機械設計のための基礎製図
第6回 透視投影
6.1 透視投影の特徴
前章までに述べた三角法,斜投影及び等角投影は全て平行光線による投影である。斜投影及び等角投影は,物体を立体的に表す投影法であるが,距離が遠い場合でも同じ大きさに見えるため,実際の目で見た形状とは異なってしまう。一方,放射光線または非平行光線によって投影する透視投影は,近いものは大きく見え,遠いものは小さく見えるため,実際に見た形状によく似た図面を描くことができる。しかし,透視投影は物体の寸法を厳密に表すのには不向きであり,機械設計においてはほとんど使われていない。
透視投影の特徴
●放射光線または非平行光線によって投影する。
●近いものは大きく見え,遠いものは小さく見える。
●実際に見た形状によく似た図面となる。
●物体の寸法を厳密に表すのには不向きである。
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6.2 透視投影図の例
上述の通り,透視投影は機械設計においてほとんど使われることはない。しかし,機械の説明図や建築図面などではよく使われている。
(a) 自動車の説明図
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(b) 模型スターリングエンジン
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図6.1 透視投影図の例
6.3 透視投影図の描き方
立体の見え方は,立体との距離や立体を見る位置,見る高さによって変わる(図6.2)。透視投影法は,立体を見る位置(立点)S,物体までの距離D,目の高さHを図式的に与えて作図する方法である。その基本的な描き方は次の通りである。
(a) 立体との距離
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(b) 立体を見る高さ
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図6.2 立体の見え方
透視投影の作図手順
【例題】直方体(幅30mm×高さ20mm×奥行20mm)の透視投影図を描く。
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手順@
(i) 所定の位置に3本の線(画面,地平線,基準線)を引く。
(ii) 平面図,正面図を描く。
(iii) 立点Sを決める。
* 画面と地平線の距離は任意でよい。
* 物体までの距離,目の高さを表す「長さ」に注意する。
* 地平線=立体の大きさがなくなる(点になる)。
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(1) 画面,地平線,基準線の作図
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手順A
(i) 立点Sから,平面図の辺に沿った2本の平行線を引く。
(ii) 画面との交点から垂線を降ろし,地平線上の消点A,Bを求める。
* 消点=地平線上で見えなくなってしまう点。
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(2) 消点の作図
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手順B
(i) 平面図と画面が接している1点から垂線を引く。
(ii) 正面図の高さを作図し,1辺を描く。
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(3) 画面に接する辺の作図
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手順C
(i) 画面と離れている平面図の2点と立点Sとを結ぶ。
(ii) 画面との交点から垂線を引く。
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(4) 高さ方向の辺の作図
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手順D
(i) Bで描いた1辺の上端と消点A,Bとを結ぶ。
(ii) Cで引いた垂線との交点と消点A,Bとを結ぶ。
* 画面と地平線の距離は任意でよい。
* 物体までの距離,目の高さを表す「長さ」に注意する。
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(5) 物体の上面の作図
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手順E
外形線を太い実線として完成!
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(6) 完成した透視投影図
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6.4 課題
【課題@】6.3節の手順に習って,直方体(30×20×20 mm)の透視図を描きなさい(図1)。
●物体までの距離,目の高さを表す「長さ」に注意!
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図1
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【課題A】目の高さを40mmとして透視図を描きなさい。その他の条件(立点,物体との距離)は課題@と同じとする(図2参照)。
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図2
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【課題B】目の高さを10mmとして透視図を描きなさい。その他の条件(立点,物体との距離)は課題@と同じとする(図3参照)。
【ヒント】高さ20mmの物体を10mmの目の高さから見るとどのように見えるか?
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図3
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【課題C】物体との距離を50mmとして透視図を描きなさい。その他の条件(立点,物体との距離)は課題@と同じとする(図4参照)。
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図4
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【課題D】物体との距離を10mmとして透視図を描きなさい。その他の条件(立点,物体との距離)は課題@と同じとする(図5参照)。
【ヒント】物体を非常に近い位置から見ている。
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図5
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