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プレスリリース

令和3年2月18日

国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所

耐衝突・座礁性に優れた高延性厚鋼板の開発・実用化で
第3回日本オープンイノベーション大賞「国土交通大臣賞」を受賞

 <概要>
 山田安平海難事故解析センター長は、「海洋油濁防止のための耐衝突・座礁性に優れた高延性厚鋼板開発・実用化」で、第3回オープンイノベーション大賞 国土交通大臣賞を共同で受賞しました。
 今回の受賞は、海上・港湾・航空技術研究所、日本製鉄株式会社、今治造船株式会社、日本海事協会の4社が共同で実施したプロジェクト及びその成果が表彰されたものです。日本オープンイノベーション大賞については、下記をご覧ください。なお、表彰式は、2月25日に都内で開催され、オンライン配信される予定となっています。

    <日本オープンイノベーション大賞 国土交通大臣賞 受賞概要>

 (1) プロジェクト名:
   海洋油濁防止のための耐衝突・座礁性に優れた高延性厚鋼板開発・実用化
 (2) 受賞者 :
   山田安平 国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
        海上技術安全研究所 海難事故解析センター センター長
   市川和利 日本製鉄株式会社 鉄鋼研究所 厚板・形鋼・鋼管研究部 主幹研究員
   小田直樹 日本製鉄株式会社 厚板事業部 厚板技術部 厚板商品技術室 主幹
   紙田健二 今治造船株式會社 執行役員
   船津裕二 一般財団法人日本海事協会 グループリーダー
                                 以上5名

 本プロジェクトでは、船舶の衝突や座礁に起因する海洋油濁による環境破壊を防止するために、衝突されてもよく伸びることで破口しにくい「高延性鋼」を開発。当所と、日本製鉄、今治造船、日本海事協会の4社が連携し、コンセプト提案、材料開発、実機製造、認証制度およびガイドラインの公開、実船適用を実現しました。
 高延性鋼(NSafe®-Hull)は、従来鋼と同等の強度と靭性を確保しつつ、延性を向上させた鋼材です。従来鋼よりも破孔発生までの衝撃エネルギー吸収量が高く、船体構造に適用することで被衝突時や座礁時における損傷の軽減に寄与します。また、延性向上は破孔抑止にも有効であり、浸水に対する船舶の安全確保にも有用であることが期待されます。高延性鋼(NSafe®-Hull)は、上記4社の共同で開発後、既に実用化されており、超大型原油タンカー(VLCC)7隻を含め既に31隻の大型船舶に適用され、油流出防止並びに船舶の安全性向上に寄与しています。
 高延性鋼適用に際しては、日本海事協会より、「高延性鋼の使用に関するガイドライン(2020年9月24日)」が発行されています。

リリース文はこちらLinkIconプレスリリース

図1 高延性鋼の実船適用模式図(超大型原油タンカー)

図1 高延性鋼の実船適用模式図(超大型原油タンカー)
*日本製鉄HPからの引用



<日本オープンイノベーション大賞>
 イノベーションの創出を巡る国際的な競争が激化する中で、研究開発等の成果を迅速に社会実装し、社会的ニーズの解決や新たな価値の創造につなげることが大きな課題となっています。そのための方法として、組織の壁を越えて知識や技術、経営資源を組み合わせ新しい取組を推進するオープンイノベーションが注目されています。
 こうした状況を踏まえ、我が国のオープンイノベーションをさらに推進するために、今後のロールモデルとして期待される先導性や独創性の高い取組を「日本オープンイノベーション大賞」として称えることとしました。
 本表彰では、オープンイノベーションの取組で、模範となるようなもの、社会インパクトの大きいもの、持続可能性のあるものについて、担当分野ごとの大臣賞、長官賞、経済団体、学術団体の会長賞等の表彰をするとともに、各賞の中で最も優れたものを内閣総理大臣賞として表彰します。

 表彰の種類
内閣総理大臣賞、科学技術政策担当大臣賞、総務大臣賞、文部科学大臣賞、厚生労働大臣賞、農林水産大臣賞、経済産業大臣賞、国土交通大臣賞、環境大臣賞、スポーツ庁長官賞、日本経済団体連合会会長賞、日本学術会議会長賞、選考委員会特別賞

