講義ノート
もの作りのための機械設計工学


はじめに

 筆者は,小型スターリングエンジンや魚ロボットなどの様々な実験装置の設計・試作を行ってきました。それらの全ては単品製作であり,工業製品として市販されているような量産品ではありません。そして,ほとんどの部品を自作で製作しているため,製作性(=作りやすさ)を重視して設計することがほとんどです。また,実験装置であるため,製作コストを考える必要がなく,一般の機械材料としてよく使われている炭素鋼を使うことはほとんどなく,溶接構造とすることもほとんどありません。そのようなことから,本講義で述べる「機械設計」は,一般に教えられている機械設計とは異なる点が多いと思います。
 例えば,歯車を使用した機械を設計する場合,普通の機械設計の教科書では歯車の強度計算が必須です。しかし,筆者は実験装置に歯車を用いる場合でも強度計算をしたことがありません。実際に歯車を選定する際は,歯車メーカのカタログに記載されている許容トルクや許容回転数の値を参考にします。歯車の歯が壊れる力を理論的に計算することも重要ですが,歯車にどのような力が作用するのか,または複数の歯車で構成される場合にはどの歯車に最も力が加わるのかを把握することが,最も重要であると考えているためです。実際の機械設計では,これから作り上げる機械の使用条件や開発目的によって,設計計算や設計手順が異なってきます。
 本講義ノートは,明星大学理工学部機械工学科3年生が受講する「設計工学」の講義内容をまとめたものです。機械工学を学んでいる学生に「機械」を作り上げるための基本的な考え方を理解していただき,機械設計や機械作りの楽しさを伝えるように心がけてきました。そして,工学的な理屈を考え,「機械」を作り上げる能力を身につけていただきたいと考えています。
 明星大学での講義は,平成14年から始まり,5年間ほど続けてきました。1〜2年目は,それまでの反省から,講義内容や講義スライド,演習問題を少しずつ修正しました。3年目になると,講義内容はほぼまとまってきたのですが,新鮮さがなく,授業はややたるんだものになってしまいました。4年目には,この講義ノートをベースとした書籍が出版されました。5年目の講義では,授業内になるべく多くの演習課題を準備し,学生達が機械設計を考えるように心がけました。そして,平成18年度をもって,明星大学での講義は終了させていただくこととしました。
 今後も,機械設計に限らず,様々な機械技術に関するHPを作成していきたいと考えています。

平成18年12月 平田 宏一


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