講義ノート:もの作りのための機械設計工学
第5章 軸と軸受の設計
5.3 軸と回転体の固定
実際に軸を使用する場合,軸は,歯車やプーリ,カップリングなどの回転体に固定される。以下,軸と回転体の代表的な固定方法を紹介する。どのような固定方法を利用するかは,要求される固定の強さや機械の使用条件によって異なる。
5.3.1 止めねじ
最も簡単に固定する方法が止めねじを使用する方法である(図5.20)。止めねじを使用する場合,第4章に述べたように,軸の止めねじが当たる部分を平面とするとよい。それにより,止めねじが緩みにくくなると同時に,軸の曲面にが傷が付きにくくなるため回転体の取り付けや取り外しが容易になる。なお,止めねじによる固定は,一般に滑りが生じやすく,後述するキーやスプラインと比べて締結の強さはかなり低い。
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図5.20 止めねじ
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5.3.2 テーパによる固定
図5.21に示すように,軸と回転体の接触面をテーパとし,ねじで押しつけて固定する方法がある。この方法は,適切なテーパが作られていれば,軸と回転体の軸芯を合わせやすいという特徴がある。
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図5.21 テーパによる固定
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5.3.3 キーによる固定
キーは,軸と回転体とを回転方向に固定するための部品である(図5.22)。軸と回転体の両方にキーを入れるための溝(キー溝)を作り,それにキーを挿入することで回転方向の動きを押さえることができる。上述のテーパによる固定と合わせて使用することもある。
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図5.22 キーによる固定
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5.3.4 スプライン
スプラインは,複数のキーを等間隔に並べ,軸と一体化したものである(図5.23)。キーによる固定と比べて,はるかに大きいトルクを伝えることができるため,自動車や工作機械に使われることが多い。
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(a) スプラインの断面
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(b) スプラインの加工
(川口機械工業協同組合HPより)
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5.3.5 フリクションジョイント
やや特殊な例として,図5.24に示すフリクションジョイントと呼ばれる要素部品がある。フリクションジョイントに取り付けられた数本のボルトを締め付けることで,軸と回転体との間に強い摩擦力を発生する。フリクションジョイントには様々な形式があるが,図5.24に示したものでは,くさび効果を利用することで強固な締結を実現している。軸にキー溝などの特殊な加工をする必要がなく,高精度な同心度が期待できるなどの特徴がある。図5.25は実験用スターリングエンジンの出力軸とフライホイールの締結にフリクションジョイントを利用した例である。
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図5.24 フリクションジョイント
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(a) エンジンの外観
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(b) 部品の形状
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図5.25 フリクションジョイントを使用した例
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