 日本オープンイノベーション大賞へのリンク:
  https://www8.cao.go.jp/cstp/openinnovation/prize/
図 2 日本オープンイノベーション大賞 ロゴマーク

図 2 日本オープンイノベーション大賞 ロゴマーク



<発明の概要>
 本発明は、国際統一規格で規定された値の1.5倍以上の全伸びを有する「高延性鋼板(NSafe®-Hull)」を使用した船殻構造により、超大型原油タンカー等の衝突時の破口発生を抑制し、甚大な環境被害をもたらす油漏洩リスクを低減するものである。
  NSafe®-Hullは、上記3社に日本海事協会を加えた4社の共同で開発後、既に実用化されており、超大型原油タンカー(VLCC)7隻を含め既に31隻の大型船舶に適用され、油流出防止並びに船舶の安全性向上に寄与しています。
 発明者らは、船体の構造設計変更ではなく、衝突による船舶の損傷を軽減する材料技術を経済合理性に従って検討し、適正に配置された、延性(伸び)に優れた鋼板で衝突エネルギーを吸収し、耐衝突性能の高い船体構造を発明した。現実の事故統計を踏まえた非線形有限要素法計算により、破口発生防止のための伸びの値(臨界的意義)を合理的に従来規則の1.4倍以上であると求め、大型船舶の衝突安全性の向上を実現した。本発明は、衝突に伴う人命や積荷の損失を防ぐと共に、国際競争の渦中にある日本の造船産業の競争力強化にも資することが期待されている。なお、本鋼材を使用した船舶は、申請により「先進船舶」として認定され税制優遇対象となることができる。

(1) 開発技術の概要
 衝突安全性に優れた船体用高延性厚鋼板NSafe®-Hullを開発し、深刻な海洋汚染をもたらす船舶事故時の油漏洩防止による環境保全に貢献しました。
(2) 開発した技術
 鋼材中の不純物と介在物の極限までの低減と最新の熱加工プロセスによる金属組織制御によって従来鋼の伸び規定値より5割以上の高い伸び値を実現した世界初の船体用高延性厚鋼板NSafe®-Hullを開発しました。NSafe®-Hullを船体に適正配置することで、衝突エネルギーを吸収し、耐衝突性能を高めることができることを最先端の動的非線形シミュレーション及び大型実験で検証しました。NSafe®-Hullは、船舶の設計変更を行うことなく、材料変更のみで船舶の安全性向上・環境汚染防止に寄与する新材料として期待されています。
(3) 効果
 NSafe®-Hullは、2014年に今治造船建造の大型ばら積み運搬船に初採用され、原油タンカーからの油流出防止並びに船舶の安全性向上に寄与しています。NSafe®-Hullの適用により、衝突時の破口に伴う油漏洩の危険性を大幅に低減可能で、生態系破壊の防止やその補償のための経済損失の低減に寄与します。

図 3 賞状授与

図 3 賞状授与

図 4 賞状授与

図 4 賞状授与

図 5 受賞したトロフィー

図 5 受賞したトロフィー

図 6 授賞式会場正面入り口

図 6 授賞式会場正面入り口

図 7 授賞式会場入口の掲示

図 7 授賞式会場入口の掲示

図 8 オープンイノベーション大賞のポスター

図 8 オープンイノベーション大賞のポスター



高延性鋼についての詳細

「高延性鋼の使用に関するガイドライン(2020年9月24日)」について

高延性鋼に係るその他の受賞
日本船舶海洋工学会賞(2016年)

市村産業賞(2019年)
市村産業賞(2019年)海上技術安全研究所 お知らせ

第8回「ものづくり日本大賞」(2020年)
第8回「ものづくり日本大賞」(2020年)海上技術安全研究所 お知らせ

大河内記念生産賞(2020年)

地方発明表彰 特許庁長官賞(2020年)海上技術安全研究所 お知らせ

第3回日本オープンイノベーション大賞(2020年)海上技術安全研究所 プレスリリース