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動力システム研究グループ

 


 
  動力システム研究グループでは,環境にやさしい舶用エンジンシステムの開発を目指して,舶用ディーゼルエンジンの排ガスに含まれるNOxの排出を削減するための触媒を用いたSCR(Selective Catalytic Reduction,選択式還元触媒)の高機能化、耐久性向上,小型化などの研究開発を進めています。また,地球温暖化防止・省エネルギー化を目指して,動力システムのハイブリッド化,スターリングエンジンを用いた排熱回収技術に関する研究開発を行っています。さらに,燃料噴射系改良(電子制御燃料噴射,ハイブリッド・インジェクション・システム(HIS)等)による燃焼改善技術についての研究開発も行っています。

 

メンバー 

(◎はグループ長)

 

平田 宏一
関口 秀紀
仁木 洋一
竹澤 正仁
 

西尾 澄人
岸 武行
市川 泰久
新田 好古 
 


  

研究紹介  

 

1.NOx削減技術
動力システム研究グループでは,これまで舶用SCR技術の研究開発に取り組んできました。SCR(Selective Catalytic Reduction)技術とは,排気ガス中のNOxを削減する排気ガス後処理技術のことです。触媒と還元剤(アンモニアガスや尿素水)を用いてNOxの削減を行います。NOxは下図のように触媒上でアンモニア(NH3)と反応し,窒素と水に分解されます(下図参照)。
 
これまでにSCRを取り付けた舶用4ストロークディーゼルエンジンによる性能評価試験やフィールド試験用SCRシステムの開発を行い、長時間の実船試験などの実施により、多くの技術課題を抽出しました。

        図 SCR概要

 


2.舶用ハイブリッドシステム
従来、船舶の主動力源には50%以上の熱効率を有する高効率ディーゼルエンジンが採用されています。これに対し、他の輸送機関では、自動車のガソリンエンジンで35%程度、航空機のジェットエンジンで30 %程度の熱効率となっています。このため、船舶の動力源は他の動力システムと比べて、極めてエネルギーの有効利用がなされていると言えます。しかし、昨今の地球温暖化に代表される環境問題や石油価格の変動などの社会的背景により、船舶分野においてもさらなる燃料消費削減が必要とされてきています。このような背景から、船舶から排出される地球温暖化ガスの削減を目指し、高効率ディーゼルエンジンの特徴を最大限に活かすとともに、電気エネルギーや自然エネルギーを利用する次世代船舶用ハイブリッドシステムが注目されています。

自動車におけるハイブリッドシステムでは、発進と停止を頻繁に繰り返す運転をするため、停止時に回収したエネルギー(回生エネルギー)を発進時に使うことでエネルギーの無駄を省くことができます。また、発進時など大きいトルクが必要なときにエンジンと電気モータを併用できるため、搭載するエンジンの最大出力を小さくすることで燃料消費を削減できます。一方、船舶ではほとんどの時間一定の速度で運航しているため、自動車のような回生エネルギーの利用は期待できません。また、船舶はエンジンの最大出力付近(実際には最大出力の80%程度)で運航しているため、エンジンの出力を小さくすることは適切ではありません。このため、動力システム研究グループでは電気エネルギーを有効に利用し、高効率ディーゼルエンジンの特徴を最大限に活かすシステムを検討しています。
 

図 舶用ハイブリッドの基本コンセプト

 
 

 

 

3.ハイブリッド・インジェクション・システム(HIS)
 
船舶から排出される大気汚染物質の低減は重大な課題です。動力システム研究グループでは、これまで舶用ディーゼルエンジンに向けた多様な燃料に対応できる燃焼技術の研究開発に取り組んできました。この成果として、着火性の悪い燃料に対応するため、従来の機械式燃料噴射装置に小型の電子制御式燃料噴射装置(自動車用のコモンレールを活用)を組合せたハイブリッド・インジェクション・システムを開発しました。小型の電子制御式燃料噴射装置による噴射(アシスト噴射)を適当なタイミングで行うことにより、着火性の改善、スモーク発生の低減、NOx発生の減少などの効果を確認しました。
 

図 ハイブリッド・インジェクション・システムの概要

このハイブリッド・インジェクション・システムの特徴としては下記のことが挙げられます。
・簡易で安価な装置を既存のエンジンに後付けできるとともに、復旧も非常に容易に行えます。
・元の機械式燃料噴射により、安全性や船舶において重要となる冗長性は担保されています。アシスト噴射は性能向上のためのものであり、悪化させることはありません。

またハイブリッド・インジェクション・システムの効果と可能性としては下記のことが挙げられます。
・着火性の悪い燃料の燃焼改善に効果があり、様々な燃料の利用が可能になります。
・燃焼条件の厳しい低負荷域での燃焼を向上させます。
・フルの電子制御燃料噴射装置に準ずる燃費向上の可能性があります。今後詳細なデータを取得して詳細に調べていく予定です。
・アフター噴射を使用すれば、NOx低減も可能です。更に詳細に調べていく予定です。
 


4.排熱利用スターリングエンジン
スターリングエンジンは、温度差のある熱源により内部の気体を膨張・収縮させて駆動力を得る外燃機関です。理論熱効率が高く、作動空間内の温度差を利用して運転する外燃機関であるため、あらゆる高温熱源を利用できるエンジンです。動力システム研究グループでは、これまで船舶ディーゼルエンジンから排出される排ガスの熱を利用した排熱利用スターリングエンジンの研究開発を進めてきました。
これまでの成果を受けて、スターリングエンジンよる排熱回収システムを開発し、2011年10月に電気推進船「鶴洋丸」に搭載しました。この電気推進船「鶴洋丸」に搭載したスターリングエンジンは、300℃程度の排ガスを熱源として3kW程度の発電をすることができます。発電開始・停止の制御システムも同時に開発しているため、船舶の運航時には常に排熱回収発電が行われます。




 


 

 

5.舶用ガスエンジン
現在、ほとんどの舶用エンジンにはディーゼルエンジンが採用されています。ディーゼルエンジンは信頼性、燃費、耐久性、負荷応答性等において高い技術水準にあります。一方でNOx、SOx、すす等の環境負荷物質の排出量が多いことが課題になっています。近年、船舶から排出される環境負荷物質の削減に向けた国際的な気運が高まっており、船舶における環境負荷低減技術の研究開発が各方面で推進されています。このような状況の中で環境負荷物質の排出量を大幅に削減することが可能な舶用ガスエンジンが注目されています。ガスエンジンは燃料に天然ガスを用いたエンジンであり、燃料がきれい、燃焼するときに環境負荷物質を生成しにくいといった環境に優しい特徴を有しています。
動力システム研究グループでは、ガスエンジンを船舶に用いるための研究を推進しています。発電出力400kWのガスエンジンを用いて、燃料ガスの成分の違いがエンジンの性能におよぼす影響に関する研究、異常な燃焼を検出するシステムに関する研究、排ガス再循環や水素混合燃焼に関する研究などを実施しています。