top bar
第1章 とりあえず知っておきたい基礎知識

材料の種類と形状


機械材料

 機械部品に使われる材料は無数にある。大きく金属材料と非金属材料に分けられ,そして金属材料は鉄鋼材料と非鉄金属に分けられる。材料の違いによって,工具を使い分けたり,あるいは加工の手順を考える必要がある。それ以前に,設計時に指定された材料を間違えないようにしなければならない。
アルミニウム合金

 アルミニウム合金にも多くの種類があるが,全般的な特徴としては,軽量であること(約2700 kg/m3),比較的柔らかく,加工性がよいことなどがあげられる。機械加工の観点から見ると,純アルミニウム系(1000系)とAl-Cu系材料(2000系)とは大きく異なる。純アルミニウム系は粘っこいため,曲げ加工が容易であるが,著しく切削加工が難しい。一方,快削合金(A2011)やジュラルミン(A2017)に代表される2000系アルミニウム合金は,鉄鋼材料に匹敵するほどの強度を持つものもあり,切削性に優れている。しかし,ロウ付けや溶接には不向きであり,曲げ加工もしにくい。両者を外見上の違いで区別するのは難しく,実際には削ってみないとわからない。
 アルミニウム合金は独特の色(やや白っぽい銀色)をしているため,外観で鉄鋼やステンレス鋼との判断ができる。また,鉄鋼やステンレス鋼と比べて密度が小さいため,手に持ってみれば,その差は歴然である。

図1 アルミニウム合金(A2017)

ステンレス鋼

 SUS304に代表されるステンレス鋼は,強度が高い,熱に強い,さびないなどの優れた特徴がある。熱に強いという特徴を活かして,直火が当たる部品(例えば,模型スターリングエンジンのヒータ)などに利用できる。また,さびないという特徴から水中で使用する機械部品などにも利用できる。さらに,比較的細い丸棒が市販されているため,シャフト(軸)に使うことも多い。なお,ステンレス鋼は,粘っこいので他の金属材料と比べて切削加工をしづらく,刃ものの寿命が著しく短くなる。
 ステンレス鋼の密度は,鉄鋼材料とそれほど変わらない。外観上は,光沢のある銀色をしている。

図2 ステンレス鋼(SUS304)

鉄鋼

 S45CやSS400に代表される鉄鋼は,安価であること,溶接性に優れていること,様々な熱処理ができることなどの特徴がある。多くの工作機械や工具は鉄鋼材料を加工するために作られているので,機械加工において問題になることは極めて少ない。なお,筆者は単品の実験装置だけを製作しており,製作コストを考えないため,鉄鋼材料をほとんど使わない(ただし,溶接を必要とする場合を除く)。
 一般に鉄鋼は表面がさびて黒くなっていることが多い(黒皮)。黒皮は硬いため,切削する際には,黒皮の部分を一気に削るとよい。

図3 鉄鋼(S45C)

黄銅

 黄銅(真鍮)は銅と亜鉛を主成分とした合金である。黄銅は鉄鋼やステンレス鋼と比べて切削性がよく,ハンダや銀ロウとの相性がよいという特徴がある。適度な重量あることから,重量が必要な部品(例えば,模型エンジンのフライホイールやバランサなど)に利用できる。また,黄銅独特の美しい金色をうまく利用すれば,見栄えのする(高級感のある)機械ができる。しかし,時間がたつと表面が酸化して黒ずんでしまうため,加工した後にクリアラッカーなどで塗装しておくとよい。なお,鉄鋼と比べてかなり高価であるため,一般の機械製品に使われることは少ないようである。

図4 黄銅(C2800)

丸棒材料を切り出す際の注意

 通常,丸棒材料は,最小2 mの単位で売られており,それを適当な長さに切り出して使用する。切り出してしまうと材質がわからなくなることがあるので,切り出す際には右写真に示すような材質表示を残すように,片側だけから切り出すようにしたい。


図5 材質の表示


材料の形状

 機械部品として使われる材料は,ほとんど「丸棒」が「板材」である。それらをうまく組み合わせて,部品や機械を製作していく。また,アングル材(山型鋼)やチャンネル材,パイプなどをうまく利用すると機械加工が容易になる。

図6 材料の形状

丸棒寸法の取り方

 機械材料として丸棒を使うことは多い。市販されている丸棒は直径30 mm,40 mm,50 mm,60 mm,80 mmなど,「キリ」のよい寸法である。部品の寸法は設計時に決められるのが普通であるが,最大直径が50 mmの部品よりも最大直径が48 mmの部品の方がはるかに加工が楽である。最大直径が50 mmの部品は直径60 mmの材料から削り出さなければならないのに対して,最大直径が48 mmの部品は直径50 mmの材料から削り出せばよいためである。なお,直径10 mm以下のステンレス鋼などでは,表面がきれいに仕上がっているため,そのままの表面を利用できることが多い。

[ Metal Working TOP ] [ Hirata HOME ] [ Power and Energy Engineering Division ] [ NMRI HOME ]
bottom bar
Contact khirata@nmri.go.jp