軸はこの手法を用いた最適化計算のくり返し回数を示していま
す。縦軸は、初めの船型の流体抵抗を1として、最適化によってどれだけ抵抗が減少したかを示しています。この例では、抵抗値は0.935まで下がっており、船型の最適化で6.5%の抵抗低減が得られたことがわかります。この結果は、2隻の大型模型船を用いた実験によっても証明されました。図の左上は、最適化された船型(船尾部)です。



図2 抵抗低減履歴と最適化船型(等高線は圧力分布)


Q
:では、ミクロのアプローチというのはどのようなものでしょうか?

A:船底表面の摩擦抵抗を小さくする装置の開発です。船が水から受ける抵抗の大部分は摩擦抵抗で
す。船などの大きな物体の周りの流れは、一般に「乱流」とよばれる細かい渦状態の流れですが、この微細な乱れを抑制することができれば、摩擦抵抗を10分の1以下にすることも可能です。こうした目的のために、マイクロバブルとLEBU
(レブ)という2つの手法の開発を進めています。


Q
:それぞれどのようなものですか?

A:マイクロバブルの方は、微細な気泡によって乱れを抑え、摩擦抵抗を低減させようというものです。図3にそのイメージを示します。基礎実験では最大80%もの抵抗低減効果が確認されました。タンカーなどの肥大船は平らで広い船底をもっていますから、気泡が船底に保持されやすく、この手法に適した船型であると言えます。しかし一方で、広い船底を覆うため多くの気泡発生が必要になりますから、エネルギー消費も大きくなります。正味の抵抗低減効果が高くなるように、システム的な検討も行う必要があります。
LEBUとは、図4に示すように、船底に板を取り付け、大きな渦を分断することで乱れを抑え、摩擦抵抗を低減させようとするものです。低減効果は数%程度と小さいですが、特別な動力等を必要としないのが特徴です。



3 マイクロバブルイメージ図



4 LEBUの概念図


Q
: 現在得られている成果を教えてください。

A:マイクロバブルについては、まず専用の流路を作って実験し、低減効果を高めるには壁の近くに気泡を集めるのが効果的であることがわかりました。次に、当所の400m水槽で大型平板船を使った実験を行いました。従来、マイクロバブルによる抵抗低減効果は、気泡放出口からせいぜい1m程度下流までしか調べられておらず、その結果から実船の場合の低減効果を推定することには無理があります。本研究では400m水槽の長さを生かし、大型平板船の長さを12m、28m、50mと次第に大きくして、最大50m下流までの抵抗低減効果を調べることができました。今後、さらに実船実験に発展させていく予定です。
LEBUについては、円柱断面、平板断面、そして翼型断面のLEBUを製作して実験を行いました。LEBUの場合も、従来は下流7m程度までしか抵抗低減効果が調べられていませんが、当所の変動風水洞施設の長さを活用して、下流15m程度まで詳細な計測データを得ることができました。LEBUは、設置自体が抵抗となる面もありますから、今後、正味の抵抗低減効果をできるだけ大きくするよう研究を進めていきたいと考えています。



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