講義ノート:もの作りのための機械設計工学
第8章 市販部品を利用する設計

8.5 ばね



 力を受けて一時的に変形している物体は,力が取り除かれると元に戻ろうとする。この性質を弾性と呼び,弾性を有効に利用しているのが「ばね」である。

インターネットで「ばね」を調べる
 通常,ばねのカタログには,外径,内径,素線径,自由長,ばね定数などが明示されている。以下のホームページでは,様々な種類のばねが紹介されている。
スプリングネット:http://www.spring-net.com/
CALSMall:http://www.calsmall.ne.jp/
沢根スプリング:http://www.sawane.co.jp/
日本発条:http://www.nhkspg.co.jp/
中央発條:http://www.chkk.co.jp/



8.5.1 ばねの種類

 ばねには多くの形状があり,最も広く使われているコイルばね(図8.37)やトラックの後輪サスペンションなどに用いられる板ばね(図8.38)などがある。また,機械の軸や穴に取り付け,部品を固定するために用いる止め輪(図8.39)などもばねの一種である。小さいスイッチなどに使われているばねを含めると,ばねは,ほぼ全ての機械に使われていると言える。


図8.37 コイルばね
中央発條HPより)


図8.38 板ばね
中央発條HPより)


図8.39 止め輪
中央発條HPより)



8.5.2 ばねの特徴

 ばねの特徴として,(i) たわみ,復元性がある,(ii) エネルギーを蓄えることができる,(iii) 固有振動数を持つことがあげられる。様々な機械において,たわみ,復元性があるという特徴を利用することは多く,部品の位置決めや自動車のサスペンションなどに用いられている。また,最近では少なくなったが,手巻き式の腕時計などでは,ばね(ぜんまい)にエネルギーを蓄えておき,ある程度の時間,運転できる。通常,機械設計の際に最も問題となるのは,ばねの固有振動数である。ばねを含む振動系の固有周波数が機械の不釣り合いな回転運動あるいは往復運動の周波数に一致すると,機械が大きく振動し,状況によっては機械あるいは部品が破損することがあるためである。逆に,ばねなどの弾性体をうまく利用することで,共振あるいは振動を防ぐこともできる(図8.40)。


図8.40 弾性体を利用した防振装置
サクション瓦斯機関製作所HPより)



共振を利用したスターリングエンジン
 上述の通り,共振は機械が壊れる原因となるため,機械設計においては共振を起こさないようにするのが普通である。しかし,図8.41に示すセミフリーピストン形と呼ばれるスターリングエンジンでは,パワーピストンの運動に共振を利用している。これは,ディスプレーサを電気モータで往復運動させることにより,パワーピストンに圧力変化を与えている。ディスプレーサの周波数をパワーピストンの振動系(質量,ばね,負荷などの外力)の固有周波数に一致させることで,パワーピストンは大きく振動し,一般のスターリングエンジンと同じように作動する。詳細については,以下のホームページをご覧いただきたい。

セミフリーピストン形スターリングエンジン


図8.41 セミフリーピストン形スターリングエンジン

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