計測用車いすの開発
〜ソフトウェアの使用方法〜
●はじめに
 ここで紹介するプログラム(WchairMes**.exe,**はバージョン番号)は,計測用車いすに搭載されているノートパソコンに使用されています。データを測定する以外にも,取り込んだデータを読み込み,表示することができます。

機能と特徴
@開発した計測用車いすの回転トルクと車輪の回転角度を測定し,グラフに表示します。
A連続したデータの保存(自動保存),または手動による1回ごとのデータ保存(手動保存)を行うことができます。カンマ形式ファイルが出力されます。
B1ストローク毎のデータを抽出して,時間や仕事率,変動率などの計算を行います。
C取り込んだデータを読み込み,表示します。

動作環境と必要なファイル
@Microsoft Visual Basic 6.0 SP4(VB6)のランタイムライブラリ:VB6がインストールされていないパソコンでは実行ファイル以外にVB6のライブラリが必要になります。
ACONTEC社のA/D変換ボード,デジタル入出力ボードのライブラリ:CONTEC社のホームページからダウンロードできます。各種関数を使用していますので,ボードを挿入していない場合もドライバは必要になります。
Bイニシャルファイルとキャリブレーションファイル:プログラム起動時に2つのテキストファイル(WchairMes.iniとWchairMes.clb)を実行ファイルと同一のディレクトリから読み込みます。

プログラムの構成
 このプログラムは,(1) メイン画面,(2) キャリブレーション画面,(3) 計算結果表示画面,(4) ファイルオプション画面,(5) データファイル読み込み画面,(6) ボード設定画面,(7) 測定値テキスト表示画面の7画面で構成されています。

●メイン画面
 プログラム起動時に表示される画面です。この画面における主な使用方法は次の通りです。

@メニュー機能
 画面右上のコマンドボタンをクリックすることで,キャリブレーション画面や計算結果表示画面などを表示させます。

Aモニター機能
 画面右中央の表示(赤,緑)によって,ボードやプログラムの動作状況が確認できます。「A/D Open」及び「DIO Open」は,それぞれA/D変換ボード及びデジタル入出力が動作可能であれば緑に表示されます。「Timer」は,測定用タイマーが作動していないときは赤,作動しているときは緑に表示されます。また,実際の測定が設定した条件を満たさないときは黄色に表示されます。その場合は測定間隔を長くする,あるいは他に起動しているプログラムを終了させるなどの対処をする必要があります。「Auto Save」及び「Man. Save」は,データ保存(自動,手動)が設定されているとき,緑に表示されます。

Bデータ測定条件の設定
 画面右中央の数値を入力することで測定条件の設定を行います。測定間隔(1 ms以上,1 ms刻み)とデータ数(現状のプログラムでは2000個以下)を入力・変更すると,測定時間(測定間隔×データ数)が変化します。これらの値はデータ測定中でも変更することができます。

Cデータ測定の開始と停止
 画面右上の「Start」をクリックすると測定を開始します。「Stop」をクリックすると測定を停止します。

Dデータ保存
 データの保存には,自動保存(Auto Save)と手動保存(Manual Save)の2つのモードがあります。それぞれ,画面右中央のチェックボックスをクリックすることで設定できます。自動保存は1回の測定(測定間隔×データ数)ごとに自動的にファイル名を更新しながらデータを保存します。手動保存は,1回の測定を行うと測定を停止し,手動でファイル名を入力します。ファイル名はファイルオプション画面で設定します。

Eグラフ表示
 測定時またはデータ読み込み時にグラフを表示します。画面左上のグラフは測定時間とトルクの関係,左中央のグラフは測定時間と速度の関係,画面中央の縦長のグラフは車いすの軌跡,画面下のグラフは左から移動距離,旋回角度(測定開始時が0°,左が正,右が負),旋回角速度(測定開始時が0°,左が正,右が負),仕事率(出力)を表しています。

Fファンクションキー
 ファンクションキーを押すことで基本的な動作や設定ができますので,測定中,マウスを使わずに操作できます。「F1」はデータ保存モードの変更,「F2」はデータ数の減少,「F3」はデータ数の増加,「F4」は測定開始,「F5」は測定停止です。

●キャリブレーション画面
 トルク測定装置のキャリブレーションを行うための画面です。この画面を表示すると,画面上に最新のキャリブレーションの結果(ch0(左)とch1(右)の検定トルク(-30〜30 Nm)とその時の電圧)が表示されます。

キャリブレーションの方法
@「Timer ON」をクリックするとA/D変換を開始し,電圧が画面中央に表示されます。
A各チャンネル(ch0=左車輪,ch1=右車輪)の「Clear」をクリックして,電圧データを消去します。
B計測用車いすにキャリブレーション装置(長さ300 mmのアーム,3.4 kgと1.7 kgのおもり)を取り付け,検定トルク(-25〜25 Nm)に合わせます。(検定トルクの値はテキスト画面を直接修正することで任意に設定できます。)
Cそれぞれの検定トルクで「Set」をクリックすると,その時の電圧がテキスト画面に表示され,グラフに測定点がプロットされます。(もう一度「Set」をクリックするとその部分のデータだけが消去されます。)
D全てのデータが入力された後,「Calculation and Save」をクリックします。
E最小二乗法により近似式が算出され,係数及びグラフ(直線)が表示されます。
Fキャリブレーションファイル(WchairMes.clb)が実行ファイルと同じフォルダに保存されます。また,日付+時間をファイル名とした同一内容のファイルがファイルオプション画面で設定しているフォルダ(デフォルトで「Data」)に保存されます。
Gキャリブレーション終了後,「Timer OFF」をクリックして,動作を終了させてください。

