講義ノート:もの作りのための機械設計工学
第7章 シール装置の設計技術
7.2 シート状ガスケット
配管の接合部や比較的圧力差が小さい箇所のシールとして,シート状のガスケットを用いることがある(図7.5)。このようなシート状のガスケットには比較的柔らかい材料が使われているため,任意の形状に仕上げることが比較的簡単である。以下,シート状ガスケットの特徴と設計時の注意点について説明する。
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図7.5 シート状のガスケット
(日本ガスケットHPより)
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7.2.1 シート状ガスケットの原理
図7.6は,2枚の板材(フランジ)の間にガスケットを挿入した状態を模式的に表している。ガスケットは,2枚の板材を締め付けることにより,弾性変形する。そして,適度な力で締め付けると,板材の凸部で接触し,良好なシール特性が得られる。すなわち,ガスケットには適度な弾性があること,板材を適度な力で締め付けることが重要である。
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図7.6 ガスケットの原理
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液状ガスケット
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7.2.2 設計時の注意事項
シート状ガスケットを使用する際の機械設計における注意点は以下の3点である。
(1) 均等な締め付け
上述の通り,ガスケットは適度な力で均等に締め付けなければならない。そのためには,締め付けるボルトの位置や本数を適切に決める必要がある(図4.42(a)参照)。
(2) ガスケットの材料と締め付け力
ガスケットには金属ガスケット(メタルガスケット)とゴムや紙などの非金属ガスケット(ソフトガスケット)がある。一般に,金属ガスケットは変形が小さいので,締め付け力を強くしなければならない。そのためには,締め付けるボルトの本数を増やしたり,あるいは接触面を小さくしたりするなどの工夫が必要である。一方,非金属ガスケットは,締め付け力が弱くてすみ,比較的簡単に適切なシール性能が得られる。しかし,機械的強度が低いため,流体の圧力が高い場合などは壊れやすい。また,ゴム製ガスケットは,変形量が大きいため,締め付け力が大きすぎると適切なシール性能が得られないことがある(図7.8)。
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図7.8 ガスケットの変形
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(3) 組立精度
ガスケットは材料の弾性変形を利用しているので,締め付けによって,組立時の締め付け方向の寸法が変わってしまう(図7.9)。特に,ゴム製ガスケットを使用する場合やガスケットを多段に使用する場合,組立精度が低下する可能性がある。高い組立精度が必要な場合,次節で述べるOリングなどのシール装置を用いるとよい。
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図7.9 組立精度
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