プロジェクト紹介 Project research

 クリーンなディーゼルエンジンを目指して

 舶用ディーゼルのメカトロ化による大気汚染物質抑制の研究グループ


 ディーゼル機関の排ガス中には、 窒素酸化物、硫黄酸化物、微粒子状物質等の有害物質や温室効果ガスが含まれ、最近は、特に微粒子状物質の人体影響に関心が寄せられています。自動車用ディーゼルでは、軽油中の硫黄分の低減や新たな触媒の開発などにより、微粒子状物質の低減が提案されています。
 では、舶用ディーゼルにおける研究現状はどうなっているのでしょうか?
 舶用ディーゼルのメカトロ化による大気汚染物質抑制の研究グループに話を聞いてきました。



写真1 前列左より、 西川主任研究官、 菊池燃料潤滑研究室長、 高杉内燃機関研究室長、
桑原主任研究官、
後列左より、 張研究協力員、 中島研究官、 西尾主任研究官、
石村研究官、 大橋主任研究官


 
Q:舶用ディーゼルからの排気ガスは自動車用ディーゼルと比較して、きれいなのですか?

A:残念ながら、自動車と同様の有害物質が排出されています。一般に軽油より安価な重質油(A重油やC重油)が使われるため、燃料中の窒素分、硫黄分、金属分が多く、窒素酸化物、硫黄酸化物、微粒子状物質の排出が多くなります。舶用ディーゼルからの大気汚染は、自動車と異なり人間の居住環境から距離があります。しかし、沿岸域での影響、さらに地球環境への影響を考えると、有害物質の排出低減に関する方策が必要であると考えています。


Q:船舶にはどのような規制があるのですか?

A:窒素酸化物、硫黄酸化物に関する規制がIMO(国際海事機関)より提案されていますが、加盟各国の批准が進まず発効していません。
 発効した場合は、2000年1月に遡って規制が適用され、5年ごとに規制値の見直しが行われます。
 また、2002年末までに条約が発効しなければ、発効を阻害している点を調査した上で必要な処置が行われる予定です。


Q:温室効果ガス、微粒子状物質に関しては議論されていないのでしょうか? 

A:温室効果ガスに関しては、1997年12月の京都会議を受け、公海上の船舶からの温室効果ガスの排出削減について、IMOにおいて検討することが決まっています。
 微粒子状物質に関しては、米国より規制に加えることが提案されており、今後検討されるものと予想しています。


Q:ところで、“舶用ディーゼルのメカトロ化”とは一体何をするのでしょうか?

A:従来のディーゼルエンジンでは、燃料噴射ポンプ、吸気弁、排気弁が、エンジンと連動して作動するカムにより駆動されていました。“舶用ディーゼルのメカトロ化”とは、カムを使わずに油圧装置を介して、これらを人為的に制御し、作動させることを意味しています。


Q:なぜ“メカトロ化”をすることになったのでしょうか?

A:本研究に先駆けて、従来型エンジンにて乳化燃料を使用した実験を行ってきました。燃料に水を混合している乳化燃料を使うと、燃焼温度の低下のため窒素酸化物が低減できました。ところが、低回転域では微粒子状物質が増加してしまうことが分かりました。この原因は、カム制御による燃料噴射タイミングが高回転域用に設定されており、低回転域では燃料の噴射圧力が低いため噴霧状態が悪く、かつ、燃料中の水分によりさらに燃焼が悪化したものと考えました。そこでこの問題を解決するには、低回転域でも高い噴射圧力が得られ、回転数に応じた燃料噴射タイミングの最適な制御が必要となり、平成10年度からの3年計画で“メカトロ化”の研究を進めています。


Q:なぜ今まで舶用ディーゼルのメカトロ化がされていなかったのでしょうか?

A:メカトロ化と一口に言っても様々な様式があります。私たちが行っている油圧制御式の場合は、電磁弁で油圧を制御しており、電磁弁の動作に1/1000秒の正確さが必要となります。
 電磁弁にも様々な大きさのものがありますが、今回使用しているような大きさのものでは、この精度が出せなかったのが一番の原因と考えています。この問題を、ある制御方式により解決し、舶用ディーゼルに組み込むことによりメカトロ化が成功しました。


Q:どのような成果が出ているのでしょうか?

A:図に成果の1例を示しました。
 横軸の燃料噴射タイミングをメカトロ化により変更し、NOx(窒素酸化物)、PM(微粒子状物質)の減少、燃費の向上が得られました。
 従来型(カム使用)ディーゼルの結果は、カムで固定されてしまうので白抜きの1点をそれぞれ示しています。




着火タイミング(クランク角度)




図:噴射(着火)タイミングの 変更に伴うNOx(窒素酸化物)、PM(微粒子状物質)、燃料消費率の変化。(25%負荷時)
 線で結んでいるのはメカトロ化による結果。従来型ディーゼルでの結果はカムで固定されているため1点のみで、白抜きのマークで示している。
 カム使用時に比べ、NOxでは 1割、PMでは6割、燃料消費率は若干改善した。
Q:最終目標は実用化であると思いますが、今後の取り組みに関して教えてください。

A:この装置は実験用として作られたものですので、油圧動力源のコンパクト化、実際のエンジンの運転に適した制御プログラムの開発、あるいは種々のセンサーの組み込みなど多数の問題があると思います。
 そこで当面の目標として、メカトロ化を吸排気弁装置に拡張し、これらのメカトロ化装置を組み合わせることにより、さらに効率的に大気汚染物質の削減や、燃費を向上させようとしています。これらの目標が達成できれば、実用化に向けた動きも活発化すると思います。




写真2 改造した3気筒舶用中型中速ディーゼル機関
吸排気弁制御系には12本、燃料噴射制御系には6本の油圧管(黒色)が取り付けられている。
 
 

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