キャリブレーション結果の一例

●計算結果表示画面
 1ストローク毎のデータを計算し,表示するための画面です。

計算条件の設定
 1ストローク毎のデータを抽出するための計算条件を設定します。設定した時間内(デフォルトで1〜4 sec)の1ストロークの始まりは,トルクがある値を超えたことを判別します(デフォルトで2 Nm)。判別条件として,ch0,ch1またはAutoを選択できます。Autoの場合,それぞれのトルク波形の最大値が大きい方のデータから1ストロークの始まりを判別します。本プログラムでは連続した3回のストロークを処理することができます。計算条件を変更して再計算する場合は,メイン画面からデータファイル読み込み画面を表示し,データファイルを再度読み込みます。

グラフ表示
 画面左下のグラフは,測定時間とトルクの関係を示しています。さらにプログラムで判別された1ストロークの始まりと終わりが縦線で表示されます。このグラフから,計算条件が適切であるか,また抽出された範囲が適切に測定できているか,などを判断します。

データ表示
 画面右側には多くの計算結果が表示されます。上段の最も左には,1ストロークの周期(sec),1ストロークあたりの距離(m),車輪の回転角度(deg)が表示されます(最高で3回分のデータ,データ判別ができなかった場合は空白)。その左のボタン(No.1,No.2,No.3)を選択すると,その他のテキスト画面に選択されたストロークのデータが表示されます。
 上段右には,旋回角度(deg),旋回角速度(deg/sec)及び左右への移動幅(mm)の最大値,最小値及び変動幅(最大値と最小値の差)が表示されます。左向きの運動が正,右向きの運動が負になります。
 下段左から,速度,左右車輪の回転トルク,左右車輪の仕事率(出力)の最高値,平均値,最低値及び変動率(=(最高値−最低値)/平均値)が表示されます。

●ファイルオプション画面
 データの保存には,自動保存(Auto Save)と手動保存(Manual Save)の2つのモードがあります。ファイルオプション画面は,保存するファイル名を設定する画面です。

手動保存
 メイン画面で手動保存(Manual Save)が設定されていると,1回の測定が終了した後,この画面が表示されます。画面左側のディレクトリ,ヘッダ部,ファイル名(数値)を入力し,「Save」をクリックするとデータが保存されます。1回のデータ保存を行うと,ファイル名(数値)が1ずつ増加します。

自動保存
 メイン画面で自動保存(Auto Save)が設定されていると,画面右側のディレクトリ,ヘッダ部,ファイル名(数値)に従ってデータが自動的に保存されます。保存する際,この画面は表示されませんので,自動保存を設定する前にこれらの値を設定しておく必要があります。手動保存と同様,1回のデータ保存を行うと,ファイル名(数値)が1ずつ増加します。

ノート
 画面下のノート欄(手動保存,自動保存とも)に入力されているテキストは,保存ファイル(***dat.csv)の1データとして保存されます。

●データファイル読み込み画面
 取り込んだデータファイルのグラフ表示・再計算・再保存を行うため,ファイルを選択する画面です。ドライブ,ディレクトリ,ファイル名(***_dat.csv)を選択して「VIEW」をクリックしてください。メイン画面と計算結果表示画面にグラフや計算結果が表示されます。その後,計算結果表示画面の「Re-Save」をクリックすると,上記の手動保存と同様にファイルを保存できます。
●ボード設定画面
 A/D変換ボード(CONTEC,AD12-8(PM))及びデジタル入出力ボード(CONTEC,PIO-24W(PM))の設定画面です。各ボードの動作確認をする場合に使用します。通常は使用する必要はありません。リターンコード(Ret.)が000Hであれば,ボードの初期化が成功していることを表しています。
●測定値テキスト表示画面
 A/D変換ボード及びデジタル入出力ボードの測定値をテキスト表示するための画面です。各ボードの動作確認をする場合に使用します。この画面から,データ保存やデータ処理を行うことはできません。「Timer ON」をクリックすると動作を開始します。動作確認後は,必ず「Timer OFF」をクリックして,動作を終了させてください。
●データ形式
 本プログラムでデータ保存を行うと,「***_dat.csv」と「***_csv.csv」という2種類のカンマ形式ファイル(***はヘッダ+数値)が作成されます。「***_dat.csv」は,計算結果表示画面に表示される1ストローク毎の計算結果などのデータです。「***_csv.csv」は,測定時間内のトルクや回転角度,仕事率,走行軌跡などの時間変化を伴うデータです。それぞれのファイルはMicrosoft Excelなどの表計算ソフトで処理することができます。
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