ワンチップマイクロコンピュータを使った実験装置

第1章 ワンチップマイクロコンピュータとは


1.1 ワンチップマイクロコンピュータの種類

 ワンチップマイクロコンピュータとは,1つのICの中に様々な機能が含まれていて,その中にプログラムを書き込むことで様々な動作をします。現在,よく使われているワンチップマイクロコンピュータは,Microchip社のPIC(ピックと読む)とATMEL社のAVRです。それぞれには非常に多くの種類があります。プログラム作成のときには使い勝手の面で開発者の好みがありますが,性能の面では両者にそれほど差はないようです。


AVR, Atmel Corporation
PIC, Microchip Corporation



1.2 ワンチップマイクロコンピュータの特徴

 ワンチップマイクロコンピュータの特徴を列挙します。

  • 小さい。デジタル入出力(ON/OFF)やタイマー(時間計測)の機能がたった1つのチップの中に含まれています。
  • 安い。1個300〜400円程度のチップがあります。ちなみにプログラムを書き込むためのライターは10000円程度です。
  • 多くの種類がそろっている。デジタル入出力が多いチップやA/D変換機能(電圧測定)があるチップなど,とても多くの種類があります。
  • BASICやC言語などの高級言語を使ってプログラムを作ることができる。プログラムを作るソフトウェア環境がそろっています。
  • プログラムを何度でも書き換えることができる。これがワンチップマイクロコンピュータの最も優れた特徴と言えるでしょう。
  • 動作が速く,外部電源を使用しない小型機械の制御に適している。パソコン計測が適していないところでも使うことができます。
  • 使いこなすことができれば,幅広い用途で使うことができる。ただし,使いこなすのは結構大変です。


  • 1.3 ワンチップマイクロコンピュータ実験装置の開発の流れ

     まずはワンチップマイクロコンピュータを使って何をするのか考えましょう。もちろん,「とりあえず動かしてみるだけ」というのでも構いません。次に,開発環境をそろえて,作る回路を考えて,使う部品をそろえます。そして,はんだ付けで回路を作成し,パソコンでプログラムを作成します。パソコン上でプログラムをコンパイル(チップに書き込める言語に変換)して,チップにプログラムを書き込みます。うまく動けば完成です。使用する実験機器に組み込みます。




    1.4 ワンチップマイクロコンピュータの開発環境

     マイコン機器を開発するために,最初にそろえなければいけないのは,ライターとコンパイラです。ライターとは,プログラムを書き込むための装置です。コンパイラとは,パソコン上で作成したプログラムをチップ用の言語に変換するためのソフトウェアです。これらには,PIC用,AVR用ともに様々な種類があります。以下のリンクページから,好みのものを探してみてください。なお,プログラムを作成するには,パソコン(Windowsマシン)が必要です。

    (1) PICライター(一例)
     作者が使用しているPICライターは,PDE-NXという機種です。IPIで購入しました(15800円)。DOS/Vパソコンのプリンタポートに接続して使います。レバーで簡単に脱着できるソケットはとても使いやすいです。

    (2) PIC用コンパイラ(一例)
     主にMEL BASIC Compiler(9800円)を使用しています。MEL-PBCPro BASICコンパイラ(25000円)も持っていますが,ほとんど使っていません。秋月電子電商でCコンパイラも購入しましたが,一度も使っていません。どのコンパイラを使っても,最終的にはHEXファイル(マシン語)になるので問題ありません。各自の使いやすいコンパイラを探しましょう。

    (3) AVRライター(一例)
     AVR-ISP(IPI,5800円)を使用しています。BASICコンパイラのデモ版(これだけでも十分)が付属しています。PICライターと同様,パソコンのプリンタポートに接続して使います。

    (4) AVR用コンパイラ(一例)
     ATMEL社AVR用BASICコンパイラ(BASCOM-AVR Standard Edition,12800円)を使用しています。昔からNEC PC98シリーズのN88-BASICやDOS用Quick Basic,Visual Basicを使用している作者にとって,とても使いやすく,とても気に入っています。


    IPIオンラインショップ
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    秋月電子電商



    1.5 ワンチップマイクロコンピュータでどんなことができるのか?

     ワンチップマイクロコンピュータを使えば,何でもできるというわけではありません。パソコンのように,キーボードから文字を入力したり,大きいモニタに画像を表示させたりすることには適していません。簡単に言えば,ワンチップマイクロコンピュータは,外部からのON/OFFの信号(デジタル信号)を読みとり,書き込んだプログラムによって何らかの計算をして,外部にON/OFFの信号を出力するだけです。ここで,「ON」とは電圧5 Vの信号,「OFF」とは電圧0 Vの信号だと考えてください。
     これだけのことしかできないマイクロコンピュータですが,外部のスイッチやセンサーを入力として,適当なプログラムを作ることで,パルスモータの制御やラジコン模型用(R/C)サーボモータの制御をすることができます。これを利用すれば,高性能なロボットを作ることもできるでしょう。また,液晶ディスプレイを取り付ければ,計算結果を表示することができ,簡単な測定器を作ることもできます。


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