講義ノート:もの作りのための機械設計工学
第8章 市販部品を利用する設計

8.6 市販部品を組み合わせる設計



 市販されている部品をうまく組み合わせることで,十分な機能を持つ機械を設計することができる。その一例として,計測用車いす(図8.42)を紹介する。この計測用車いすは,車いすの走行特性を調べるために試作したものであり,左右後輪のトルクと回転角度を測定できる。図8.43に測定部の構成を示す。本計測用車いすは,市販されている車いすにいくつかの計測器を取り付けただけであり,トルク測定装置の一部を除き,ほとんど機械加工で部品を製作していない。

計測用車いすの開発


図8.42 計測用車いす


図8.43 測定部の構成

 図8.44にトルク測定装置の外観を示す。車輪と接続された内輪とハンドリムに接続された外輪とは玉軸受で支持されている。内輪と外輪の間には,厚さ1.5 mmのアルミニウム合金製(A2024S)の板材を取り付け,その中央の表・裏両面に汎用箔ひずみゲージを接着し,引張力及び圧縮力により生じるひずみを検出している。そして,アンプ(増幅器)を通してパーソナルコンピュータに取り込まれる。


図8.44 トルク測定装置

 回転角度の測定には,1回転に2000個のパルスを発生するロータリエンコーダを使用している。図8.45に示すように,ロータリエンコーダは,回転軸から歯車を介して取り付けられている。ロータリエンコーダの信号は,マイクロコンピュータで処理された後,パーソナルコンピュータに取り込まれる。


図8.45 回転角度の測定

 以上のような実験用機械はやや特殊であるが,一般の機械設計においても設計の分野以外の様々知識が必要になる。機械設計の範囲は広く,要素部品を設計するのも機械設計であり,要素部品をうまく組み合わせて機械を作り上げていくのも機械設計である。市販されている部品を利用することは機械開発の迅速化・低コスト化につながるので,市販部品を適切かつ積極的に利用するとよい。


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