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第3章 旋盤を使った加工

旋盤を使ったねじ切り加工



ねじ切りバイトでねじを切る

 ねじ切り加工は,一般にタップやダイスを使う。しかし,特殊なねじを切る場合,適当なタップやダイスがない場合,あるいは大きい径のねじを切る場合など,やむを得ない場合は旋盤でねじを切ることができる。
 旋盤で雄ねじを切る場合,図1に示す「ねじ切りバイト」を使用する。このバイトには,先端が60度の角度に仕上げられたチップが取り付けられている。このバイトを使って,全く同じ位置を全く同じピッチ(1回転当たりに進む距離)で,何度かに分けて切り込みを深めて削っていくとねじが完成する。
 旋盤のねじ切りは,難しい作業であり,操作方法を間違えると材料だけでなくバイトや旋盤を破損させる恐れがある。ねじをうまく作るためには経験を積むことが重要だろうが,最初はむやみに使わない方がよい。


図1 ねじ切りバイト(雄ねじ用)

旋盤でねじを切るときの注意事項

(1) ねじ切りは普通の自動送りとは違って,全く同じ位置で送りを繰り返さなければならない。図2は送りの位置を決めるためのダイヤルであり,一般にこの目盛を合わせることで「同じ位置」の送りができる。旋盤によって操作方法が異なるので,取扱説明書を読んで操作方法を確認する。


図2 ねじ切りのためのダイヤル

(2) ねじのピッチを合わせる。旋盤によって,レバーで設定するものや,歯車を変更するものなどがある。
(3) ねじ切りの送りを途中で止める必要がある。そのための「逃げの溝」を作っておく(図6参照)。また,できるだけ遅い回転速度(=遅い送り)で加工すると止めやすい。



ビデオカメラを固定する雄ねじを作る

 旋盤でビデオカメラ固定用のねじ(図3)を製作した例を紹介する。このねじは,外径が6 mm程度,ピッチが1.25 mm程度である*。M6のメートルねじのピッチは1 mm(細目で0.75 mm)であり,ダイスが手元になかった。そのため,旋盤でねじを切ることとした。

* 後から調べてわかったことであるが,カメラ固定用のねじは,1/4-20UNCのユニファイねじ(おねじ外径6.35 mm,ピッチ1.27 mm)である。そのダイスを手に入れれば簡単にねじ切りができる。


図3 部品図


図4 外形を仕上げる
 左片刃バイトを使って,外形を仕上げる。ねじ部の外径6 mmはマイナス公差である。ここでは,-0.2 mm程度(外径5.8 mm)に仕上げた。

図5 逃げを作る
 突切りバイトで十分な逃げを作る。このねじは,山の径が6 mm,ねじの角度が60度なので,谷の径が3.8 mm程度である。したがって,「逃げ」の部分は,切り込み1.1 mm以上の深さが必要であるため,1.5 mmとした。横の幅は3 mmとした。


図6 「逃げの溝」をつけた材料
 安全のため,かなり幅の広い逃げを作った。

図7 ねじ切り
 ねじ切り加工を行っている。逃げの溝の範囲内で送りを止めなければいけないので,操作中はかなり緊張する。


図8 完成部品
 きれいな仕上がりではないが,とりあえず完成した。

図9 ビデオカメラの固定
 何とか使える状態に仕上がった。


図10 ビデオカメラの設置
 ビデオカメラをクレーンに取り付け,上方約5 mの位置から撮影できるようになった。

図11 実験の連続写真
 上方約5 mの位置からビデオカメラで模型車いすの軌跡を調べた例である。


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