講義ノート:もの作りのための機械設計工学
第5章 軸と軸受の設計

5.5 軸系の設計例



 以下,いくつかの軸系の設計例を紹介し,軸の形状や軸受並びに関連要素の使い方について考える。



5.4.1 スターリングエンジンの出力取り出し機構

 図5.38は,図5.9に示した実験用スターリングエンジンの構造を示している。本装置は,エンジンで発電機を駆動し,そのときのトルク(ブレーキ力)を測定するためのものである。すなわち,発電機の負荷トルク(エンジンの回転を止めようとするトルク)を図5.38(b)に示すようなアームを押す力に変換し,電子天秤でその荷重を測定している。
 エンジンの出力軸と発電機の回転軸を連結している部分に着目すると,エンジン出力軸と発電機軸の間に2つのカップリングを介して,1本の別の軸が取り付けられている。2つのカップリングは,エンジン出力軸と発電機軸の偏心や偏角に適応させるためにつけられている。さらに中間の軸は2つの軸受で支持されている。これは回転運動によるカップリングの偏心運動を押さえるためにつけられている。
 これらの軸の外側は中空の太い軸で覆われており,2つの軸受で支持されている。これはトルク測定のために発電機が回転できる構造としているためである。これらの軸系の部品は,できる限り軸心を合わせるために,ほとんどが円筒状(旋盤加工)である。


(a) 全体構造

(b) トルク測定装置
図5.38 スターリングエンジンの出力取り出し機構



5.4.2 魚ロボットの動力伝達機構

 図5.39は,図2.14に示した魚ロボットの動力伝達機構部分である。本機構は,電気モータの回転運動を2枚のかさ歯車と4枚の平歯車で減速した後,尾ひれを動かすための往復運動に変換している。ここでは,図中に示した軸A〜Cの3本の軸に着目し,軸受の固定方法について考えてみる。
 軸Aは2つのフランジ付き軸受で支持されている。軸と歯車(回転体)との間にスペーサを挿入することで,軸受を押さえている。
 軸Bも2つのフランジ付き軸受で支持されている。ここでは,軸に段差を付けることで軸受を押さえている。
 軸Cはやや特殊な構造であり,2つの軸受を内部に挿入した歯車が,板材に固定された軸の周りを回転する。この例の場合,機構部の寸法や他の部品の取付方法などに制限を受けたため,歯車に段付きの穴を作り,軸受を挿入している。かなり窮屈な軸受の配置となっており,2つの軸受の距離が近い。しかも,歯車には大きなラジアル荷重を受けるため,強度的にかなり厳しいものであった。


図5.39 魚ロボットの動力伝達機構


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