講義ノート:もの作りのための機械設計工学
第8章 市販部品を利用する設計

8.3 回転運動伝達部品



 第6章で紹介した歯車をはじめ,前章までにもいくつかの回転運動を伝えるための要素部品について紹介してきた。もちろん,実際の機械では,歯車以外にも多くの種類の要素部品が使われている。

インターネットで「機械要素部品」を調べる
 機械要素部品を扱っているメーカーは無数にある。以下,その一部のホームページを紹介する。
椿本興業:チェーン,ベルト,クラッチ,歯車減速機など。
西部ゴム:タイミングベルト,平ベルトなど。
ツバキエマソン:クラッチ・ブレーキ,歯車減速機構など。
小倉クラッチ:多板機械クラッチ,電磁クラッチなど。
トックベアリング:ワンウェイクラッチ,軸受など。
ミネベア:電磁クラッチ,ロッドエンド,軸受など。
神鋼電機:リニアモータ,クラッチ,ブレーキなど。
日機電装:リニアサーボモータなど。
三ツ星ベルト:タイミングベルト,Vベルトなど。



8.3.1 チェーン

 自転車や自動二輪車の動力伝達に使われているチェーン(図8.25)は,滑りがなく大きい動力を確実に伝えることができる。しかし,後述するベルトと比べて重いという欠点がある。そのため,比較的低い運動速度の場合に使用される。


(a) チェーンの外観
椿本興業HPより)

(b) 自動二輪車のチェーン

図8.25 チェーン



8.3.2 ベルト

 ゴムなどの軟質材料を使用したベルトによる動力伝達は,軽量で,静粛であるという特徴がある。また,衝撃的な荷重をベルトで吸収でき,潤滑の必要がないことが大きな特徴である。ベルト形状の種類として,平ベルト(図8.26),Vベルト(図8.27)およびタイミングベルト(図8.28)などがある。


図8.26 平ベルト
椿本興業HPより)


図8.27 Vベルト
三ツ星ベルト HPより)


図8.28 タイミングベルト
椿本興業HPより)



8.3.3 クラッチとブレーキ

 クラッチは動力の伝達と遮断に使われる。クラッチは,原動機を回転させた状態で必要に応じて動力を伝達したり,あるいは遮断したりするのが基本的な使い方である。機械の手動運転と自動運転の切り換えや動力源あるいは負荷が2系統ある場合の制御などにも使用される。一方, ブレーキは,機械の惰性回転を止める場合や起動・停止を繰り返して行う場合などに使われる(制動)。また,停止中の機械の運動や落下防止のためにも使われる(保持)。クラッチとブレーキとは基本的には同じ作用をすると言える。クラッチやブレーキの構造・形式は様々である。
 図8.29に示す多板式クラッチは比較的大きい動力を伝達・遮断することができる。図8.30に示すワンウェイクラッチは,一方向への回転だけが動力伝達できる。図8.31に示す電磁クラッチは電磁石の作用を利用して動作する。


図8.29 多板式クラッチ
小倉クラッチHPより)


図8.30 ワンウェイクラッチ
NTN HPより)


図8.31 電磁クラッチ
ミネベア HPより)



8.3.4 トルクリミッタ

 図8.32に示すトルクリミッタは,機械に無理な荷重が加わった場合,機械の破損や人身災害を防止するため,クラッチをスリップさせたり,あるいは遮断したりするものである。大型の機械はもちろん,プリンタや複写機などの事務機械などにも使われている。


図8.32 トルクリミッタ
トックベアリングHPより)


[ Previous ] [ Mechanical Design ] [ Next ]
[ Hirata HOME ] [ Power and Energy Engineering Division ] [ NMRI HOME ]
Contact khirata@nmri.go.jp