TBT(Tributyltin)の国際的な使用禁止に向けた動向と
当所の取り組みについて



船舶の外板に付着するフジツボなどの海洋生物は抵抗を増大させ、船速の低下や燃費の増大など、船舶の推進性能に大きな影響を与えます。このため、船底などの船体外板没水部には生物付着を防止する防汚剤を含む船底塗料が塗装されます。TBT(トリブチルスズ)は、生物付着防止効果の優れた防汚剤として開発され、船底塗料や漁網などに広く用いられました。
TBTを含む船底防汚塗料は、塗料が海水に自然に溶け出す自己研磨型といわれるタイプで、溶出する成分を生物が嫌うために貝類等の付着を防いでいます。しかし、TBTの濃度の高い海域で、カキの成長阻害やイボニシなど巻き貝の生殖器異常などの現象が発見され、いわゆる環境ホルモン的効果を含め、TBTは海洋生態系に影響があることが明らかにされています。
日本では、約10年前から世界に先駆けてTBTを含む塗料の製造、販売、塗布を禁止しています。このため日本の造船所ではTBTを含まない代替防汚塗料を使用していますが、TBT系塗料に比べ防汚性能がやや劣り高価でもあるため経済性が悪いと言われています。このため、代替塗料は世界的には普及せず、船舶にTBT系塗料を使用している国が減らないのが現状です。我が国の沿岸でも依然として多くの外航船がTBTを使用しているため、港湾などの船舶の輻輳する海域での生態系への影響が心配されます。
日本は、TBTを世界的に禁止することをIMO( 国際海事機関 )に提案し、その対応を日本造船研究協会RR76委員会(SWG主査:木原特別研究官)で検討してきました。IMOでの審議の結果、2003年には船舶に新たに塗布することを禁止、2008年までには全ての船舶からTBT塗料を排除する(塗装を剥がす)ことが1999年11月に決議され、2001年10月を目途に条約の策定作業に入っています。一方で、代替塗料の環境影響に対する疑問も根強く、IMOでは、上の決議に際して、代替塗料の環境影響に関する科学的、技術的研究を促進することを各国に求めています。
TBTの環境影響も通常の毒性評価手法では見つかりにくい貝類への影響であったことから、代替防汚物質の環境影響も慎重に評価する必要があります。代替防汚物質の中には、分析手法の確立していない物質が含まれること、海水中での分解挙動などが十分に知られていないことなどにより、環境影響評価手法が確立されていません。そこで、当所では、海水の温度、流速をパラメータとする、防汚物質の塗料から海水への溶出試験、加水分解、光分解などの化学的挙動の解明などを目的とする研究(研究主任:材料加工部 千田機能評価研究室長)を平成13年度に開始します。これは、防汚塗料の環境影響評価手法の確立をめざす一連の研究の第一段階と位置付けられ、今後、他省庁の研究機関とも連携して生物影響を含めた研究を展開していく予定です。



図 TBTの環境影響


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