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第3章 旋盤を使った加工

旋盤の基本操作



旋盤を使う

 旋盤とは,円柱状の材料を回して,それにバイトと呼ばれる刃ものを当てて,材料を削る工作機械であり,機械加工で最もよく使われる工作機械の一つである(図1)。
 図2に示すように,材料を旋盤のチャックにしっかりと固定する。旋盤のスイッチを入れて,旋盤のチャックを回転させる。そして,バイトを固定したテーブルは,図3に示す数個のハンドルを操作することで前後方向,左右方向に動かすことができるので,その操作によってバイトの先端を材料に当てて削っていく。


図1 旋盤の外観


図2 材料の固定


図3 旋盤のハンドル

これだけは気をつける

 旋盤を使用する際,以下のことは十分に気をつけなければいけない。
@チャックハンドルをチャックにつけたままにしない。次に旋盤を回した瞬間,チャックハンドルが飛んでくる。
Aバイトやバイトを固定しているテーブルをチャックにぶつけない。バイトばかりでなく,テーブルや旋盤が破損する。できる限り,バイトをチャックに近づけないようにする。



3つの重要な要素

 旋盤加工において部品をきれいに,しかも能率よく仕上げるためには,回転速度,切り込み量,送りの3つを適切に調整することが重要である。しかし,これら3要素の設定値は,材料の寸法や形状,材質,使用しているバイトなどによって異なるため,実際に削ってみないとわからないのが実情である。

回転速度
 旋盤のチャックの回転数(rpm)で表す。回転数が高いほど,加工速度が速くなり,一般に加工面がきれいに仕上がる。しかし,少しの操作ミスが重大な事故につながる可能性があるので,最初は遅い回転数で加工するとよい。

切り込み量
 削る際のバイトの切り込み深さである(図4参照)。切り込み量が大きいほど,加工速度が速くなるが,材料表面の温度が上がりやすく加工面は荒くなりがちである。また,バイトの寿命も短くなる。どの程度の切り込み量が適当であるのか分からない場合は,切り子魅了を小さくするとよい。

送り
 図4に示すようにバイトを進めていく速度を「送り」という。送りが速いほど,加工速度が速くなるが,加工面は荒くなる。送りが遅いときれいな加工面に仕上がる。「送り」には,ハンドルを回して操作する「手動送り」と,レバーの操作で自動的にバイトを進める「自動送り」とがある。旋盤の操作に慣れるまでは,手動送りとするとよい。自動送りの場合,バイトを回転しているチャックにぶつけるなど,重大な事故を引き起こす可能性があるからである。


図4 3つの重要な要素

 旋盤加工に慣れていない場合や適当な条件がわからない場合は,遅い回転速度で,小さい切り込み量で,遅い送りで加工するのが基本である。



バイトの形状と旋盤加工

 旋盤は「バイト」という刃物で材料を削る。バイトには様々な種類・形式があり,部品の形状によって使い分ける。以下,最も代表的なバイト3種類を紹介し,旋盤で加工しやすい形状,しにくい形状について考えてみる。

バイトの形状

 図5(a)は旋盤加工で最もよく使われる右片刃バイトであり,円柱材料の外面(曲面)と端面(平面)を削ることができる。ただし,普通の旋盤は材料の左側をチャックで固定するので,右片刃バイトでは材料の右側の端面しか加工できない。
 図5(b)の突切りバイトは,材料を切り落としたり,円周方向の溝を削るのに使う。先端部分が細く,壊れやすいので,このバイトを横方向に送ることは基本的にできない。
 図5(c)の中ぐりバイトは,円筒形状の内面を削るのに使用する。例えば,ドリルでは加工できないような大きい穴,あるいは精度が必要できれいな加工面が必要な穴の加工などである。


図5 バイトの形状

加工しやすい形状としにくい形状

 右片刃バイトが最も扱いやすいので,右片刃バイトだけで加工できる形状は,最も加工しやすい形状であると言える。突切りバイトを使用する場合,溝の幅が細く,溝が深くなるほど加工しにくくなる。また,中ぐりバイトを使う場合,バイトの高さが合ってさえいれば,貫通する穴を加工するのはそれほど難しくない。しかし,底がある内面の中ぐり加工は,加工中に内部を見ることができず,底の位置を目盛や音で判断しないといけないため,やや難しくなる。さらに,内面の直径が小さい場合(10 mm以下)や穴が深い場合の中ぐり加工は著しく難しくなる。
 もちろん,図6(c)に示すような物理的に加工できない形状もある。そのような場合は,部品を分割するなどの工夫が必要である。


図6 加工しやすい形状としにくい形状

音を聞く

 旋盤で材料を削る場合,切り屑や加工面を見ると切れ味がわかる。その他にも,加工の際の音を聞くことも重要である。例えば,「キーン」という,かん高い音がする場合,たいていの場合,適切な加工が行われていない。切れない刃を使っているか,回転速度が速すぎるか,あるいは薄肉で材料が振動しているなどの原因が考えられる。



バイトを固定する

 バイトをテーブルに固定する際,バイト先端の高さが材料の中心に合うように,バイトとテーブルの間に薄い金属板を入れて調整する。例えば,右片刃バイトを使用する場合,バイト先端が材料の中心より高いと刃先が材料に当たらなくなり,削れなくなる。逆にバイト先端が低いと端面の中心が削れなくなり,「へそ」ができてしまう。また,一般に切り込み量はハンドルの目盛を見ながら削っていくが,高さが合っていないと目盛の誤差が大きくなり,正確な加工ができなくなる。


図7 バイトの高さ

どちらかと言えば・・・

 バイトの高さをいくら念入りに調整したとしても完全に材料の中心に合わせることはできない。そのため,ほんの少しだけ刃先が材料に当たる方向に調整するとよい。右片刃バイトや突切りバイトの場合はやや低く,中ぐりバイトの場合はやや高くする。


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