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機械加工の基礎知識

はじめに



 筆者は,数年前より機械工学科の大学4年生を研修生として受け入れ,卒業研究の指導を行っています。学生たちには,主として研究・実験装置開発の課題を与え,その装置のほとんどを学生と筆者の「手作り」で製作しています。そのようなことから,学生たちが最初に眺める機械加工のテキストとして,本ホームページを作り始めました。
 昨今,若者の「理工系離れ」が問題となっていることから,工学分野では「もの作り」や「創造性」という言葉をよく聞きます。そして,学生たちが「汚くて,危ない作業=機械加工」を好まないとの話も聞きます。しかし,筆者が,研修生を指導していても,学生たちが「もの作り」を嫌がる傾向は見られません。むしろ,研究室でプログラム作成や文書作成などを行うデスクワークよりも,「もの作り」に熱中しているように思えます。そのような経験から,学生たちが比較的自由に工作機械を扱うことができる「もの作り」の環境(設備)を整えることが技術者育成に重要であると考えています。このことは学生ばかりでなく,筆者を含めた工学に関係する全ての若い技術者に当てはまると考えています。
 一方,機械加工は,デスクワークと比べて,危険を伴うのは確かです。できる限り危険性をなくす努力が必要なのは言うまでもありませんが,「もの作り」から危険性を完全に消し去ることはできません。機械加工を行う際には,何が危険なのか,なぜ危険なのかを知っておくことが重要です。本ホームページではそのような情報を含めるように心がけています。
 現在の工学分野では,いわゆる「分業」で作業が進められています。一般の理工系企業(メーカー)では,設計者が機械加工をすることはほとんどありません。場合によっては,設計者が製図をしないこともあると思います。筆者が勤務している公的な研究所においても,研究者が機械加工をすることは極めて希です。企業や研究所が生産性や研究成果を重視すること,それを最適化すると分業作業になることは否定できません。しかし,多少能率が悪くなったとしても,自らが考えた発想を「手作り」で製作することは,新たな発想を産むことにつながり,その後の工学研究あるいは工業技術の発展につながるものと確信しています。

平成13年12月 海上技術安全研究所 平田 宏一


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