講義ノート:もの作りのための機械設計工学
第1章 機械設計の概要

1.3 機械の設計例



 機械設計は,設計者の考えに基づき進められていく。設計者は何を考えて,実際の機械を設計したのか,以下,筆者が実際に設計・試作したいくつかの実験用機器を紹介する。なお,詳細についてはそれぞれのリンクページで紹介している。



1.3.1 小型スターリングエンジン

 スターリングエンジンは出力当たりの重量が大きいこと,製作コストが高いことが問題とされている。図1.10に示す実験用スターリングエンジンは,エンジンの小型化・低コスト化を目指している。
 目的を達成のため,高い回転数で運転すること,バランス性に優れたピストン駆動機構を採用すること,簡単な構造で高性能な熱交換器を採用することとした。そして,小型化のために2つのピストンを直線上に配置した。さらに,ピストン形状を工夫して伝熱性能を高める構造とした。
 エンジンを試作した後,性能測定を行った結果,ピストン駆動機構の機械損失が大きいこと,クーラの冷却性能が十分でないこと,ピストンのシール性能や耐久性に問題があることなどが確認され,目標出力には至っていない。


図1.10 小型スターリングエンジン

小型スターリングエンジン「Mini-Ecoboy」のページへ



1.3.2 模型ボート

 模型スターリングエンジンを搭載し,高速で進み,しかも安定した模型ボートを開発することを目的として,図1.11の模型ボートを試作した。目的を達成のために,浮力と重力のバランスを適切に見積もること,転ぷくしない安定した船型を採用すること,水の抵抗が小さい船型を採用することが重要であると考えた。そして,設計計算として,模型ボートの排水量,浮心位置(排水される水の重心),エンジンを含めた全重量及び重心位置を概算した。
 重心を低くするためにエンジンを横置きとし,熱源(アルコールランプ)をできる限り低い位置に配置するなどの工夫により,本模型ボートは約0.6 m/sの速度で軽快に走らせることができた。


図1.11 模型スターリングエンジン船

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1.3.3 実験用魚ロボット

 様々な用途で使用できる魚ロボットのベースモデルを開発することを目的として,図1.12の魚ロボットを設計した。目的を達成のため,各構成要素をユニット化し,用途に応じて交換できる構造とした。図1.12に示すように,動力源と減速機構を内蔵したパワーユニット,上下運動・旋回運動のための運動制御ユニット,バッテリユニットなどを搭載した。本魚ロボットを試作した後,それぞれの構成要素が適切に機能することが確認できた。


図1.12 ユニット式魚ロボット

「実験用魚ロボットUPF-2001」のページへ


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