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第3章 旋盤を使った加工

突切りバイトを使った溝加工



突切りバイトを使う

 突切りバイトは,材料を切り落としたり,フィンやOリング溝を削るのに使う。バイトを材料に垂直に当てて,まっすぐ上の方向へと送っていく。先端部分が細く,壊れやすいので,横方向の送りは原則として禁止である。また,通常の旋盤加工と比べて,送りと切り込みをかなり小さくし,切削油をこまめに塗ると削りやすくなる。


図1 突切りバイトの外観

突切りバイトの固定

 突切りバイトの側面は,わずかに根本の方が細くなっているが,かなり平行に近い。バイトを傾けて固定するとバイトの側面が材料に当たってしまう。少しでも切れ味が悪いと感じたら,バイトの角度を入念に見直すとよい。
 また,バイト先端の高さを材料の中心に合わせるのは基本であるが,突切りバイトの場合,その高さがわずかでも高いと,刃先が材料に当たらず削れなくなる。無理に削ろうとするとバイトを破損することもある。右片刃バイトと同様,わずかに低めに固定するのがコツである。


図2 突切りバイトの固定



Oリング溝

 Oリングとは,断面が円形(O形)をしたパッキン(シール)であり,液体や気体のシールとして使われている。安価で多様な寸法がそろっているので,様々な機械によく使われている。Oリングは一般に溝に装着され,その主な装着方法として図3に示す3種類がある。図3(a)のように,材料の外面に装着する場合,突切りバイトを使うことで比較的簡単に溝を作ることができる。図4は魚ロボットPF-600の胴体部分のシールとしてOリングを使用した例である。また,図5は模型車いすのタイヤにOリングを利用した例である(もちろんシール性は必要ない)。


図3 Oリングの装着方法


図4 魚ロボットPF-600のOリング溝


図5 模型車いすのOリング製タイヤ

補足:端面や内面にOリング溝を削る

 図3(b)のように,端面にOリング溝を作る場合,突切りバイトに似た形状のバイトを使用する。刃先を側面に当てて,ゆっくりと横方向(左)に送っていく。Oリング溝の直径が小さい場合,刃先以外が部品に当たらないようにバイトの側面を直径に合わせて削っておく必要がある。溝の寸法を高い精度で削るのが難しいので,できるだけ図3(a)のように外面にOリングを装着するのが望ましい。


図6 端面のOリング溝

 図3(c)のように,内面にOリング溝を作る場合,図7に示すような特殊なバイトを使用する。この装着方法は,加工が著しく難しくなるので,できる限り採用しない方がよいであろう。(筆者は内面に溝を掘る加工をしたことがない。)


図7 内面の溝を削るためのバイト



スターリングエンジンのフィン

 スターリングエンジンなどの熱機関では,冷却したい箇所(部品)に空冷フィンをつけることがある。伝熱面積を増やすことで熱の伝わりをよくするためである。図8に示すような円周上のフィンは突切りバイトを使って加工できる。ただし,フィン溝が深くなるほど,またフィン溝の幅が薄くなるほど加工は難しくなる。


図8 スターリングエンジンのフィン


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